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第41話 寧々の覚悟



 頭を吹き飛ばされたら俺たちは回復不可能、普通に死ぬ。

 しかし、その大原則すら、覆すだと?


「へー、面白そう!!

 じゃあどれだけ吹っ飛ばされても、いつまででもキミたちと戦えるってことだね!?」

「ああ……

 勿論、いつまでもとはいかないけどね」


 案の定、戦闘狂の七種が真っ先に目を輝かせる。

 だが俺はとても、そんな気分になれなかった。


「つまり――

 俺たちはほぼゾンビ状態で、延々と晶龍と戦い続けろってか。

 晶龍が倒れるまで……!」

「そうだね。

 終了条件は、どちらかが精根尽きるまで、ってところかな。

 いくら結界内でも、身体の回復にはある程度の体力と気力が必要になるから」

「体力はともかく、気力って……アバウトに言うな」

「あまり難しく考えなくていいよ。

 いつも神器を使うのと、同じような感じでやればいいから」


 八重瀬はあくまで淡々と説明しているが――

 いいのか。お前、本当に分かってるか。

 多分俺たちは勝つだろう。というか、勝たなきゃいけない。

 だけど本気でぶつかりあうってことは、俺たちが勝ったら、お前は――!!


「……どうするんだよ」

「えっ?」


 心の中だけにするつもりだった問いを、思わず漏らしてしまった俺。


「どうするつもりだよ。その後、お前は!

 それに――」


 俺はそっと寧々の方を振り返る。

 彼女は――能面のように表情を凍らせたまま、じっと正面を見据えているだけだ。何かに耐えるように。


「寧々をどうするつもりだ。

 今の話、何で彼女に聞かせた! 島全体を巻き込んだ茶番ぶちかますつもりなら、何で寧々にだけそれを――」

「巴さん!」


 激してしまった俺の感情を、寧々の声が止める。


「私なら大丈夫です。

 元より私は、晶龍様に身を捧げる覚悟。

 晶龍様と八重瀬さんが決められたなら、どのようなことでもお手伝いさせていただく所存で、ここに居ります」

「だけど!」

「確かに、晶龍様も仰られました。長い辛抱になると。

 八重瀬さんからも、何度も言われました。私がこの秘密を知ってしまったら、もう後戻りはできないと。

 たった一人で、何十年も耐え続けなければならなくなると。

 他の島民には勿論、家族にも口外出来ないとも。

 場合によっては、お墓まで持っていかなければならないとも……!」


 八重瀬と同じく――

 寧々の決意は、まるで揺らぎそうにない。

 だから、だったのか。彼女がまるで、その身には大きすぎる何かを抱えていたように思えたのは。


「それでも私は、知りたい。

 晶龍様と八重瀬さんの決断で、島の未来がどうなるのかを。

 本来の時の流れを取り戻したら、島がどうなっていくのかを。

 何より――私は、島の外の世界を。

 八重瀬さんたちが暮らす世界を、知りたい」


 寧々の確固たる答えが、そこにあった。

 俺はふと思い出す――



『君は、生きのびたい?

 生きのびて、この島の外を見てみたくはない?』



 寧々にそう八重瀬が問うたのは、ほんの数日前の出来事。

 その時の彼女は、八重瀬の問いに答えられず、救いの手を取れなかった。

 だが今寧々ははっきりと、自らの意思で答えている。


「それに、私が知らなければ――

 島で真実を知る人間は、誰もいなくなってしまう。

 せめて私だけでも、記憶しておきたいのです。

 この島の為に、これほどまでに心を砕いてくださった方々のことを」


 真っすぐな瞳で、俺たちと八重瀬を見据える寧々。

 その表情に、一切迷いはない。


 そんな彼女の覚悟を、誰も止めることなど出来なかった。

 じっと黙って聞いている、八重瀬でさえも。


「寧々さんの覚悟は――本当に凄いと、僕は思う。

 だから僕も、その想いに応えたい」


 八重瀬のヤツ――殊勝な言い方をしやがる。

 だけど俺はそこに至っても、到底納得できなかった。


 脳みそによる検閲を殆ど通さない叫びが、喉からあふれ出る。


「――想いに応えるとか、簡単に言うんじゃねぇ。

 それってつまり、テメェが死ぬってことだろうが!!」

「巴。いい加減落ち着け!」


 宣兄に背後から押さえられても、俺はもう感情を制御できない。


「どうしてお前はそんなこと、簡単に言える?

 どうしてそんなに簡単に、命を投げ捨てられる!?

 どうしてそんなにあっさり、自分の人生、放り投げられるんだ!!」


 そんな俺を、八重瀬はもう微笑みもせず、じっと見据えていたが。

 やがて静かに、口を開いた。


「巴君。

 君にひとつ、お願いがあるんだ。

 ほんの少しでいい……君と二人だけで、話をしたい」





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