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見上げる猫

作者: 西順

 もうすぐ夕飯と言う時間帯。ソファーに座ってテレビで配信ドラマを観ていると、我が家で飼っている白猫のユキコが、リビングの端に座ってじ~っとこちらを見ている。その脇にはご飯用のボウルが置かれていた。


「ハナお姉ちゃん、お腹空いたよ〜。ご飯食べさせて」


「うん、今さっき食べさせたよね」


「あんな少量じゃ足りないよ。アチシはもっと食べたいのよ」


「お医者さんから、ユキコは太り気味だから、ご飯のあげ過ぎは控えるように言われているのよ」


「ヒドイわ。レディーに太っているだなんて。見て、このすらっとボディーを」


 と妹のマナがユキコを持ち上げるが、ぐにょ〜んと伸びたユキコのボディーは、やっぱりお腹がぽっこりしていて、全体的に太っている。


「マナ、ユキコで遊ばないで」


「は〜い。ダメだってユキコ。残念だったね」


 言ってマナはユキコを抱きかかえると、とことこと私の横にやって来て座り、ユキコを私と自分の間に座らせるも、ユキコはすぐにその座を辞してボウルの場所まで戻っていってしまった。何とも食い意地の張ったお猫様である。


「ダメなのよ、ユキコ。これ以上食べ過ぎると病気になっちゃうから」


 私は立ち上がると、ユキコに言い聞かせるようにそう言いながら、ユキコに近付いていくが、ユキコはするりと私を躱すと、玄関の方へ逃げていってしまった。


 はあ、まあ、ご飯を諦めてくれたなら良いか。と思って見送ったが違っていた。


「ただいま〜」


 父が帰ってきたのだ。その出迎えに向かったユキコ。勿論その目的は分かっている。


「お父さん」


 案の定、父が玄関でユキコにおやつをあげていたのだ。


「大丈夫だよ、ちょっとくらい。それに我慢させてばかりは可哀想だろ?」


「私だってご飯あげたいけど、ユキコの為を思って我慢しているんだからね」


「そうかそうか、悪い悪い」


 そう返事をしながらも、おやつを食べさせる手を止めない父。


「まあまあ、親子ゲンカもそれくらいにして、私たちもご飯にしましょう」


 仲裁に入ってきた母の一言で、私のお腹はぐ〜と鳴り、もう怒る気力も無くなってしまったので、最後にキッと父をひと睨みしてから、ダイニングに向かった。


 父が席に着くのを待ち、四人で「いただきます」と声を揃えて夕飯の始まりだ。


 ダイニングテーブルに所狭しと置かれる母の手料理の数々をお腹に収めていきながら、私はそれらを欲しそうに見上げるユキコを、「めっ」と叱る。


「全く、誰に似たんだか」


 私がそうこぼすと、これを見ていた三人が大笑いした。


「な〜によ」


「誰に似たも何も、私たち家族皆でしょ。だって体型見れば分かるじゃない」


 マナの言葉に私は家族全員を見回し、ユキコを見て、そして私のだらしない身体に目を移し、確かにそうかも知れない。と思わずにはいられなかった。


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