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不良と喧嘩††


 それから、山根に校舎裏に連れ出されたわけだ。


 どうなったか気になる?あの朱久の番長とか言う奴だって瞬殺した俺だぞ。もちろんボコボコだよ。

 ほら、見ておくれ


「オラ!テメエみてえな地味な野郎が分不相応に目立とうとするとこういう目に遭うんだよ!」


 山根君の鋭いボディブロウが俺の脇腹に突き刺さる。


 ああ、クソ。滅茶苦茶痛え。

 本調子なら、当たる寸前に衝撃点をずらしてダメージを分散できるのに、今のはモロに喰らっちゃったよ。


「やっぱ、山根さんを怒らせると怖えっスわ」

「運動部にも入ってねえくせして、まぐれで一度勝ったくらいで調子乗っちゃって、可哀そう」


 山根君の取り巻きと思われる生徒が十人くらい。

 俺の周囲を取り囲んで、先生たちの見張りも兼ねている。

 見事なフォーメーションだ。慣れている。過去にも何度もこういうことをやってきた、日ごろの修練の賜物だろう。

 

 ……その修練に付き合わされる方はたまったもんじゃないけどな。


 しかし、つくづく見事なフォーメーションだ。俺をなぶるためにも最適化されている。偶然だろうけど……

 これ以上大勢に注目されてしまえば、"フリーズモード"が強化されて痛覚も遮断されるのだが。


 今の山根君の取り巻きは、動きを封じながらも痛みを感じさせる最適な人数と言えるだろう。

 いや、マジで辛いだけなんですけどね。


「オラぁ!オラぁ!……もう一発ゥ!」

「マジでどうしようもねえ奴っすね。俺の方からも、一発入れといてやりましょうか」


 それにしてもしつこい。

 しかも、周囲の取り巻き達も山根君に加わろうとしてきている。


「構わねえけど、やるなら顔を外しておけよ。顔の傷は、目だってしょうがねえからな」


 山根君、残念だけどそこだけは同意するよ。散々痛めつけられた挙句、「どうしたの、その顔……?」と周囲の注目をさらに集めるのだけは勘弁願いたかったからね。

 ああ、それにしても痛い……。本当、無抵抗な相手によくこれだけ暴力を振るえるもんだよ……。


 本当に、俺が目立つとロクなことがない。


 このままひょっとして放課後まで続くんじゃないかと俺が心配し始めた時だった。


「あなた達、何やってるの!!」


 聞き慣れた声が校舎裏に響く。

 

「クソっ!こんなところ人が来るなんて、運のいいやつだ。だが、覚えとけよ鈴木。これ以上青蓮院に近づくような真似したら、俺たちも容赦しねえからな」


 これ以上容赦なく殴られたら、流石に後遺症が出てくると思いますから止めていただきたい。

 それに、俺自身も好きで悪目立ちしたいわけじゃないですし。

 ていうか、やっぱり彼女と親しくなったことが気に食わなかったんですね。

 そもそも、俺の名前は鈴木じゃなくて佐藤です。


 色んな言葉をぐっと飲みこむ。というか、"フリーズモード"と痛みのせいで声ひとつ出せなかったんだけど……。


 見ていて惚れ惚れするような見事な手際で散開する山根連合。

 ようやく罰ゲームから解放され、地面にうずくまる俺を優しく抱き起してくれたのは──


「佐藤くん、大丈夫!?」

「か、金木さん。どうしてこんなところに?」


 ご存じ、隣の席の金木さんだった。



隠れファンの皆様お待たせしました。

ようやく、金木さんにまともな出番です。

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