木漏れ日と川のせせらぎに
スマホもラジオもテレビも電波が来てない。
何もする事がない。
自分の車に乗り込むと、シートを後ろに倒して、しばらく天井を眺めていた。
山間を通るそよ風と、風に揺れる木漏れ日が顔をやさしくなでる。
川のせせらぎが耳を通して安らぎを運んでくれた。
それから1時間ウトウトしていたら、子供の話し声が聞こえてきた。
裕子は身を起こして窓の外を見ると10歳ぐらいの男の子と女の子が歩いて来る。
女の子は手に青い手さげ袋を持っている。
お菓子でも持ってきたのだろう。
男の子「本当に声が聞こえたんや」
男の子は川の方を指さしながら言う
女の子「え~あんな所で?怖わぁ~い。崖やない。」
道路に見慣れない車が止まっているので、男の子はチラチラこちらを伺ったので、少し目が合い反射的に男の子と裕子は、軽く会釈をした。
女の子「知ってる人?」
男の子「んーにゃ知らねえ」
二人はこちらをチラチラ伺いながら、車の横を通り過ぎた。
車から数メートルの所に、ガードレールの切れ目があり、そこから川に降りる様子だ。
男の子「うっしゃ、ここからいくぞ。足元に気ぃつけ」
女の子「うん」
そこから崖を下って川の方へ降りていった。
裕子「あ~あ小学生は、夏休みか」
とにかく裕子は、やる事がないこんな時、考え事をしてしまう。
(子供が歩いて来れるって事は、集落が近いって事?集落まで歩いて行こうかな・・・)
(ふもとの村に行っても誰も相手にしてくれなかったら?)
(仕事に行っていて誰も居ないかも?)
(案外早くゴンゾさんが戻ってきたら?)
(やっぱり動かないで待つことにしよ。)
眠くなってきたので、これ以上の事を考えたくない。
車のシートに寝そべると、そのまま寝息を立てて居眠りを始めた。