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魔女見習いの本懐  作者: tawashi
第一幕 入学編
15/133

担当教諭の実力

 午後二時五十分。

 魔導自衛学部棟中庭。


 ルイスが受け持つ学生四人はすでに準備を終えて中庭の中央にある噴水の前に集合していた。


「お前も剣を使うんだな」


 ライカはシロハが腰に携えている刀を見た。


「そういうあんたも剣を使うんだね」


 シロハもライカが腰に携えている剣を見た。

 ライカが携えている剣の黒い鞘には銀装飾による幾何学的な文様が施されていた。


「お前のその剣なかなかいい魔女術が記憶されているみたいだな」


 シロハとライカが互いに鞘に収まっている刀剣を見ていると横からトウマが割り込んでライカの携えている剣を一目見てライカが携えている剣の魔女術について話す。


「一目見ただけでよくオレの剣について気付いたな」


 ライカの剣の秘密について一目で気付いたトウマをライカは鋭い目で一瞥した。


「それはお前からの賛辞の言葉として受け取ってやる」

「別にてめえを褒めたわけじゃねえ」


 ライカの言葉にトウマなりの解釈を答えるとライカはその解釈を否定した。


「それに比べてお前の刀には魔導的な技術が何一つ施されていない。一体その鉄の塊でどうする気なんだ?」

「あんた。言葉を選べないのホントになんとかならないの⁉」


 ライカの剣と見たトウマはシロハの刀を一瞥してシロハに魔導的な技術が施されていない事を指摘するとシロハは怒り口調で注意した。


「そういうてめえは丸腰のくせによく人の武器に文句言えるな」

「俺は魔術師だ。武器は必要ない。それくらい想像できないのか?」

「クソ野郎が……!」


 トウマの直球な言葉にライカは溜まっていく怒りを抑えるので必死だった。


「みっ、みなさん。ここまで来て喧嘩はやめましょ?もっ、もう少しでセンドロール教諭が来るはずです」


 三人がいがみ合っているとシンカは三人をなだめるように声をかけた。

 シンカは木製の長杖を両手で握っている。長杖の先には赤と緑の異なる色の大きな球体の魔石が二個装飾されていた。


 新入生四人が集合している中庭に学院の巨大時計塔の鐘の音が響き渡る。三時を告げる鐘の音だ。


「みんな集合したようだね」


 三時を告げる鐘の音が鳴り終わると四人の後ろから声が聞こえる。

 四人は声が聞こえる方に振り向くと。そこには四人の担当教諭であるルイスが歩み寄っていた。


「四人それぞれ準備はしてきたようだね」

「セっ、センドロール教諭。私達これから何をするんですか?」


 シンカは戦闘準備を要求して中庭に集合させたルイスに中庭に集合させた理由を尋ねた。


「さっきも言ったけど、元々は君達の実力を見るのを兼ねたレクリエーションをするつもりだったんだけど、男子二名はまださっきの口論に納得がいってない様子だし、それに追加してこれから君達四人で僕に勝負してもらうよ」

「勝負ですか?」


 ルイスが勝負を持ちかけるとライカがルイスの言葉を反芻して質問した。


「そう。三時半の鐘が鳴るまでに君達四人で僕に魔術でも魔女術でも、どんな方法を使ってもいいから僕に傷一つ付ければ君達の勝利。そして先に僕に傷を付けた人が今回の口論の勝者。勝者に今回の口論で口答えはしない。それで今回の口論は終了でいいね?」


 ルイスの提案に口論を繰り広げていた三人は頷いて肯定の意志を示した。


「それじゃあこれから約三十分の間、本気でかかってきていいよ。そうしないと君達負けちゃうよ?」


 ルイスが勝負開始を告げた瞬間ルイスの纏う雰囲気が変わった。

 今まで優しく穏やかな雰囲気が嘘のように消えて一瞬の隙も与えないような緊張感を感じさせる雰囲気を放ち出した。


  ルイスの出す雰囲気が変わったのを感じた四人は臨戦態勢を取る。

 シロハとライカは腰に携えた刀剣の柄を握る。トウマはいつでも魔術を起動できるように魔力を練って体内の術式に魔力を送り始める。シンカも魔力を練って魔女術が記憶されている長杖に魔力を流す。


 シロハとライカはほぼ同時に柄を握った刀剣を鞘から抜刀した。そしてほぼ同時にルイスの元へ突っ込んでいく。


「っ⁉」


 ほぼ同時にルイスへ走るシロハとライカは初速からシロハが勝りライカがスタートを切った場所からルイスの間合いにまでの半分の距離に到達する前にはシロハはルイスの間合いに踏み込んでいた。シロハの細い体格からは予想もできない俊足にほぼ同時にスタートを切ったライカは驚愕した。


 ルイスの間合いに踏み込んだシロハは刀の峰をルイスに向けて胴を狙った。

 シロハの峰打ちをルイスは余計な動きを一切しないで紙一重で躱す。胴を狙ったシロハの峰打ちを躱したルイスは峰打ちを空振りしたシロハの背後へすぐに回り込んだ。


 回り込まれた事に気付いたシロハは背後に回り込んだルイスと向かい合うため軸足ををうまく使って後ろを瞬時に振り返った。シロハが後ろを振り返った時には胴ががら空きのシロハの間合いに入っていた。


ルイスはシロハが刀を握っている手に向かって手を伸ばしている後ろでルイスの背後を取ったライカが構えた剣をルイスに向けて振りかぶった。


 完全にルイスの背後を取ったライカの一撃をルイスは見えていない。ライカの一撃は命中するとライカ自身確信していたが、ルイスがライカの剣に斬られる直前ルイスはシロハの刀を持つ手に伸ばしていた手を地面に付けて全身をかがめた。かがんだと同時にルイスは片脚を軸足としてもう片方の脚を勢いよく後ろへ伸ばす。勢いよく伸ばした脚はライカの剣がルイスへ届く前にライカの腹部ヘ蹴り込まれてライカを吹き飛ばした。


「ぐぶっ……!」


 蹴り飛ばされたライカは腹部に蹴り込まれた一撃に苦悶の表情を受けべ元々立っていた場所まで吹き飛ばされた。

 ライカを蹴り飛ばしたルイスは再び体勢を戻して背後を狙ったライカを蹴り飛ばした事で余計隙だらけのシロハの腕を掴み両手で投げ飛ばした。


「っ……!」


 投げ飛ばされたシロハもライカと同様に元々いたばりょまで投げ飛ばされていた。

 ルイスに易々と吹き飛ばされた二人は地面に頃バッタ後すぐに立ち上がって体勢を立て直した。


「あそこまで素早い動きで僕の間合いに踏み込んだのはすごかったけど、峰打ちを躱された後の対応が遅いよシロハ。ライカもシロハの素早い攻撃を陽動に使った瞬時の判断は素晴らしいけど、太刀筋がまだ甘いよ」


 二人を易々とと吹き飛ばしたルイスは吹き飛ばしたシロハとライカにそれぞれ笑顔のまま先程の攻撃の改善点を告げた。

 蹴り飛ばされたライカは蹴られたところを手で押さえ、シロハは投げ飛ばされた時に力強く掴まれた腕を擦りながらルイスを一瞥した。


「ライカさん!シロハ!大丈夫ですか⁉」


 ルイスに吹き飛ばされた二人を心配するシンカは魔力を流していた長杖に記憶されている魔女術を起動した。起動された魔女術はシンカの握っている長杖から淡い光を放つ。長杖が放つ淡い光はシロハとライカの体を包み込んだ。淡い光に包まれた二人はそれぞれ蹴り飛ばされた時の腹部の痛みと投げ飛ばされた時に力強く掴まれて投げ飛ばされた腕の痛みが消えていく。


「これは?」

「これってシンカの?」


 二人がルイスに与えられた痛みはシンカの魔女術である《治癒ヒール》によって治癒した。


「《治癒》の魔女術が使えるなんてシンカもやるね」


 痛みを与えた二人を治癒したシンカにルイスは拍手をして称賛する。

 拍手をしているルイスの周りから突然炎が立ち上がり、瞬時に炎は大きくなっていきルイスを呑み込んで炎の渦を描いた。


「っ……躱されたか」


 トウマは炎の渦が立つ方を見て舌打ちする。


「新入生とは思えない速さで炎の魔術を起動して攻撃したのは驚いたけど、相手の不意を突かないと当たる魔術も当たらないよトウマ」


 トウマが炎の魔術を停止させて炎を鎮火すると炎の渦の後ろにルイスは立っていた。


「四人ともまだ本気で僕に勝負してないとはいえ、いい腕を持ってるね——」


 優しい笑顔で四人に対してそれぞれの腕を褒めるルイス。


「——でもこれで分かったよね?本気で勝負しないとどうなるか」


 依然として優しい笑顔のルイスは笑顔に見合わない四人を威圧するような雰囲気を放っている。

 ルイスに蹴り飛ばされたライカや投げ飛ばされたシロハは実感している。シロハの高速の攻撃もシロハの攻撃を陽動に使ったライカの攻撃も躱した上に反撃を与えた一部始終を見たトウマとシンカも感じている。


 本気で攻撃しなければこちらが一方的に蹂躙されると。

お疲れ様です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

良ければ次話も読んで下さい。

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