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  作者: 歩空
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Black Moon+Gold Sun 4




学校というのはとにかく広い土地が必要だ。

その為、安く広い土地を購入する必要がある。

大概が曰く付きの土地で、昔は大きな塚が有ったとか、戦場でたくさんの人が死んだとか。

ボク達の通う“救世白亜大高校”も例外ではない。

その昔、戦国時代には名のある大名が大きな城をたてていたらしい。

残念なことに滅ぼされ、城は跡形も無く潰されてしまった。

後には生き残った数人が祠を建て祭った。

その祠は今も敷地のど真ん中に残っている。

学校を建てるに辺りこの場を浄化した黒月神社の人間が、毎週この祠を祭る。

つまりは冬月である。

浄化はしてあっても鳥居のない敷地だ。

問題は多々ある。


・・・・と、いうことで。



「なんでいつでもこの組み合わせなのかな。」


「文句を言うな。」



最早ペアとなってしまっている組み合わせにボクは溜息を吐く。

ボクは基本的には人を嫌わない事にしている。

“世界”観は人それぞれだ、合わないからと言って嫌う理由にはならない。

けれど例外はある。

何かというとすぐに付いて来る松山には溜息しか出ない。

敷地内を浄化するのは黒月神社の人が行う仕事だ。

今は娘である黒月神社当主の娘である冬月が通学中なので、彼女が行っている。

不浄があれば浄化、若しくは結界をはって閉込める。

あぁ見えて冬月は優秀な巫女だ。

しかし、もちろん一人でこの広大な敷地をくまなく浄化することは難しい。

その為に発足された組織がある。

それが、陰の執行部・・・・と、生徒会及び生徒会執行部から呼ばれているらしい。

現在、生徒会執行部在籍二年拾参組の雪之冬月、

風紀委員会副風紀委員長二年拾参組のボク、

そして何故か自称副風紀委員長補佐二年拾参組の松山。

一年・三年メンバーの紹介は割愛。

松山はこれでいて立派な僧侶だ、浄霊の腕で敵う人間は少なくともこの学校には居ない。

だから、たまにこうして昼休みとか放課後に校内を徘徊し浄霊を行っている。



「冬月とペアでも良い筈なのに。」


「雪之は生徒会執行部の方で忙しいんだろ。」


「ボクはそんな冬月の観察で忙しいのに。」


「暇なんじゃねぇか。」



何を言うか、立派に忙しい。

他人を観察するというのは案外難しい。

一歩間違えるとストーカー扱いされてしまう加減の難しいものだ。



「で、今日は何処に行くわけ?」


「ん?・・・あぁ、三年の非常階段な。」


「裏鬼門ねぇ。」



鬼門――方角でいうと北東、艮である。

陰陽道において方角は陰と陽の二手に分けられる。

即ち、陰の北と西。陽の東と南。

北東は北と東、陰と陽の間で境となり、不安定になると言われている。

その為、古来より忌み嫌われているという説がある。

その真逆である南西も然り。

こちらは裏鬼門と呼ばれている。

また、これらの方角は逆に神が通るともされ、清浄を好まれる。

どちらにしても浄化する必要があるということだ。

陰の執行部なら誰でも知っている知識だ。





「・・・・お前、そんな処で何やってんだ?」


「ん?・・・・おやぁ?」



不機嫌声の松山に引かれて首を伸ばす。

松山は基本的に五月蠅いが、不機嫌な声を出すことはない。

あまり怒ったりしない人種だ、突っ込みは喧しいくらいするが。

そんな彼が不機嫌になる理由、それは本日の目的地である裏鬼門・三年の非常階段近くに居た。

透き通りそうな白い肌、叩けば折れてしまいそうな線の細い身体。

深い記憶のなかに眠る思い出から成長して出てきたかのような出立ち。

先日、二年のガラクタ箱こと拾参組に転入してきた生徒。

名を、



「日々野千鶴くんか~どうした、こんな処で一人遊びかな?風紀を乱す行為は控えて貰わないとボクがしょっぴかなきゃならんめんどくさい事態に陥るぞ?」


「風紀を一人で乱してるのはお前だ、仕事しろ。」


「なにさ、万年欲求不満男がっ」


「だからっ!勝手に欲求不満にするなっ!」


「そういう二人は、その欲求とやらを果しに来たの?」

「なっ・・・・!?」


「そんなわけないじゃん~松山なんて範疇外の外だ。」


「どういう意味だよ。」


「外の外は中じゃない?」


「あら。じゃあ・・・・壊滅的に想定外。」


「喧嘩売ってんのか?」



見れば見る程似ている。

目元、口元を始めとした顔の作り。

口調。

そしてなにより表情が。

何をしてもされても許してしまう、柔らかい微笑み。

日溜で暖かく見守られるような、安心できるような。

此処にその人を知ってる人はいない。

彼を知ってるのはボクと冬月だけだ。

大切な昔の思い出の中、冬月の大切な人。

千尋にそっくりな日々野千鶴は、二年拾参組に転入したばかりにも関わらず何の関係もない三年の非常階段前に立っていた。



「冬月さんを探していたんだけど・・・・何処に居るか知ってる?」


「冬月?生徒会執行部の仕事に行ってるよ?」



生徒数も教室の数も普通より圧倒的に多いこの学校の生徒会は、計画を起てるだけで手が一杯だ。

その為、生徒会執行部という組織が存在する。

その仕事も多い。

人数は決して少なくないが、それでも手がたりない程。

冬月はその中でも比較的高位にいるらしい。

手となり足となり働いている姿はあまり見ない。



「なんだ、お仕事中か・・・」


「冬月に用事?」


「冬月さんに会いたくって。」


「・・・次の授業で会えるよ?」



緊張感のない笑顔からでてくるストーカー発言にやや頭痛を催す。

転校初日からずっと彼は冬月にべったりだ。

基本的に一人を好む人種の冬月にとってそれはかなりのストレスになる。

それだけじゃない。

千尋と同じ顔、同じ声で同じように“冬月さん”と呼び、同じ様に慕ってくる。

優しい悪夢の様な現状。

なのに、まだ冬月は根をあげない。

助けて欲しいと言われれば、何時だって助ける。

けれど、今はまだ。



「なんでそんなに冬月と一緒にいたいの?」


「僕、一目惚しちゃったんです。」


「は?」


「誰に?」



相手がストーカーなら、答えは判りきっているが一応。


「冬月さんに。」


「それで、会いたいと?」


「そう。」


「・・・・・やっぱり、教室で待っててあげて。こんな処に冬月は来ないから。」



よっぽど酷く結界が壊れていない限り、冬月が他学年の校舎に来ることはない。

生徒会執行部はなかなか忙しいのだ。

学園の端々まで来るような雑用はボク達暇人の仕事である。

此処は三年の校舎、しかも北東の端だ。



「探していたら迷子になっちゃって。」


「一人で教室まで帰れる?」


「校舎の外に出ればなんとか帰れると思うし、大丈夫だよ。ありがとう、副風紀委員長さん。」


「どういたしまして。」



そう言って日々野千鶴は階段を降りて行く。

確かにこの学校はややこしい。

職員室や準備室を始め、生徒会室、生徒会執行部室、各特別教室、一部部活室がある管理棟を中心に同じ距離の場所に各学年の棟がある。

地下でも繋がっているし、二階には管理棟から学年棟へと渡り廊下も繋がっている。

それぞれの棟自体はシンプルな造りになっているが、転校すぐの生徒なら迷ってもおかしくない。

おかしくはない、けれど。



「すっごい機嫌悪そうだね、松山。」


「当たり前だ。」



松山はさっきまで日々野千鶴が居た場所を睨んでいる。

歩いて行った彼自身には目もくれず、ただその場所を。



「アイツ、此処で何やってたんだ?」


「迷子って言ってたよ。本人はね。」


「信じられねぇな。」



確かに転校生や未だ馴れていない新入生は迷子になるかもしれない。

だが、それは管理棟や各学年棟の中での話だ。

何階にどの教室があるか、何組があるか、その程度のもの。

さっきも説明したが、各棟自体の造りはシンプル極まりない。

ただ、広いし迷うことは目に見えている学校側もちゃんと対応はしている。

それぞれ一年は赤、二年は青、三年は緑と色を決めて管理棟内にはその色で各学年棟への道筋に矢印を付けている。

そんなこんなで進級直後の4月は特に迷子が多い、人間の帰省本能は素晴らしい。



「アイツが雪之を追ってたならまず行ったのは管理棟だ。いくら探すと言っても、そこからこんな処まで来るか、普通。」


「さぁ?本当に探してたなら、どうかねぇ。」



非常階段は螺旋になっている。

もう足音も聞えない彼を透視するように、ボクは目を細めた。

彼の目的がなんであれ、少々不穏な気配が立ち込めているのは確かだ。

きっとほっておけばまず冬月が爆発する。



「要観察だねぇ。」



いつものように趣味では済まない、本物の観察が。









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