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除霊幽霊(上)

 娘の操が一歳六ヶ月になった。足腰が強い。周りの子がヨチヨチとことこしているのを尻目に、走る、跳ぶ、よじ登る。活発すぎて手に負えねえよ。


 幸いこいつは月齢相応に幼い精神なので、魔のイヤイヤ期はまだである。一昔前には、


「うちの子イヤイヤ期なかったからー」


 というマウントの取り合いが流行ったらしいが、人間精神の発達にとっちゃ、反抗期は自我の確立の上で重要なんだろ?なきゃおかしい。

 たしかに、大人しい子はいるだろうけどさ。

 大人しいなりに、


「大変だったわよー」


 が健全なんじゃねえかな。


「あっこら!ミー!めっ」


 タンスを登ってやがる。引き出しなんか利用しねえ。そのまま段と段の僅かな隙間にむくむくしたちっちゃい指をかけて、足で蹴ってヤモリのように這い上る。


 捕獲して抱っこした。


「危ないだろ、めっ」

「あーっ!うえーん!」


 操さんは阻止されたのがご不満なご様子。


「散歩行くか」


 ぴたりと泣き止む。

 有り余る体力を発散させるために、よその子よりだいぶ長い散歩が必要だ。今日は塾も除霊もないから、久しぶりに遠くの公園まで連れてくか。


「タエちゃんいく?」

「家事するー。ゆっくり買い物したいし」

「んー、じゃいこっかミー」

「あーっ!」


 操が小さな手を腕ごと豪快に振って、妙子にバイバイする。


「いってらっしゃい」

「おう」


 お気に入りの黄色い赤ちゃん靴を履いて、操は外に出る。手を繋いでいるのは最初だけ。すぐに走り出す。


「こら!危ねえだろ」


 こちらも走らないと追いつけない。


「元気な男の子ねぇ、あらハンサムさん」


 通りすがりのおばあちゃんがニコニコと褒めてくれる。だけど残念。操は娘だ。


 操は、無駄に妖艶な妙子の顔が俺の平凡で薄まって、いい感じのきりりとした顔立ちなのだ。そして、好きな色はオレンジ色。今日も自分で選んだオレンジ色のTシャツと赤ちゃん用柔らかデニムのズボンを履いてゴキゲンである。


 Tシャツには可愛い花とウサギちゃんがついてるし、デニムの裾にはフリルがついている。だけどワイルドに動き回る操の姿に、人々は女の子成分なんか全部見落とす。


 行動も手伝ってこいつは女の子に見られたことは一度もない。ゆきずりの人にまで性別間違いをキレて訂正する親も多いけど、俺は曖昧に笑っとく。



 広い公園にやってきた。池もあれば遊具もある。ここのボートも例に漏れず、カップルで乗ると別れる都市伝説つきだ。

 ジョギングのおじさんがいる。犬の散歩の若者がいる。レジャーシートを広げてるファミリーもいる。大人も子供も楽しめるよい公園なんだ。


「あーっ?あえっあえっ」


 操が俺のズボンを引っ張って叫ぶ。


 ああ。


 こいつ、俺たちの子だからな。当然見える。しかもこの生命力。除霊拳の跡取り決定だよな。


「おう、ミー、いるなー」


 池のほとりにへんなやつがいやがる。


「あー!」

「仕方ねえ、いくか」


 仕事じゃ無いけど、2人いる幽霊のうち、1人は悪霊化が進んでいる。どす黒い靄を身に纏い、周囲の人々を具合悪くしてんだよ。ほのぼの散歩してるだけなら幽霊だろうが放置するけど、黒いのはなあ。


お読みいただきありがとうございます

9/21中に(下)を投稿予定です

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― 新着の感想 ―
[良い点] 早くも悪霊が察知出来るとは、操ちゃんは実に将来有望ですね。 古くより「七歳までは神のうち」と言われますので、大人には察知出来ない微弱な悪霊も、今の操ちゃんには知覚出来るかも知れませんね。 …
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