表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

アボカド

作者: 岩本ヒロキ

種がきれいに取れたから植えてみようと言った君がこの部屋を出てから6年になる。コロコロとよく笑う人だった。

些細な喧嘩がきっかけでその関係は終わってしまった。別れも告げず、帰って来るとその姿は見慣れたリビングになく、風が吹くだけで飛ばされてしまいそうだった荷物と共に寂寥をもたらした。


僕のことを今でも怒っているのかも知れない。呆れているかな。連絡することさえ出来ず、だたひたすらに仕事に奔走した。いつか君がまたひょっこりとこの部屋のドアを開け、ソファにうずくまりながらコーヒーをねだるんだ。南向きの窓をいつも眩しそうに昼寝をしていた君を今でも思い出す。


6年の歳月は僕を見た目も立場も大人にした。

高いオーダーメイドのスーツを着て、乗りたいと一緒に雑誌を見ていた高級車にだって今は乗れている。仕事も今では沢山の部下を持つ立場になったよ。きっと僕のことをどこかで見ていてくれたりしないかな。成長したけれど、君に連絡ができない意気地なしの僕は今でも健在だ。


アボカドは木になる事を君は知っていたのかな。

もうそろそろベランダの木がその高さに限界を迎えてしまう。6年君を待った。君を待つこの部屋、君との思い出。今の僕にはまだ手放せそうにも無い。


せめて最後に。君がこの部屋の鍵を渡してくれていたのならば。

僕は明日の君の帰りを、心待ちにしなかったかも知れない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ