お金ほしい(仮)
習作です。
昔からお祭りは私の金儲けの場だった。
「ねぇそこのカッコいいお兄さん!」
「どうしたの、お嬢ちゃん?」
「ここのアクセサリーはどうしてこんなに高いの?」
「そうかなぁ? 手作りだったらこの位じゃない? このリボンなんてお嬢ちゃんに似合いそうだよ、どう? 300円」
「うーんやっぱり高いよ。もう少し安ければ......」
「そうだなぁ。よし、お兄ちゃんが少しおまけしてあげるから100円でどう?」
「100円?! うーん300円が100円......」
屋台のお兄さんは「よし! これで売れた!」と、思った。
「うん、それなら安いね! でも今、手持ちがないから......。じゃあ、お兄さん、私向こうの屋台見てくるね」
私は踵を返し、他の屋台へ向かおうとする。
「えっ!! ちょぉぉぉ待って! 君何しに来たの?」
「何ってお祭り見学と小銭拾い......。家、貧乏だからちょっとでも私たちが稼がないといけなくて。ごめんねお兄さんの薦めてくれたリボンとっても可愛かったよ。でも、今もってる分じゃ足らなくて......」
私は目に涙を浮かべて、笑顔で答える。
「いいよいいよ持っていきな、このリボンもお嬢ちゃんに可愛いって言って貰えて嬉しそうにしてるし、お嬢ちゃん可愛いからきっとこのリボンは似合うよ、ほら持っていきな」
お兄さんは手を伸ばしリボンを渡そうとする。
私は屋台に戻り「うん、ありがとう」と答える。
「お兄さん、このリボン私に似合うんだよね?」
「う、うん」
「じゃあ、付けて。私にアクセサリーとか付けたことないから付け方分からないの」
「ああ、いいよ、じゃあ、ちょっと横向いてて」
パチッ、と音がして左の頭に重さを感じる。
「どう? 似合う?」
「うん! とっても」
「ありがとうお兄さん、大切にするね! バイバイ!」
私は笑顔でお兄さんに手を振り、屋台を後にする。
リボンゲーーット!!
ふと、前を見ると屋台から見える所にお姉ちゃんがいた。
「お姉ちゃーーん、見て! リボンもらった!」
「あー、はいはい、見てましたよー」
「えぇ、反応うすーい。それに見てたんならお姉ちゃんも一緒に貰えばいいじゃん」
「私はいらないし、似合わないからいいよ......。そんなことより小銭いくら集まった?」
「えーとね250円! 新記録だよ」
「結構、集めたね。ん? さっきお兄さんが100円にしてくれてたとき、何で買わなかったの?」
「え、だってあそこで買ったらお金減っちゃうじゃん、それに私はちゃんと言ったよ? 『今、手持ちがないから......』って」
「え? 250円持ってたじゃん」
「アクセサリーを買う余裕が無いっていうこと」
「悪魔め」
「その呼び方可愛くない。小、小を付けて!」
「意味はそんなに変わってないし......」
「それにこの言い方お母さんも使ってたよ」
「え、何の話だっけ?」
「『今、手持ちがないから......』」
「あー、へぇ、いつ?」
「大分前にお菓子買って欲しいって言ったら『今、手持ちがないから......』って言って白菜買ってた」
「なるほどそこで覚えたのか」
「ねえねえ今日の晩御飯何かな?」
「さぁごはんじゃない?」
「そっかー、ごはんかー。たまには味のあるものを食べたいね。ところでお姉ちゃんはいくら拾ったの?」
「ふふふ、聞いて驚け! 610円だ!」
「えぇぇぇ!! 凄い! どうやったの?」
「いやー、偶然、自販機の下に500円玉が落ちてて、ラッキーだった」
「いいなー、私も自販機の下は探したけど100円しか見つからなかっなー」
「もう、二人で自販機の下は探り切っちゃったから、一旦帰って晩御飯食べてからまたこよ」
「そうだね。......お姉ちゃん、私、お祭り大好き!」
「自分の名前と同じだから?」
「そういう意味じゃない!」
このお話は金山まつりが大富豪になることを夢見て成長していく話である。