マイナスとマイナスは出来れば足し算ではなく掛け算であって欲しかった
「やっと、ギルドに着いた……」
「もうくたくたですよ・・・何で帰りの方が来た時よりも、モンスターと遭遇するんですか」
「僕も、あんなにモンスターと遭遇するのは初めてだよ」
ラックさんは苦笑いをしてそう言った。
俺とシャルロットと、ラックさんは疲弊し切っていた。俺達は、ラックさんと共にギルドへと向かっている途中、なぜか多くのモンスターに襲われた。それも、俺達が来た時に襲ってきたモンスターよりも、数が多かったのである。
しかし、ルークとフィルは、何事も無かったかのように平然としていた。
「カイトお前もしかして、あれしかいなかったのにへばってんのか。体力ねぇな」
ルークは笑いながらそう言う。
「お前正気かよ。あの数相手にしたっていうのに疲れてないのかよ」
「何言ってんだよ、たったの100体だろそんなに大変じゃないって」
「たった100体って、お前の頭はどうなってんだよ」
俺は唖然とした。実際100体ほどのモンスターと戦ったのだが、こいつは一切疲れていないのだ。しかもフィルを負ぶった状態でだ。「こいつやっぱ脳筋だ」と、再認識するのにはそう時間はいらなかった。
「……100体くらいで力尽きるのも、どうかと思う」
「寄生虫みたいな事してる奴が、疲れる訳無いんだよなぁ」
「……寄生はしてない。ただ、動きたくないから、背負ってもらって移動してただけ」
「それを寄生虫と言わなかったら、なんて言うんだよ」
「……」
「おいこっち向け、そしてなんか言ってみろよ」
するとフィルは、見たことのないような笑顔でこちらを向いた。
「うるせぇもやし、魔法ぶつけんぞ」
こいつ本性表しやがった。今までしゃべる気が無かったくせに、いきなりとんでもねぇ事言い出しやがった。てか口悪っ。
「お前ブーメランって、知ってるか」
「知らない訳ない、手元に返ってくる奴」
「そういうことだ」
するとフィーは、その言葉に込めた意味を理解したらしく、とてつもないオーラを纏い始めた。
「…最大火力で、ぶっ殺す」
「出来るもんならやってみろ」
すんません嘘です。そんなもん喰らったらひとたまりもありません、死んでしまいます。
そう心で思っていた時、シャルロッテが、顔を真っ赤にしながらこちらに向かってきて俺とフィルにゲンコツをした。
「何やってるんですかこんな人とか建物があるところで!バカなんですか死ぬんですか!大体、疲れているってさっきから言っているのに無駄な労力を使わせないでください!」
「「すいませんでした」」
俺とフィルは即座に謝った。シャルロッテを怒らせないようにしようと心に誓った。
「えっとそろそろギルドに入ってもいいかな」
ラックさんが、困りながらそう言った。
「すいません、こんなお見苦しいものを見せてしまって。ほら2人も」
「ほんとすいませんでした。二度とこのようなことが無いようにいたします」
俺達は土下座した。地面に頭をこすりつける勢いで土下座した。
「僕は怒ってませんからこんなところで土下座しないで下さい!」
「それより早くギルドへと入りましょう。カイトさん、フィー、ルークさんを起こしてあげてください」
「「わかりました、尽力を尽くさせてもらいます、シャルロッテさん」」
そういって俺たち二人はルークの元へと向かう。
「ルーク、起きてくれギルドに入るぞ」
「・・・ルーク起きてさっきからシャルが、こっちを見てる」
そういってシャルロッテの方を見る。顔は笑顔なのに目が笑って無かった。今なら何を考えているかがわかる、「早く起こせ」そう思っているに違いない。
「頼むルーク‼目を覚ましてくれ、俺はまだ死にたくないんだ‼」
「……ほんとは起きてるんでしょ。早く起きて、私、まだ、死にたくない」
俺たち二人は震えながらルークを起こす。すると声に気付いたのかルークは目を覚ます。
「やっと終わったのか、そんじゃいくか」
そう言ってルークはギルドへと、入っていくので俺達も付いて行った。
最初に俺達に気付いたのは、受付にいたディーゼさんだった。するといきなり顔色を変え真っ青に、変えて叫びだした。
「ギルド職員及び冒険者の皆さん、ラックさんが帰ってきました警戒してください!もう一度言いますラックさんが帰ってきました!皆さん警戒してください!」
その声を皮切りに周りからもどよめき声が聞こえてきた。
「急いで仕事をやめろ!仕事が増えたらたまったもんじゃない」
「俺はまだ死にたくない・・・」
「た、助けてくれ!いきなりツタが俺に絡み付いてきやがった!」
「ハハハ、みんな元気そうで良かったよ」
何をどう見たら元気そうに見えるんですかね。(呆れ)
とりあえず俺達は受付へと向かう。
「お、お疲れ様です。今日はいったんどんなことで」
心なしか俺はディーゼさんがやつれて見えた。
「クエストを終えたので、その報告に、後ラックさん拾ってきました」
「大丈夫でしたか?ラックさんがいて怪我とかなさってませんか?」
心配そうな顔をしてディーゼさんが聞いてきた。
「……怪我はしませんでしたよ。怪我は」
そういって俺とシャルロッテは、遠い目をしていた。
「心中お察しします。それでは魔石を、それと巣の方の確認は、後程ギルド所筋が確認をしに行きますので巣のあった場所をお伝えください」
「わかりました。それで魔石なんですが、テーブルじゃ置ききれないのでどこか置く場所はありませんか?」
「わかりました。それではこの布の上に置いてもらってもよろしいですか?」
そういって3メートル四方の黒い布を床に広げた。
「それではお願いします」
シャルロッテは、空間からモンスターの魔石を流しだした。するとディーゼさんは、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
「この数の魔石一体どうしたんです・・・あっ」
ディーゼさんは察してしまった様だ。不運な人がいればモンスター遭遇率が上がる。それも2人もいれば火を見るよりも明らかであった。
「ほんとお疲れ様です」
「ほんとに疲れました」
「それで報酬についてですが、巣の方は調査が終わってから後日渡すことになります。それ以外でストモンスターの魔石の数が100を超えておりランクの高いモンスターも魔石もなざっていたので合計で金貨364万枚になります」
「多くないですか」
俺は驚きを隠せなかった。まさかこんなにもらえるとは思っていなかったからである。
「とんでもない!これでも少ないぐらいですよ。この中にはフォレストウルフが混ざってますから少なくともこのくらいになりますよ!」
「フォレストウルフってそんなすごいんですか」
疑問に思った俺は聞く。
「フォレストウルフ単体でも、C~Bランクのモンスターなのにそれが群れとなったらAランクにはなりますよ」
アイツ単騎でそんな奴らに勝ったのか。人間じゃねーな。
「それにしてもすごいですね。2日でこんなに稼いだのはあなたぐらいですよ」
「俺が凄いわけじゃないんです。ただ、仲間が強すぎただけなんですよ」
そういって俺は、3人の方へと向いた。すると三人とも俺に向かって笑いかけてきた。
「何言ってんだよ、お前がいなけりゃあそこまでモンスターとエンカウントしなかったからな」
「…そうカイトがいなければあんな事にはならなかった、誇っていいと思う」
「そうですよ。カイトさんがいなければ、あんなにモンスターと叩こう事にはならなかったんですから」
「お前ら、褒めてんのか、それとも貶してんのか」
「褒めてるに決まってんだろ」
「そうですよ」
俺の問いにルークとシャルロッテは、笑顔でそう言う。しかしフィルは、
「…どっちもに決まってんだろうぬぼれんな」
ゴシャッという音と同時にフィルは、気を失った。
「今のは気のせいですから気にしないで下さいね」
シャルロッテを怒らせてはいけない。
そう俺は再度理解した。
ついでに、フィルざまぁ。