葛藤
「ッ!」
俺は、部屋の奥から出て来たヘスを見て少し体が重くなった。いや、重くなったのは体ではないと思う…。重くなったのは、整理がつききっていなかった心だ…。
「ヒロ様?どうかされましたか?」
「いや、なんでもない。」
「クエスト、お疲れ様でした。」
「おう…。」
「また、次のクエストは私も連れて行って下さい。必ず役に立ちます。」
「あぁ…。ヘスは、強いからな。」
「ヒロ様ほどではありませんよ。」
「…。」
会話ができる…。でも、そこにあるのは、セイバーの精神の残りカスのようなものだけだ。どうして話せてしまうのだろうか…。いっそのこと一切話せなかったら、気持ちの整理もつきやすいだろうなどと思ってしまう…。
〈では、私が話しかけてもう二度と喋らないようにしましょうか?〉
…それはやめておく。俺は…思うんだよ…。たとえ残りカスであれ、そこには立派な自我が残っているんだ。自我あるならば、それは一つの独立した人だと思う…。たとえ、どれほど小さな自我であれそれを無視してはいけない…。俺は、そう思うんだ…。
〈…。〉
うーん。でも…まだ整理がつききるまでは時間がかかりそうだ…。いつか…、セイバーとヘス。二人は…一人になるんだよな…。言葉にしても違和感があるよ…w。
俺は心の中で苦笑いした。
〈ヘスペリスはもはや私と異なる自我を育て始めていますから…ヒロ様の心の整理がつき切らないのも頷けます。〉
「ヒロ様?本当にお身体の具合は大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。」
俺は、セイバーと話している間、30秒ほどヘスを見たまま動きを止めていた…。そのため、ヘスは心配してくれたのだろう。
「俺は、大丈夫だ。」
「ヒロさん…。」
クララが心配そうに俺を見上げる。
「大丈夫だ。」
俺はもう一度そう言って頷いた。
「そう、大丈夫。」
そして、もう一度。今度は自分一人にしか聞こえないほどの声で。
「ヘス。いきなりなんだが、ギルドに行こう。ギルド長が話があるそうだ。」
「分かりました。」
「クララ、グランは宿ないといてくれ。シロ、よろしく頼むぞ。あと…この物体は置いて行く。」
俺は、ずっと俺の肩につかまって寝ていた赤兎馬を床に置く。なんか、肩が凝った。
「わかったぜ!兄貴!気をつけてな!」
「お前は相変わらず元気だな…ww」
俺は苦笑いして扉をくぐった。
「「行ってきます。」」




