宝の部屋
コツン…。カツン…。
「ヒロさん。まだですかね?」
「ヒロ…。もう疲れたぜ。」
兄弟が赤兎馬の背中から声を発する。二人は歩いていないはずなのに疲れを感じさせる声だ。
「もう、一時間は階段を降りてるな。」
そう。二人が背中に乗っているだけで疲れるのも納得できる。俺たちは一時間以上階段を降りていたのだ。何もしないで一時間背中の上ってのは精神的に疲れたのだろう。
そして、何もしないでという言葉からもわかるかもしれないが、この階段では魔物が出てこない。そして、階段は曲がりもせず一直線である。そんな状態なら、精神がまいるのもわかるだろう。地上でいうとどこらへんにいるのかが気になるな。
「おっ。だけどこの単調な道のりももう終わりのようだぞ。」
俺の言葉に偽りはない。まだ遠くではあるが、明らかに異なる光が階段の先に見えた。
「本当ですね。たしかにこの階段に設置されている松明とは異なる光が見えます。」
「やっと宝の部屋だぜ!」
今思ったんだけど、この宝の部屋使いにくいな。もしかして…、めちゃくちゃ高価な宝があるとか!
俺の歩みが少し速まる。宝は欲しい。俺は今それほどお金を持ってないし、お金はありすぎて困るものでもないからな。
「ヒ、ヒロ。すまん。これ以上は進めん。」
「?なんでだ?」
赤兎馬が急に止まった。てか、赤兎馬が謝ってくるってよっぽど深刻な状況…?
「何かわからない力が我、いや魔物の接近を許すまいとしている。」
ふむ。魔力結界かな?
確か、街にも結界は張られていたはずなのに、赤兎馬は何食わぬ顔で入っていたな。
ここから、わかることはとても強い結界なのだろうということだ。ふむ。
「じゃあ、赤兎馬はここで待機しておけ。行くぞ、クララ、グラン。」
「おう。」
「はい。」
二人はすぐに背中から降り、階段を駆け下り始めた。元気がいいな。まぁ、ここは魔物もいないから大丈夫だろう。
俺も、すぐに追いかける。流石に俺は全力ではない。二人は全力かもしれないが…。
「あれ?何もないぞ?ヒロ。」
「何もないです。ヒロさん。」
俺たちはついに宝の部屋らしき部屋までたどり着いた。何故宝の部屋らしきらしきと表現したか。
理由は単純。
この宝の部屋には宝がなかったのだ。
いや、まだそう決まったわけではないので言い直そう。
この部屋には宝が見当たらなかったのだ。




