もう、死にます
街へ向けて出発した俺たちは、程なくして街にたどり着く…はずだった。
「野生のワイバーンが現れた。」
俺の視界には、このような文字と、鋼鉄のような鱗に覆われた巨大な生物。
ワイバーンだ。
「無理ゲーだ。」
思わずこう声が漏れてしまうほど、絶望的な状況だ。
この世界に来て小一時間。
これほどまで短い異世界転生生活だったとは。
みんなさようなら。
できることなら、異世界ハーレムを堪能したかった。
エルフ見たかった。
もふもふの獣娘に触れたかった。
ロリパーティーを組みたかった。
王女と友達になりたかった。
やりたいことはこれほどあるのに。
もはやこれまで。
そもそも、こうなったのには経緯がある。
数分前俺とヘスは普通に街に向けて歩いていたのだ。
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「あと少しで街が見えてくるよ。」
「ヒロ様。あそこの山にある穴は何でしょう。」
俺はヘスの言葉で山というよりは巨大な岩に空いた穴を見た。
その穴はとても深く外から見ただけでは、奥まで見渡せない。
近寄って見ても、やはり奥は見えなかった。
そして、もう奥をのぞくことを諦めようとしていた時、
「light〈ライト〉」
声がしたと思ったと同時に、ヘスの掌の上に光の球が出現した。
魔法だ。
これが、あの全ての人々が一度は憧れ、厨二病から神聖視されるもの、魔法なのだ。
ちなみに、俺は厨二病が悪いとは考えていない。
彼らは大きな夢を持ち続けられる素晴らしい人々なのだ。
そして、どこかで聞いたことがあるかも知れないが、夢を持つ限り人は一生厨二病なのだ。
おっと、話が逸れてしまった。
閑話休題。
とにかく、光の球が出現したのだ。
ヘスは魔法が使えるのかという驚きがまずあった。
そして、ヘスはこの穴いや洞窟が探検したいのかと思い横を見ると、案の定、ヘスが何かを我慢しているような顔をしている。
ヘスの意外な一面が見れて面白い。
俺に、Sっ気は無いのでちゃんとヘスの意思をくんでやろう。
「じゃあ。洞窟の奥を見に行くか。」
しばらく進むと、何か固いものにぶつかった。
うむ。これは何だ?
手触りは、ザラザラゴツゴツしていて岩のようだ。
匂いはうーん、何か獣臭いような…。
あれ。光の球が三つになっている。
ヘスがまた魔法で出したのかな?
…
っておい!
あれは、目だ。
大きな二つの光る眼がこちらを見ている。
「逃げるぞ。ヘス。」
「はい。ヒロ様。」
しかし、魔物の頂点たる龍族の一員であるワイバーンが逃すはずもない。
ワイバーンは狭い洞窟を見事に滑空し、俺たちの前に立ちふさがったのだ。




