ガチャ引きます
魔法陣の近くまで来た。
もうこれは神殿と呼べるレベルだ。
こんなものを誰が作ったのか。
そして、どのような技術で作られたのか。
謎は多い。
しかし、今はその謎を上回る高揚感がある。
どのようなゲームでもある、ガチャを引く時の高揚感だ。
「魔法陣の上に立って下さい。」
もはや見慣れた文字が指示をする。
「今回は無料でガチャを弾けるようにします。」
「本来なら、このタイミングで手元にオーブを出して下さい。」
「ガチャではスキルを獲得できます。」
「では、ガチャを引くための合言葉を言いましょう。」
目の前に現れた文字を読み上げる。
「Liberation〈リザレイション〉」
すると、魔法陣が明滅し始め、頭上にさらに大きな魔法陣が出現した。
出現した魔法陣は、緑色、青色、赤色、銀色、金色、と色を変えていき、虹色になった時回転を始めた。
そして、少しずつ降下し、最後には一瞬の閃光と共に、足下の魔法陣に吸収された。
それと同時に、俺の視界にはスキル獲得という画面が表示された。
そこには、獲得したスキルのレアリティ、名前、効果が記載されていた。
今回俺が手に入れたスキルは…
『レアリティ☆6
スキル名 ガチャ神
効果 ガチャが毎日一回無料でひけるようにな
る。また、眷属を一人召喚できる。 』
眷属だって…⁉︎
俺が状況を把握できずにいると、空から一筋の光が差し込み、天使のような影が舞い降りた。
光が弱まるとそこには、美しいというよりかは可愛い一人の女がいた。
髪は短く、その色は、はかなく今にも消えそうな青。
出るところはは適度に出て、引っ込むところは適度に引っ込んでいるが、健康的な見た目である。
このような、異世界の美女と呼べるであろう女がいたのだ。
「マイ、ゴッド。私はヘスペリス。貴殿は、一兆人に一人のスキルを引き当てられました。今日から私はあなたの眷属です。」
いきなりのことで驚いたが、頭が少しずつ追いついてきた。
(うん、俺冷静すぎ!)
そんなことはさておき。
俺が一兆分の一の確率を引き当てた。
宝くじが千万分の一の確率だから…。
やばいな。
とにかくこいつが、俺の眷属になったのだな。
いやはやほんとうに…
素晴らしい。
こんな美女といつでも会えるとは。
今まで一度も思ったことなんてなかったが…、俺の運に乾杯。
てか、ヘスペリスは長い。
うーん。じゃあ…
「ヘスペリスって一々言うのは長いから、ヘスって呼ぶわ。俺はヒロよろしく。」
俺はこう提案した。
「イエス。マイ、ゴッド。」
うん。
今まで、敬語もろくに使われたことないから、そんなに丁寧に話されると逆に気持ち悪い。
これも伝えるか。
「あと、その喋り方やめよう。もっとくだけた感じで。」
ヘスは一瞬、困惑した表情を見せたが、すぐに元の通りに戻って言った。
「かしこまりました。ヒロ様。」
うーん。
まだ、固いけど後は時が和らげてくれるだろうと期待しておく。
「ところで、ヒロ様」
ヘスが言った。
「なんだい?」
「今日の無料ガチャをお引きになりますか?」
おー。
すっかり忘れていた。
スキルの効果にそんなのがあったっけ。
「じゃあ。引くよ。」
俺はとにかく引くことにした。
スキルは多いほどいいしね。
「かしこまりました。」
「では、合言葉を。」
そうか。
じゃあいきますか。
「Liberation〈リザレイション〉」
再び頭上に魔法陣が現れた。
しかし、先程と違い、魔法陣は無色のまま回転を始め、吸収されてしまった。
『レアリティ☆0
スキル名 幸運[ガチャ]
効果 ガチャの時の運がほんの少しだけ上昇。』
へ?
☆0ですって?
しかも効果も微妙。
絶対ハズレですね。
ガチャ神なのに、運がないとか…。
すると、ヘスが解説をしてくれた。
「ご主人様が御察しの通りこのスキルはハズレです。しかし、ヒロ様は運がないわけではありません。なぜならこちらのスキルも、一兆分の一の確率でしか、当たらないからです。」
いやいやいや。
ヘス?
それフォローしてるつもり?
1兆分の一の確率のハズレとか大ハズレってことだよね?
複雑な気分だ。
そんなことを考えていると、視界に久し振りに文字が現れた。
「では、説明は以上です。冒険者ギルドに向かって下さい。」
「行き方は、視界左上にマップを表示するのでそれを見て移動して下さい。」
「これは、心ばかりの贈り物です。」
一方的に説明が終了された。
そして、与えられたものは布の服。
そして、見習い冒険者の剣。
なんてやつだ。
本当に心ばかりの贈り物、だな。
布の服しか防具がない状況になるとは。
まぁ、でも今日はいいこともあったし。
「じゃあ、ヘス。町に向かうぞ。」
ここから俺たち二人の冒険記は始まるのだ。