1章 相見
1章 相見
「―――――よう」
目の前には、白く眩い、空。
そして、そこに覆い被さるような影が入り込んできた。
「お目覚めか」
低く響くその男の声は、すぅっと胸の中に染み込み、池に落ちる雫のように広がってくる。
「誰…?」
私は、今の状況に理解が追いつかないまま、ぼーっとした頭で、質問を投げかけた。
少し間を置いた後、返答。
「…ただの通りすがりの、農民だ」
「…そう」
素っ気ない私の返答に、農民と答えた男は、困ったように笑った。
「どこが痛む?」
「…分からない。というより今の状況は」
意識が混濁し始め、考えるということが、段々とできなくなってきた。
男は目を見開いて言った。
「分からないのか?お前、道に倒れ込んでいたんだぞ?」
倒れ込んでいた?
なぜ私が、こんな、知らない場所で倒れていたんだろう…?
状況を、どうにか思い出そうとするも、ぐらぐらと空が揺れる。
言葉を発しない私を見て、男は心配そうに私の顔を覗き込んできたが、男の顔ははっきり見えず、目の前がまっくらになっていった。
「取り敢えず、俺の馬車で近くの街の医者の所まで運ぶ。いいな?―――おい…?おい!返事をしろ!?」
男は、意識のなくなった、少女を見る。
「おいおい、マジかよぉ」
男は、困ったように頭を抱えたあと、少女の線の細い体を抱え、急いで街へと馬を走らせた。