第九話 ○○のアイテムの秘密!
「デュエルさん、貴方もパズルドさんと同じように地に伏せてください」
「えっ!?」
どういう意味だ?
その意味に気付く前に、ピピディアが光る手を俺の脇腹にねじ込んできた。
「……っ!」
俺は二、三メートル腐っ飛ばされて、地面に転がった。
伝わってくるのは、冷たい土の温度だ。
衝撃を受けたせいで、俺の意識が深く沈んでいこうとしている。
脳の片隅で笑い声がこだまする。
昔の記憶が脳裏で展開される。
これは走馬燈というものなのではないか。
楽しかった俺のアヴニール伯爵家の思い出が花開く。
その昔の記憶の中で、アヴリルお嬢様は微笑んでこう言った。
『デュエル、――はね、――だったら、――が――なの。だから、――が――をしているときは、――が良いわよ――……』
俺は、ハッと開眼した。
ピピディアが、ぬいぐるみを拾っている。そして、虹色の真玉に手を伸ばそうとしている。
俺は、ピピディアを捕まえて、首のチョーカーを奪い取った。
「あ……私……」
ピピディアは、ふらつきながらくるくると回るとそのまま地面に倒れた。
「やはり、ピピディアは……」
今回は、アヴリルお嬢様に助けられた。
アヴリルお嬢様の声が脳裏によみがえる。
『デュエル、チョーカーや首輪のアイテムはね、他のアイテムならたいしたことないんだけど……でも、マジックアイテムだと、大抵が良くないアイテムなの! だから、誰かが首輪やチョーカーをしているときは、一応は気を付けたほうが良いわよ!』
そうだ、ピピディアのしていたチョーカーは、傀儡のチョーカーだ。
ピピディアは誰かに操られていたのだ。
ピピディアのファッションが気に入らなかったのではない。俺の本能が警告していただけなのだ。
「やれやれ……パズルドとピピディアを起こして帰るか……」
俺は、頭を掻くと立ち上がった。
見上げると、相変わらずの曇り空だ。
草原の草が揺れる音しか聞こえない。
その中で、カラカラという音が聞こえてきた。
虹色の真玉が風に吹かれて転がっていく。
俺はそれに気づかない。
「ふわぁああ……」
俺は暢気にあくびして、両手を伸ばしていた。
虹色の真玉が、ピピディアのぬいぐるみにたどり着く。
すると、まばゆい光が明滅した。キィィン……という鋭く小さな音が響き渡る。
「な、なんだ!?」
『ハハハハハハハハハハハハ!』
「なんだ!? カーバンクルのぬいぐるみが笑っている!?」
そういえば、不思議の鏡は、ピピディアがぬいぐるみを実体化させたいって言っていたような?
俺がギョッとしているうちに、カーバンクルのぬいぐるみは大きくなり、人の姿をかたどっていく。
気が付いた時には、俺の目の前にはローブ姿の男が立っていた。
何気ない動作で、男がローブを肩に落とした。
正体を知って、俺は驚愕した。
この男は、フランソワ――ではない。
「魔導士コルヴォ……!」
俺のつぶやきに、魔導士コルヴォはニヤリと笑った。




