第五話 武具屋の武骨屋の店主と取引しよう!
俺は、夕方の商店街に整列する店屋を見て回った。
「名の無い絵画は、おそらく道具屋で買い取ってくれるはずだな。兜×2・弓・弓矢×10本・棍棒・木の盾は、やはり武具屋で売るのが得策だな!」
まず、武具屋を発見した。看板の文字を読む。
「武骨屋か……」
なので、俺は、武骨屋で、
◆兜×2
◆弓
◆弓矢×10本
◆棍棒
◆木の盾
を、換金することにした。
ショーウインドウには、ブロードソードとプレートメイルが飾られており、夕日を反射して鈍く光っていた。
「センスの良いお店だな~! 冒険心がうずくな~!」
武骨屋のドアを開けると、ピンと張り詰めたような空気とともに、展示品の武器と防具が出迎えてくれた。店内を皮の鎧の新品の匂いが占めている。
「うわ~! 格好良い武具がたくさんあるな~!」
中から、服の下にレザーアーマーを身に着けて、腰に職人エプロンを付けた店主が出てきた。
「おう、いらっしゃい!」
やはり、この武骨屋の店主だ。
ポニーテールをしているが化粧っ気はない。若い職人風の店主だ。
一見すると、愛嬌が良く、気さくな店主だ。
「この、兜×2・弓・弓矢×10本・棍棒・木の盾を売却したいのですが!」
俺は、
◆兜×2
◆弓
◆弓矢×10本
◆棍棒
◆木の盾
を、木目調のカウンターの上に乗せた。
店主は、顎を触りながらニヤッと笑った。
店主の癖のある笑みに、俺はそこはかとない嫌な予感を覚えた。
「これは、ボロのの兜×2・ボロのの弓・ボロの弓矢×10本・ボロの棍棒・ボロの木の盾だな。かなり安いよー? 800Gでどうだ?」
「は……?」
俺は目をぱちくりさせた。
当然のように値段を言い渡されたのだが、このしっくりしない違和感はなんだ?
店主が、先ほどからボロの~と連呼しているのは何故だ?
俺はハッと思い当たった。
これは、店主の悪だくみじゃないか!
絶対に悪い品だと言って、安く買い取るつもりじゃないか!?
「全部、ボロの~じゃないんですが!」
すると、店主は悪びれた風もなく、ハハハッと笑った。
「やるな! 私の察するところでは、魔法の鑑定書を読んで分かったと見た!」
「……」
確かに、魔法の鑑定書のマジックアイテムを使用すれば、一つのアイテムを鑑定が可能だが、それに頼らなくても、アヴリルお嬢様のおかげで俺の目は肥えている。俺には、鑑定スキルがあるので、大体のアイテムなら鑑定できるのだ。
しかし、この店主は油断ならないのでは!?
さもすると、この気さくな営業スマイルで踊らされそうになってしまう!
「よし!」
店主は、手をパンと叩いた。
乾いた良い音がしたので、俺の意識は鮮明になる。
「兜500G×2・弓100G・弓矢10G×10本・棍棒200G・木の盾100Gで合計1,500Gで買い取りたい……と言いたいところだが、感心してしまったので、100Gおまけの1,600Gの買い取りでどうだ!」
あっさりと、700Gも高い値が付いた。
しかも、100G余分のおまけだ。
俺の心が明るくなっていく。
俺は内心ガッツポーズをとった。
「では、1,600Gで売却します!」
「よし、取引成立だな!」
俺は、1,600Gをポケットに仕舞った。
ドアを開けると、夕暮れの気だるい外気に晒される。
次に名も無い絵画を売るため、道具屋に歩みを進めたのだった。