第十一話 魔導書を買って行った主を探そう!
「確か、メイドが日記にしか見えない魔導書を買って行ったって、店主が言ってなかったか?」
ここに現存しているのは、2冊だけだ。あと1冊足らない。
「まずいぞ! あと、1冊足らなければ、魔冷庫が手に入らないぞ!」
魔冷庫が手に入らなければ、氷魔専科を保護できない。この暑さでは、魔法をかけるのも限界がある。MPがなくなれば終わりだからだ。
「もう、これに賭けるしかない!」
俺は、最後の解決のスクロールを広げて読んだ。
『日記にしか見えない魔導書を買って行ったメイドはどこにいるのか、巻物の中に示せ!』
解決のスクロールが、ボワンと音と煙を立てた。
何も書かれていないスクロールの中に、文字が浮かび上がってきた。あぶり出しのようにテコで焼いたような色の文字が整列した。
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◆日記にしか見えない魔導書を買って行ったメイドは誰か?◆
ピピディア。今、デュエルの自宅の玄関先にいる。
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「えっ! ピピディア? 玄関先にいるのか!?」
俺は、部屋を飛び出した。
「デュエルさ~ん! 居ますか~!」
玄関の前で声がしている。俺は、急いで玄関のドアのカギを開けた。
「ピピディア!」
「えっ? あ、う、あ、えっ?」
ピピディアは面食らった顔をしていたが、俺は構わず続ける。
「ピピディアが、日記にしか見えない魔導書を買って行ったって知ったんだけど」
「あ、ああ。そういうことですね? がらくた市でたまたま見つけたんですけど」
ピピディアはバッグの中から、日記にしか見えない魔導書の一つを取り出した。それを俺に差し出した。
「要ります?」
「要ります要りますとも!」
「では、どうぞ」
「サンキュ! まあ、上がって行ってくれ!」
俺は、ハイテンションになっていた。部屋に戻りながら、日記にしか見えない魔導書のページをめくって確かめる。文面は誰かの日記のような文章だ。確かに、これは本物のようだ。
「カバーを取ると……」
カバーを取ると、やはり暗号のような文章が並んでいた。2冊目もやはり同じだ。3冊とも、暗号文にしか見えない3冊の魔導書を手に入れた!
「それをどうするんですか?」
ピピディアは、横から尋ねてきた。俺は魔法機の前にやってきて、3冊の魔導書を全て魔法機の中に入れた。
「これを魔法機にかける……!」
ダイヤルを右に全開に回すと、魔法機が収縮して、取り出し口に何かが落ちてきた。
俺は、取り出し口からそれを取り出す。
「確かに、3冊の魔導書が2冊に合成されて出てきたぞ!」
「すごいですね、デュエルさん!」
ピピディアも魔法機を見て興奮気味だ。
「こっちが、『猛烈チャームの魔導書』だ! やったぞ!」
俺は、『猛烈チャームの魔導書』を手に入れた!
「でも、こちらはなんですか?」
「何だろうな?」
俺は、もう一冊の魔導書を手に取った。表題はない。俺には鑑定スキルがあるのに、この魔導書の名前が分からない。
「ふむ……」
俺は、正体不明の魔導書のページをパラパラとめくってみた。
すると、ページが光り輝く。俺は光に包まれた。
「うわっ!?」
「どうしたんですか! デュエルさ――!」
ピピディアの声が途切れた。
気が付いた時には、俺は、ダンジョンの中に瞬間移動させられていた。




