第三話 ピピディアのお願い
メイドはピピディアと名乗った。ミディアムヘアの金髪の背が低い子だ。泣きはらした青い目でこちらを見ている。
話を聞く限りでは、ピピディアはソレイユ侯爵家のメイドらしい。
「デュエルさん。大変なことを私はしでかしてしまいました。へまをして、ソレイユ侯爵様にご迷惑をおかけしてしまったのです!」
「な、なんだって?」
「問題を解決するには国宝級のアーティファクトの不思議の鏡が必要なんですが、私ではそんな高価なもの、どうにもならなくて……!」
「不思議の鏡……?」
「だから、私、私……!」
「いや、もう泣くな? 俺も良い策を考えるから」
「デュエルさん……!」
でも、不思議の鏡がマジカル☆魔法店にあるのは分かっている。
あれは、本物だ。俺の目に狂いはない。
でも、あれを買うのは……。
いや、待てよ?
俺は、ふと思い立ち、マジカル☆魔法店に再び訪れた。
「ちみぃ、今日は何の用かな~?」
店先で、不思議の鏡が出迎えてくれた。
今日も不思議の鏡は鏡の中でゴスロリ姿だ。
「今日は、お前を買いに来た!!」
「ドキンッッッ! 私の鏡をついに買ってくれる人が!!」
不思議の鏡は興奮気味だ。
「ついに、私は王子様に出会えたのですね!!」
「いや、買いたいところなんだが、持ち合わせがさっぱりない。なので、レンタルしたいんだが」
「れ、レンタルぅ?」
そう、レンタルだ。貸してもらえれば問題ないはずだ。あとは、この店に返還すれば問題ないというわけだ。
「まあ、レンタルでもお金さえ出してくれれば、問題ない・か・な」
おお、不思議の鏡は寛大だ。
「それで、いくらでレンタルできるかな?」
不思議の鏡はあくどく笑った。
「5,000,000,000,000G! びた一文負けないか・ら・ね、ちみぃ!」
「……!? しまった……。足元見られたか……!」
俺は、思わず下唇を噛んだ。
「……またあとで来ます」
俺は、すごすごと退散した。
「どうすれば、不思議の鏡がレンタルできる……?」
俺は、街中を考えながら歩いていた。
「5,000,000,000,000Gか……」
町のざわめきが、俺の行く手を迷路のように惑わせる。
「魔法店。料理店。武具屋に、道具屋――」
ふと、ミリアルドたちの笑い声が、俺の耳に滑り込んできた。
俺は、その方向に目を向ける。
とある店先では、ミリアルドたちが腕相撲して賭けをしていた。
「ああ、あれか。あの人たちに腕相撲で勝てば、5,000,000,000,000G――」
……!?
「そ、そうか! 勝てば、5,000,000,000,000Gだ!」
しかし、どうやってあのミリアルドたちに勝てばいい?




