第一話 フェアリーシェフズ料理店にて! 15
この所、ずっと雨の天気が続いている。霧雨が今日もしとしとと草木を湿らせている。
家から出た俺は、傘を開いて庭先の郵便受けを今日も確かめる。すると、今日は一通の手紙が届いていた。綺麗な便せんには見覚えがあった。裏を返してみると、封蝋が押されてあった。差出人を確かめる。
「ジャンティ様から?」
中身を確かめようとしたが、傘から落ちてくる水滴が気になった。ここで開封しては、水滴でインクがにじんで読めなくなる。今日も朝食を食べにフェアリーシェフズ料理店に向かうので、そこでじっくりと読めば良い。俺は魔法のショルダーバッグに手紙を仕舞って、今日もまた出かけたのだった。
いつもの道のりをたどれば、フェアリーシェフズ料理店が見えてくる。いつもの看板に、いつもの軒先のメニュー表を見て、いつものようにドアを開ける。すると料理の良い香りとともに、居心地の良い空間が姿を現した。
早朝にもかかわらず、朝食を摂りに来る客で今日も賑わっている。俺は、空席を探して視線を彷徨わせた。
「アレ? デュエルさんじゃないですか?」
「お~い、デュエルー!」
聞き覚えのある声に振り返ると、奥の窓際の席にピピディアとルミネが並んで座っていて、こちらに手を振っていた。席が見当たらなかったので丁度良い。俺は、手を振り返すとそちらの席に歩いて行った。
「ここ、座って良いのか?」
「うん、良いですよ~」
「私たちは食べ終わったから、ブラック茶を飲んでお喋りしていたんだ」
「ふ~ん?」
聞きながら、俺はメニュー表をチェックして、ブラック茶飲み放題付きの500Gの日替わりモーニングAを選択した。日替わりモーニングBも美味しそうだったが、今日はこちらの気分だ。
「デュエルさん。この頃、雨続きですよね~」
注文した料理が出てきたので食べていると、ピピディアが頬杖をついて窓の外を見ながらため息をついていた。ピピディアの視線の先には、つぼみの沢山付いたペローゼの木が沢山植わっている。
「あ~。そろそろ、お花見の時機なんじゃないか?」
「「そう、それ!」」
ルミネとピピディアは、両手をパンと打って俺を指差した。
「この分だとお花見も雨! この頃は天気が悪いから雨だとお花見は延期!」
「ペローゼの満開の時期が済んでしまうかも!」
「いや~、大丈夫なんじゃないか? お花見のころには、カラッと晴れるんじゃないか?」
プランタン王国では、初夏になるとペローゼの木が満開になる。けれども、この頃になると雨が立て続けに降る。
「そうだと良いんですけど~」
「占い師に見てもらったら、どうやら雨らしいんだ~」
「ふ~ん。そりゃ残念だな~」
食べ終わった俺は、魔法のショルダーバッグからジャンティ様からのお手紙を取り出した。それに気づいたピピディアが、手紙を指差した。
「それ、どなたからですか?」
「ジャンティ様からだよ。また厄介なことかもしれないけど」
そして、俺は便箋を開いて読んだのだった。




