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第一話 夢と正体不明の腕輪

 真夜中のことだ。俺の横では羽の生えた靴が、普通の靴のように大人しく眠っている。俺は、無意識のうちに寝返りを打った。両手がヒッポグリフの掛け布団から出て、万歳した格好で眠っている。寝相が悪いためか、掛布団は足に挟まれたまま縦に二つ折りになっている。しかし、俺は快眠していたので、異変に気付かなかった。


 俺の右手が光っていることに気が付かなかった。ジャンティ様の報酬に貰った、名のある職人に作らせたという、正体不明の腕輪が光っていることに気付かなかったのだ。


 俺は、深い眠りの中で、何かの映像を見せられていた。


「っはッ!?」


 瞬間、俺は開眼した。

 荒い息を吐きながら、体を起こすと、ぐっしょりと寝汗を掻いていた。まだ、初夏には早い時候なのに、この寝汗。相当の事だったのか、心臓が早鐘のように鳴っている。


 この時になって、ようやく俺の右手にはまっている腕輪が光っていることに気づいた。


「なんなんだ、この腕輪は……」


 初めは特注アイテムに喜んでいた俺だったが、この時ばかりは喜べなかった。先ほど見た夢は、生々しいほどにリアルだった。ジャンティ様は、俺に何か恨みでもあるのだろうか。


「やっぱり、この腕輪を外そう……」


 外してこの腕輪をマジカル☆魔法店で換金しようと思った。ジャンティ様から贈られた特注のマジックアイテムなら、滅茶苦茶高値で買い取ってもらえるはずだ。結構な報酬を貰った上に、換金して大金持ちだ。俺は、悪い夢を見たことを帳消しにして、笑顔で腕輪を外そうとした。


「……」


 右に回して上に押し上げる。しかし外れない。


「……?」


 左に回して上に押し上げる。しかし外れない。


「……!?」


 左右にぐりぐりと上に押し上げる。しかし、外れない。


「あ、アレ!? 俺、こんなに手がでかかったかな!?」


 俺は、自分の手を疑問視した。しかし、どうやっても外れる気配はない。

 絶対に変だ。

 右腕にはめるときは、あんなにゆとりがあったのに、絶対に変だ。

 脳裏に、ジャンティ様のにんまりした笑顔が思い浮かんだ。


「もしかして、俺はジャンティ様の手のひらでコロコロされているのでは!?」


 腕輪が外れないと言うことは、ジャンティ様にまたしても良いように使われようとしているのではないだろうか。俺の考えすぎだろうか。けれども、あんな夢をお遊びで見せるだろうか。俺は頭を掻き毟った。


 オリハルコンの腕時計を確認すると、真夜中の0時だった。このまま、寝不足なのも、ジャンティ様のせいにしそうで嫌だ。どうにでもなれとばかりに、俺は布団をかぶって不貞寝した。


 幸いなことに、朝まで夢はまったく見ずに眠ることができたのだった。

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