第二話 ピピディアが激怒している理由を突き止めよう!
「な、何がひどいんだ? 俺が何かしたか?」
「しましたよ……!」
俺は完全にピピディアに気圧されていた。ピピディアは泣いていたが、何故か今度は怒り始めた。
ピピディアは、俺の足下を鋭く人差し指で示した。
「そのデュエルさんの足です……!」
足という単語が強調された。
「あ、足? 俺の?」
「はい……!」
ピピディアは人差し指を戻して、カーバンクルのぬいぐるみを抱きしめている。
俺は、テーブルの下にある自分の足をのぞき見た。
俺の足は、ズボンを穿いている。
まだ、ピピディアが怒っている理由がわからない。
ピピディアは考えあぐねている俺に腹が立ったらしく語気を強めた。
「なんで、デュエルさんはその革靴を履いているんですか?」
「浄化の革靴? ああこれ、履き心地が良くて――」
ピピディアが再び泣きそうになった。
俺は、驚いてのけぞった。
「な、なんでそんなに?」
「私があげた羽の生えた靴……。あれはどうして履いてくれないんですか?」
想像と違っていたので、心なしか安堵して、俺はなだめるように苦笑した。
「いや、あれを履くと、羽の生えた靴が暴走するから、普段使いはできないんだよね」
「それを履くのが、真の男です」
「真の男ー! ええーっ!」
俺は、「じゃあ仕方ないですよね」と納得するピピディアを想定していた。
何故に、そんなに俺に履かせたいのか。暴走して風になる俺を見たいとでもいうのか。
無理難題を突きつけられた俺は、自分の顔の苦笑にさらに苦笑を貼り付けた。
「いや、さすがに普段使いは無理かと……!」
「真の男になりたくないんですか」
「ええーっ!」
困り果てた俺は、魔法のショルダーバッグから羽の生えた靴を取り出した。
「これを返すから、諦めてくれないかな?」
「デュエルさんのばかー!」
ピピディアは羽の生えた靴をひったくって、泣きながら店の外に出て行った。
「普段使いはできないからな……仕方ないよな……」
俺は再びスプーンを口に運び始めた。自然と、オリハルコンの腕時計のことに意識が向く。
あのオリハルコンの腕時計を手に入れるには、武骨屋で大きな仕事を貰うしかないだろう。俺の大好きな魔法機を使って作るのが得策だ。
食事を終えた俺は、500Gを支払った。
そして、俺は、軽い足取りで武骨屋に向かったのだった。




