第六話 フェアリーシェフズ料理店にて! 9
フェアリーシェフズ料理店に着くと、俺は右手の窓際の席に座った。
そして、魔法のショルダーバッグから、HPアップのチョコ50個とMPアップのチョコ50個を取り出した。
こうしてこれらのチョコを眺めてみると、かなりの量だ。
「やっぱり一食抜くかな」
俺は、ブラック茶飲み放題で200Gを注文した。
そして、HPアップのチョコを一つ手に取った。包みを取って、口の中に放り込む。
何の変哲もないチョコのように思えたが、内なる力が湧き上がってくる感じがする。
ぎゅんぎゅんぎゅーん!
「な、何だ?」
俺は、辺りを見回した。特に何の問題も起きていない。
各席では普通におしゃべりと食事を楽しんでいる。
「……?」
不可思議に思いながらも、ブラック茶で口の中に残る甘さを中和する。
二つ目のHPアップのチョコ口の中に放り込んだ。
なかなか、美味である。ブラックチョコのようにまったりしている。
ぎゅんぎゅんぎゅーん!
「な、何だ!?」
俺は、辺りを見回した。特に何の問題も起きていない。
みんなは普通に食事をしている。
俺は、テーブルの上の山のようなチョコに目を戻す。
……。……。
「……はっ!? ま、まさか!?」
俺は、落ち着きを取り戻すためにブラック茶で口の中の甘さを消した。
ドキドキしながら、三つ目のHPアップのチョコを口の中に放り込んだ。
ゆっくりと口の中に溶かしていく。
ぎゅんぎゅんぎゅーん!
「こ、このチョコのせいなのか……!」
どうやら、HPアップのチョコのレベルが上がったよ的な効果音だったらしい。
隣の席の魔法剣士と武闘家のカップルを見ると、こちらを見て笑いをこらえたように震えている。
俺は、構わずに次々と口の中にチョコを放り込んで行く。
ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん!
以下略。
俺は、ブラック茶で口の中の甘さを中和する。
ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん!
ついに、隣の席の魔法剣士と武闘家のカップルは、笑いをこらえてブラック茶を飲もうとしている。
彼らのカップの中のブラック茶が笑いをこらえた振動で波打っている。
俺は、気にせずにブラック茶で一息つく。
ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん! ぎゅんぎゅんぎゅーん!
以下略。
俺は、ブラック茶で口の中の甘さを中和する。
ついに、隣の席の魔法剣士と武闘家のカップルは、体をくの字にして笑いをこらえだした。
HPアップのチョコをすべて食べ終えた俺は、MPアップのチョコに手を付け始めた。
MPアップのチョコを口の中に放り込んだ。
こちらは、ホワイトチョコのようなミルキーな味だ。
ぎゅぎゅぎゅぎゅーん!
どうやらMPアップのチョコの効果音らしい。構わず食べて行く。
ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん!
以下略。
俺は、ブラック茶で口の中の甘さを消した。
隣の魔法剣士と武闘家のカップルは、笑いを堪えれなくなってきたのか、下唇を噛んで頬をつねっている。
俺は、落ち着き払って、MPアップのチョコを口の中に放り込んでいく。
ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん!
以下略。
俺は、ブラック茶で口の中の甘さを中和した。
ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん! ぎゅぎゅぎゅぎゅーん!
「よし! すべて食べ終えたぞ!」
俺は、ポケットの中を探ってレベルカードを取り出した。
【名前:デュエル 職業:魔法使い見習い レベル1 HP251 MP251】
【装備:白魔法の回服・☆攻撃反射の腕輪・☆浄化の革靴】
「よし! HPとMPが250ずつ上がっている!」
気が付いた時には、隣の魔法剣士と武闘家のカップルがテーブルの上で笑いを堪えたままになっている。
それを横目に、俺はブラック茶で一息ついた。
魔法剣士と武闘家のカップルの声が聞こえた。
「どんだけ、チョコでHPとMP上げる気だよ」
俺は、キリッとして、「250ずつです!」と、ハッキリ答えた。
そうして、俺は席を立った。
会計を済ませると、涼しい顔でフェアリーシェフズ料理店から立ち去ったのだった。




