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第一話 デュエルの災難

R15と残酷描写は保険です。

「デュエルさんは、このアヴニール伯爵家の執事のお仕事は長いんですか?」


 新入りのメイドが俺に話しかけてきた。


「そうでもないんですよ。それまで俺は貧しい暮らしを強いられていたんです。それを救ってくれたのが、アヴリルお嬢様なんです。それで、俺はアヴニール伯爵家の執事として働き始めたわけです」

「そうなんですか~」

「このデュエルって名前もお嬢様が付けてくれたんですよ。文字の読み書きも教えてくれましたからね」

「へえ! 流石はアヴリルお嬢様ですね!」

「前世は、勉強とバイトに追われる学生だったんですが、ファンタジーのような暮らしがしたいと願っていたら、気がついたらここに居たわけです!」


 そのメイドは呆気にとられていたが、やがてアハハと笑い出した。


「アハハ、デュエルさんって面白い人ですねー」


 面白いわけではなく、本当のことを言っているのだが。

 見かけが変わったが現在のはっきりした年齢は分からない。鏡を確認したところ、中高生ぐらいの風貌だった。


「最近は、アヴリルお嬢様にお借りした本をよく読むんですよ~」

「へぇ~!」

「それで、俺はそれで鑑定スキルを身につけたというわけです!」

「すごいですね、デュエルさん!」


 この異世界には、ダンジョンがあり、そこから出てきた珍しいアイテムがたくさんあるらしい。その中から、お嬢様はレアなアイテムをたくさん見せてくれるのだ。


「みんな! そろそろ、鑑定しましょう! アイテムを持ってきたの!」


 アヴリルお嬢様がアイテムを持ってきたので、お喋りは早々に切り上げられた。


「じゃあ、デュエル、お願いできるかしら!」


 アヴリルお嬢様は、二枚の絵画を持ってきた。


「お嬢様。贋作が、二つの絵のどちらであるかを言い当てれば良いのでしょうか?」

「そういうことよ、デュエル!」

「分かりました」


 俺は二枚の絵に目を凝らしたり、ルーペで見たりした。もちろん、本物は高価なので、手袋をはめての鑑定だ。


「こちらは偽物です」


 もう一つの方の絵に移動して、俺は目を凝らす。


「こちらが本物です」


「さすがは、デュエルだわ! 私では全然分からなかったもの! それで、この本物の作者は?」

「レレノアですね。お嬢様からお借りした本に載っていたんです」

「すごいわ、デュエル!」


 アヴリルお嬢様は本の一節を確かめて、頷いている。


「お嬢様、贈り物が届いています!」


 メイドが小箱を持ってきた。綺麗なリボンでラッピングされている。


「素敵だわ。誰かしら?」

「もしかして、アヴリルお嬢様をお慕いしている殿方かもしれませんよ!」


 一人が言い出すと、メイドたちは大盛り上がりだ。

 しかし、お嬢様の誕生日でもイベントもない時期に?


「早く中を開けて?」


 俺は首をかしげながら、お嬢様のためにラッピングのリボンをほどいてあげた。


「これ、物凄く価値のあるレッドオーブだわ!」


 レッドオーブとは、主に占い師が使用するアイテムだ。やはり、レアアイテムなら、占いの結果がスゴイらしい。

 アヴリルお嬢様は取り出して、ガン見していた。

 俺もまじまじとお嬢様の隣から見ていた。


「これは、相当高価なものだわ……。伯爵家でも手を出せないほどの……」


 アヴリルお嬢様は、信じられない物を見ているようだとばかりにため息をついた。

 メイドたちは大盛り上がりだ。


「殿方のレベルが違いすぎます! お嬢様、この方のところに嫁がれるべきですよ!」


 しかし、俺は奇妙な違和感に襲われていた。


「ちょっと待ってください、何か引っかかります。それに、これは、本の中で見た……?」


 俺は、ハッとして瞠目の限りを尽くした。


「これは! これは、薔薇の雫のオーブでは!?」

「薔薇の雫のオーブ? なんですの、それは?」

「お嬢様、とんでもないことです! これは国王様が王女様の十五歳の誕生日に贈られたレア中のレアなアイテムでは? 見る限り、このレッドオーブはただのガラスでもなければただの宝石でもない。だとすれば――」

「な、なんで、そんな高価なものを、私に?」

「贈ったのではないのでは!? つまり、これはお嬢様を陥れようとする誰かの陰謀なのでは!?」

「そんな!?」

「早く、これを宮殿に返還してください! でないと、とんでもないことになります!」


 しかし、時遅し。

 アヴニール伯爵家と宮殿で大騒ぎになってしまった。

 そして、アヴニール伯爵家は爵位を奪われるかの瀬戸際まで追い込まれた。

 けれど、俺の機転で俺の手違いにすることで、アヴニール伯爵家は事なきを得たのである。


 アヴニール伯爵家の計らいで、執事の仕事を辞めるだけの責任の取り方で、俺の命は助かったというわけだ。


 俺の機転でみんなの命は助かったが、危うく処刑されるところだった。

 しかし、俺は職を失った。アヴリルお嬢様が引き止める中、俺はアヴニール伯爵家を後にした。


 これは、俺、デュエルが、そこから、第三の人生を楽しむために、あんまり戦わないダンジョンと鑑定スキルで、楽しく過ごすために工夫する、のほほんで時々がんばる異世界ファンタジーである。


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