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ア・ムリタへようこそ  作者: たたら
雪の国
4/6

超回復薬の粉末と肉達磨

書いていたら、話が長くなりそうなので今回のは前編と二分割で投稿します。今回は一部、グロテスクです。初めの案からどんどん離れていく敵討ちに、戸惑いながらも頑張って軌道修正していこうと思います。

無料タダじゃ殺さない?笑わせるねぇ、美人だからって持てはやされすぎて調子づいてしまってんのかなぁ?」


「美人だからって持て囃されすぎて?何をいってるのかしら」


私は彼の言葉を鼻で笑った。


「私が美人なのは当たり前のことでしょう?ふふ、可笑しなことを言うのねぇ」


艶やかに頬に手を当てて、目の焦点を彼らに合わせて笑う。

一人一人と目が合うとたじろぐように後ろに下がる姿も見受けられた。その中でもリーダー格らしい男が腰の剣を抜いて特攻してきた。それに合わせて道を塞ぐようにして置いていた(そんなつもりはなかった)机たちが乱雑に散らかり倒れていく。


「一度痛い目見させてやる!」


「まったく、さっきのピリッとした雰囲気で察することが出来ない程度の実力なのね。そうだ、あれを使いましょう。久しぶりに使うから間違えないようにしないと」


「余裕ぶってんじゃねえええええ!」


男は剣を突き出す。しかしそれは私の前で見えない壁に阻まれて届かなかった。見えない壁は軽く光るとそこから衝撃波が出てきて男は吹き飛ばされる。


「ぐあああ!」


「言うの遅くなったけど、害意を反射する防御膜張ってるから。あんたたちの攻撃は私に掠りもしないから」


「ま、魔法使いだったのか!?くそっ!」


「詠唱を省略し、無言で発動するところを見るにかなりの高位魔法使いだ。ここは不味い、逃げるぞ」


衝撃波で倒れた男を三人は引き摺るようにして喫茶店から出ていこうと扉に手をかけた。


「あ、あれ?」


三人のうちの一人が代表したかのようにドアノブをガチャガチャしながら疑問符を頭に浮かべた。戸惑いの色が言葉を介して伝わってくる。


私は膝を組んで、机に肘を付きながら話し掛けた。


「逃がすと思った?」


機嫌が悪いせいか声はいつもよりひややかだ。


まだ諦めきれないのか一人が蹴破ろうとしているが、ここは私の領域テリトリーなの。喫茶店も私の意思を反映するように出来ている。つまり、私が認めない限りここから永遠に出ることは出来ない。


「ふふ、あれかなぁ、これかなぁ、あっちも良いよねぇ」


私はこの世界の魔法である、生活魔法の収納棚ボックスに収納している薬草を見ながら不敵に微笑みながら一つ一つを手にとって確認していく。


「な、なあ許してくれ・・・」


「俺達が悪かった。助けてくれよ」


男たちには為す術が無かった。私に触れることすら叶わないということはすなわち自分は無力で何も力を持たない赤子同然ということ。さらに私の手に取る薬草を見てこれから何をされるか分からない恐怖。無力は言葉を紡いで私に語りかけてくる。段々とその声が自分を苦しめていく事にも気付けぬままに。


「そうねぇ、そこで気絶してる男は無視して良いわ」


「どういうことだ!」

「こいつより俺を助けてくれ」

「お前・・・」


三人はそれぞれで意見が別れた。

それが次の質問の為の伏線である。


「話は最後まで聞きなさい。今から三人の中から一人だけ私に差し出しなさい。そうしたら、考えてあげるわ」


「わかった、お前が行け」

「はあ!?なんで俺が」


すぐさま答えを返してきたのは我先に我が身の保護を唱えた男であった。そこから泥々とした誰を人身御供にするかを決める闘いが始まった。殴り合い、罵り合い、心のたけを咽び合う様を見ると心地が良い。彼らは先程まで一つの信念の下、助け合っていこうとしていた人間達だ。


「セリス・・・。私は本当に友達だと思っていたわ。年は離れていたけれど私からすれば貴女なんてまだまだ処女のように素敵に見えたわ。賢すぎるのも辛いわね」


こうなることが分かっていたのかもしれない。

いつか、こうなることが分かっていたのかもしれない。


「でもセリス、貴女は甘過ぎるわ。厳しくせずに諭させてたのかしら、語りかけるように、貴女ならそうしそうね」


目を細目ながら、もう会うことない彼女ならと考えを巡らせた。




ーーーー。



「ねえ、もういいかしら?」


「あぁ、決まったぞ。ガンマお前が行け」


そう言って投げ出されたのは、身体中に青仁丹あおじんたんが出来ていて、顔は赤く腫れ上がっている。斬りあいにまで発展していたらしく、切り傷も所々見受けられる。


ガンマと呼ばれた男は動こうとしないのでもう一人の男が無理矢理こちらへ放り投げてきた。ガンマという男は先程まで我が身の保護を唱えた者であった。


「グヴッ!」


「お前が一番に死ぬべきだ」

「仲間より我が身が可愛いのかよ」


唾を吐き捨てるように二人は言った。


「あらあら中途半端にケガしちゃって可哀想に」


私は優しく語りかける。


その声色にガンマの中にある恐怖心がやわら解けていくようだった。


「じゃあ、一人目ね。ガンマさんはこちらを飲んでもらおうかしら」


この一言で、一気に顔が青くなっていく。


「や、だぁぁ」


「これは超回復薬の粉末よ、飲むと傷が癒されるわ」


「うっ、嘘つけ」


ガンマさんには無理矢理、粉薬を飲ませた。


すると、本当に身体中の傷が癒えていくのだ。


「ほ、本当に傷が癒えていっっっぎぃやあああああ!」


「これはただの回復薬じゃないのよね。分かる?回復しすぎるの、超って言ったでしょ?身体中の筋繊維が治ろうと動いている。けど完治しているの、治す場所なんてもう無いのにね。まだ足りないと何かを治したくて堪らなくて活性化していく。行き場のない活性化は筋繊維を太くしていく。そうすることでしか、行き場が無かったから」


私は優しく語りかける。セリスお婆ちゃんと同じような声色だけれど体の変化と同時進行で考えれば考えるほど悪夢になる話に、ガンマさんは狂ったように奇声を発している。


「やぁめぇろぉぉぉおヴォォォェェェェ!ぎだぐないぃぃぃ!」


「筋繊維が太くなりすぎて今まさにその様なんだけど、達磨のようになる。やがて、体の活性化エネルギーは次の行き場を求めて外に出ていこうとします。つまり、ふふ。サヨウナラ」


バンっ!と達磨の中心から破裂してそこには肉片が散らばっている。元はガンマさんであったモノだ。


「ああ、ぁぁぁ!人殺し!化け物!ぁぁああああけろぉぉおおお!」


寝ていたリーダー格らしい男が起きて、ガンマさんが死ぬ様を見て寝ぼけてた頭が覚めたらしい。怖くて、腰が抜けて立てず、すがるようにドアノブに手をかけたが開かなかった。


「お目覚めかしら、この方が死んだのはそこの二人が人身御供として私に差し出したからなの。剣で斬りつけたりなんかもしてたみたいだし、あらあら、もう誰も信用出来ないわねぇ」


オホホホ、と笑う私に目覚めた男は残り二人の仲間を交互に見ながら「嘘だろ・・・」と呟いた。


「あらあら、三人に戻ってしまったわね」


「まさか!」

「嘘・・・また?」

「なんだ?」


察しが良かったのは先程まで殴り合いをしていた二人。分からなかったのは目覚めたばかりの男であった。


「また、一人」


私は人差し指を口元に当てて、示すように視線を向けた。


「差し出せ」




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