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ア・ムリタへようこそ  作者: たたら
雪の国
3/6

自称革命家のグラタンケーキ

今回のメニューはパンプキンシチュー?をそれっぽく書いたもので実際にこの手順で作ってみても美味しいとは限りません。もうしわけありません。

次の日、お婆ちゃんが来なかった。


私はうーんと唸るように伸びをした。とても暇だ。


雪の国は年中雪が降ることで有名な土地で、暮らすには厳しい立地環境なので住んでいる人が少ない。数年前まで統治していた領主がぽっくりと逝ってしまってから、過疎化が一気に進み始めたようで若手は他所の地へ行ってしまい街の高齢化が酷くなった。


そのせいでもあるのだが私の喫茶店には客があまり来ない。雪のせいで家から出てここまで来れるほど足腰の強い年寄りもいないので、セリスお婆ちゃんが雪の国で唯一のお客様であり友達なのだ。


「誰も来ないなんていつぶりかしら・・・」


何となく、呟いた。


その時に不穏な気配を感じた。雪の国は治安もよく穏やかな街であるから、このようなものを感じることは少ない。


「どこかの婆さんがトチ狂ったのかしら、それにしてもやりすぎよねぇ・・・人殺しはやりすぎよねぇ」


ーーーー。



からんころん。


店の扉が開いた。お婆ちゃんではなく珍しいことに大人数だ。


「おお、こんなところで店を本当に開いてるとは!」


「見てくださいよ。店主もとても美しい」


厚着を重ねて防寒対策はバッチリと決めている無精髭の男たちが来店した。格好からなにまでこの街の人とは違って見えるので他所から来たのだろう。こんな何もないところまで何をしにきたのやら。


「いらっしゃいませ、当店ア・ムリタへようこそ。お好きな席へお座りください」


私は綺麗にお辞儀をして、キッチンの方へ戻って料理の支度を始める。


「なににしますか?」


「ここは喫茶店なのだろうからな。腹を満たせるとは思ってねえよ。無難にケーキを食べようぜ」


「そうですね、それにしても情報通り美しい女性ですな」


「ああ、これからが楽しみだ」


男たちは何やら会話をしている。そんなに広い店内ではないので話がすべて筒抜けているとも知らず、何が楽しみなのか疑問に思っていた。


「姉ちゃん!注文をいいかい?」


キッチンから聞くのも良かったが、初めてのお客様だし印象を良くしておこうと注文を受けに側まで寄りに行った。


「このグラタンケーキってのを四つくれ」


「かしこまりました。っひゃ!」


「良い声するねぇ」


リーダー格らしい男が私のお尻に触れてきたのだ。なんの前触れもなくボディータッチとは、私の中の機嫌メーターが下がり始める。


「あまりこういうのは良くありませんよ」


「軽いスキンシップだって、おっかない顔をするなよ」


「次は許しませんよ」


それだけ言うとキッチンで注文の料理を作り始める。


一応、賄いのような意味合いも込めてパイ生地とグラタンは用意してあった。早く出すために下準備を常にしているのだ。オーブンで10分ほど焼き、軽く焦げ目が付いてきた辺りで取り出す。その天辺に穴を開けてオーブンで焼いている間に仕上げたチーズ、生クリームを溶かしてとろみが出てくるまで煮込んだものに人参や少量の細かな肉とブロッコリーなどの野菜を放り込み塩コショウで味を整えたものを、パイ生地の中に注いだ。


パイ生地の中が半分ほど埋まったところで、パンを四角く切って軽く焼いたものを入れる。開けた穴を再び、閉じるようにくり貫いた生地で蓋をしてオーブンで5分。


そしてグラタンソースの匂いを完全に閉じ込めたシュークリームのような形をしたグラタンケーキが完成した。


「お待たせいたしました」


「おお、暖かそうなので良かったぜ」


「サクサクとしたパンの中にはとろっとろのソースだ。なんだこれ、甘く濃厚な香りが空腹をそそってきやがる!」


四人の男たちに配り終えると、最後にスプーンを渡して退散する。


この街に合わせたグラタンケーキはセリスお婆ちゃんと考えたものだ。街に合わせたメニューを作ったらどう?という名案を私はすぐに取り入れて現在のメニューを混ぜて試行錯誤して完成した一品目だった。


「今日はセリスお婆ちゃん来ないのかな」


私がそう呟いたとき彼らの食指が止まった。


「どうしたのかしら、皆さん私を見て」


彼らの表情はとても険しいものであった。


「姉ちゃん雪の国領主の妻と知り合いだったのか」


「領主の妻ってのは初耳だったけどね」


「そうか・・・あの婆さんならもう来ないぞ」


「は?」


私は素で彼らに返事を返してしまった。彼らの一人が、残念そうに言うが堂々とした態度であった。


「雪の国の領主が数年前に死んだのは知ってるか?」


「ええっと、知らないわ」


「雪の国自体の内情に疎いことは理解した。じゃあ軽く説明してやろう」


リーダー格らしい男がこちらへ向き直る。


「雪の国というのは、厳格な領主が治めていて治安がとても良かった。だけどそれは数年前までの話だ。領主が死んでから子宝に恵まれなかった夫婦間で代わりに妻が領主になった。そこから酷いものだった、治安は悪くなり、税が上がった、若い者は街のために働いた、働いたが国のお金は減るばかりだった。なぜだと思う?」


「その領主の妻に才能が無かったからでしょ。セリスお婆ちゃんは結構機転が効いていたし別人じゃないの?」


「君もそう言うのか」


「この街の婆さん達は現領主のセリスで、だけには務まるわけがなかったと笑っているが、これは国の一大事だぞ。下手したら滅ぶかもしれない時に、のうのうと出歩き喫茶店でお茶だと?ふざけるな!国のお金で何をしてる。お茶を飲む、寝る。自堕落な生活をしているから国の危機に気付かないのだ!」


「話長いわねぇ」


厚着で分からなかったが、彼らはまだ三十前半といった年齢だろうか、おそらく雪の国を出ていった若者なのだろう。


「で?国を捨てて他の国に逃げていった若者が、我が物顔で故郷について語ってるけど、結局なんなの?」


彼らは驚いた顔をしたが、やがて一息ついた。少し熱くなりすぎていたことにやっと気付いたのだろう。


「我々がこの土地の者だと気付いたのには驚いてしまった。つまりは、情勢の改革だ。本日より兼ねてから計画していた革命運動を行うことにした。雪の国の領主は今日限りで死ぬだろう。そして新しく若者がこの街を作っていくのだ!」


「なるほど、そういうことね。分かったから、早く食べて出ていってくれる?私、今機嫌が物凄い悪いから。分かるよね?」


私は頬杖付きながら彼らに嫌みったらしく声をかけた。


しかし彼らは帰ろうとはせずに厚着していた服を脱ぎ始めた。


「姉ちゃんこの国で店を開いているんだろ?ならこの国のやがて大臣になる俺達に逆らってはいけないんだ。そこもわかるよね。つまりだ、今から君は俺達のーーー」


ピリリっとした空気感が張りつめていく。


「私、今、機嫌が物凄い、悪いって、言ったよね?あー、最悪なにこの馬鹿な奴ら。そりゃこんなのが国にわんさか居たら統治が上手くいくわけないわ。セリスお婆ちゃん、頑張ったんだろうけどこういうのは旦那さんのが向いてたんだね。《こんな馬鹿を躾るってのは、女には難しいもの》」


何となく、分かってきた。セリスお婆ちゃんは知恵を駆使して旦那さんは馬鹿を躾る役目としてこの国を統治していたんだ。片方が倒れてしまったから、今まで塞き止めていた馬鹿が騒ぎだした。おかげで国のお金が減ったのだ。


「世間知らずのガキが、今さら帰って来て国の為とかほざかないでくれる?」


「言わせておけばっ!!!」


緊張感の漂う空間に微かな魔力の反応があった。


それに気付いたが放置しておく。おそらく連絡手段かなにかを用いたのだろう。


男たちの一人がニヤリと笑う。


「たった今、連絡があった。セリスの首を取ったぞ」


機嫌メーターが上限を越えて不機嫌メーターはMaxだ。



無料タダじゃ死なせない」



私の楽しみを奪った罪は重いわよ。



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