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俺が恋愛をする理由なんかない!  作者: 怜刻
暗闇の過去
4/10

最初の相談

相談同好会となっている相談部を、正式な部活とするため、椿つばきの知り合いである、香山かやま ゆうを勧誘する、が、まずは香山の相談を乗る事になる。香山の所属していた、茶道部を復活させるため、相談部は、朝会を利用する事にする。


「はあ!?何でだよ!」

「おまえなあ、こっちだって適当に朝会作ってるわけじゃねえんだよ。」

大翔が1人で先生に交渉に入るが、あっさりと拒否されてしまう。

(ちな)みに、この先生は、相談部の顧問として音華(おとはな)が取り寄せた、高山(こうやま) (たか)先生だ。

「たった2つの部活だぜ!?それに、ウチら相談部はそんなに話さねぇからさ!」

「そう言われてもなあ、ん?音華じゃないか。」

「え?」

大翔の後ろから、部員である音華、竜也(たつや)椿(つばき)が来ていた。

「おまえらまで、一体何の用だ?」

「先生、私達からも、願いします。」

すると、3人は先生に向かって頭を下げた。

「お、お前ら?」

唖然とする大翔。

「音華、椿まで…そんなに大事なのか?お前らにとって。」

高山は頭を掻いた。

「当たり前だ、俺らの初仕事だからな!」

大翔が腰に手を当てて誇らしげにする。

「分かった分かった…校長に話つけとくから、お前ら早く出てけー。」

高山は、だるそうに机に戻った。

「あ、ありがとうございます!!」

4人は揃って礼をした。

「うるせー、早く帰れってんだ。」

そう言って手を振った。

4人は職員室を後にし、部室へ戻る。入ってきた4人に、香山と荻名(おぎな)が、すぐに反応する。

「ど、どうだった!?」

香山が心配そうにする。

「大丈夫よ、なんとか許可を得られそう。」

「そうか、よかったー。」

香山が椅子に座り込む。

「落ち着くのはまだ早いわ、勧誘する台詞(せりふ)、ポスターも書かなくちゃね。」

「さて、忙しくなんのはこっからだぞ、茶道部ども。」

机に腰掛けた大翔が言う。

「部室はもう用意してあるわ、そこを使いなさい。場所は隣よ。」

相談部の隣は、この教室の予備教室だったが、使う必要も無いので、掃除して空けておいた。

「あ、ありがとうございます!!あ、これ、入部届けです!」

そう言って、香山が入部届けを音華に提出した。そして、2人は、そそくさと教室へ向かっていった。

「これで一段落だな。」

大翔が机に寝っ転がる。

「ちょっと、やめてよ、御行儀悪いのね。」

音華が痛い目で見る。

「まったく、さすが子狐だ、やはり、本当に人間では無いようだね?」

椿がおちょくる。

「あ?うるせぇな、椿。」

大翔が机から降りて椿と睨み合う。正確には、大翔が一方的に睨んで、椿は薄ら笑いを浮かべている。

「でも、上手くいくかね?」

竜也が心配そうに言う。

「分からないわ、でも、成功すれば報酬はデカイわ。」

音華の悪い顔が出た。

「へえ、一体どんな?」

竜也が問う。

「この相談には、2人の人間が関わっているわ、1人の香山がくんは、既に引き込んであるけど、うまく行けば、荻名さんも引き込めるわ。」

音華が拳を握り締める。

「なるほど、これで部員が6人になる可能性があるわけだ。」

現在部員は5人だが、運動部という忙しい種類と掛け持ちしている竜也は、毎回参加するのは厳しいだろう。と、なると、やはりもう1人居た方が得策だ。

「茶道部、上手くいくかね〜。」

大翔の心配が出る中、朝会の日がやってきた。

「さぁ、決戦の時よ、準備はいい?2人共。」

「大丈夫よ、問題ないわ。」

冷静に荻名が答える。

「だ、大丈夫…大丈夫…落ち着け...。」

対して香山は、落ち着かない様子だ。

まずは運動部からの報告だ。

「我々サッカー部は、週に7回、毎日練習し、今年度では、全国大会を勝ち抜き、ベスト8に輝きました。」

サッカー部部長の太い声が、マイクを伝って体育館に響く。

「あれが勝ち組かー!くそー!いい報告しやがってー!」

音華がサッカー部部長にガンを飛ばした。

それから陸上部、野球部、テニス部等の、運動部の報告が終わり、文化部に入る。

「私達、演劇部は、週に3回の練習を行います。今年は、残念ながら県大会には行けませんでしたが、また更に練習を重ね、次回、いい結果が残せるよう、励みたいと思います。」

演劇部の発生の良い声が響いた。

「さすが演劇部ね、声がいいわ。」

音華が羨む。

次々に部活が報告し、全ての部活の報告会が終わった。

「えー、続いて、新設部による、勧誘演説です、相談部さん、宜しくお願いします。」

そうアナウンスが入ると、音華、ではなく、椿がステージに出てきた。

「やあ、生徒諸君、我々のために長い間ご苦労だった、しかし、もうしばらく時間を頂こう。」

椿の特徴のある演説が始まった。

「我々が設立した部は、相談部!皆様も、もうポスターを見たのではないだろうか?悩み相談なんでも受付け!勿論、部員も募集している、僕に会いたい方は是非!ウチの部へ!」

そう言って椿は大きく手を広げた。周りからは、「何あれ」「てか、あいつだれだよ」だの、コソコソ話が聞こえてくる。相談部部員は、何故コイツに任せてしまったのだろうと、後悔する。

「さて、ここからは本題に入る。」

テンションを普通に戻し、椿が本題に入る。

「我々相談部に、早速依頼が入った。茶道部を復活させてくれ、とのことだ。」

一斉にざわついた。

「今回の新設部勧誘演説の本題は、彼ら茶道部による演説だ、では、後は頼むよ、茶道部さん。」

そう言って椿はステージ脇にはけた。それに入れ替わり、荻名がステージに入る。

「私は、茶道部の部長をしていました。荻名です。」

荻名が出てきた瞬間、数名が目を見開いた。きっと茶道部の部員だ。

「今回は、崩壊し、廃部になった茶道部を、取り戻すために、ここに立っています。」

そこに、香山が、茶道部復活の文字が入った大きな紙を出した。

「現在、部員は2名しかいません、部にするには、あと3名の部員が必要です。新しく入ってくれる人でもいい、茶道部だった部員のみなさん、また帰ってきてくれてもいい、私は、茶道部を復活させます!」

荻名の演説が終わり、しばらく沈黙が続いたが、1人の女が手を叩いた。茶道部の部員だろう。それに便乗し、全校生徒が拍手をした。荻名と香山はステージ脇にはけ、音華とハイタッチをした。

その後。

「あー、疲れた。」

大翔が椅子にもたれ掛かる。

「あんた、何にもしてないでしょ。」

音華が呆れた目で大翔を見る。

「バーカ、見てるこっちの方も緊張すんだよ。な、竜也。」

大翔は竜也に同意を求める。

「そうだねー、今回は見学してる方もハードだよ。」

竜也も同じく椅子にもたれ掛かる。

「まあ、成功したからいいわ、唯一失敗したのは、演説にコイツを使ったことくらいね。」

音華は椿を指差し、その他2人は視線を向ける。

「そうかい?ま、子狐君が出るよりは、ましだと思うがね。」

「ま、今回くらいは俺もそう思うよ。」

一段落着いた4人。茶道部は、もう既に10人も部員が集まっているそうだ。

「まさか茶道部に部員数で抜かれるとは…。」

「当たり前だろ、茶道部には帰還者がいんだから。」

そんなやり取りをしていると、香山が部室へと入ってきた。

「相談部の皆さん、本当にありがとうございました!」

「礼なんかいいわ、香山君が部活に入ってくれただけでも、嬉しいもの。」

荻名は以前の明るさを取り戻し、香山も満足していた。

「荻名さんを引き込めなかったのが残念だけどね。」

音華がボソッと喋った。

「まぁでも、これで初仕事、完了だな。」

「うん、部員も揃ったし、これから忙しくなるわよー!」

そう言って音華は椅子に勢いよく座った。

相談部設立の最初の相談を、難無く乗り越えた落ちこぼれ組は、一歩づつ、脱退へと進んでいた。


放課後、部室の片付けを押し付けられた大翔は、1人、部室に取り残されていた。時間も遅く、夕日のオレンジの光が射し込む。

ガラガラ

教室に、1人の女が入ってきた。それは、大翔がどこかで見た事のある女性だった。大翔は持っていたペンケースを床に落とした。目を見開いて、その場に固まった。

―俺が1番会ってはいけない奴だ。ダメだ。―

「お前…。」

少女が大翔の反応に驚く。

「どうしたの?大翔君。」

大翔の名前を呼ぶ女性。大翔の脳裏に、恋愛をしてはいけないという、自分の鎖が、何かを縛った。


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