プロローグ
これは、俺が小学校の頃に体験した話だ。
俺はその時好きな女の子が一人居た。名前は覚えていないが、学年でも3本の指に入るくらいは可愛いかったとおもう。ある日、友達に彼女が出来たので相談に乗ってくれ、と言われたので、仕方なく乗ってやる事にした。
「で、お前は彼女に何をしたいわけ?」
彼は、彼女に何かしてあげたい、と言っていたので、とりあえずは本人の意見を聞く事にした。
彼、と呼んでいるのは、さっきと同様、名前を忘れたのである。
「そうだなぁ、僕はプレゼントなんかどうかな、と思ってるんだけど…。」
彼は、顔を赤めてもじもじしながら、そう答えた。
「うん、それでいいと思う。」
「本当!?」
「ああ、きっと喜ぶと思うよ?」
プレゼントか、俺も彼女が出来たら…。
その時はそう思った。彼女彼氏なんて誰もが欲しがる、そう思っていた。
その後、彼のプレゼントは大成功した、 可愛らしいぬいぐるみを買ってあげたらしい。彼等は、その後もちょくちょく遊びに行ったりして、リア充を満喫していた。彼は、彼女が欲しいと言った物は、殆どプレゼントしてあげたらしい。
長続きしそうだな、そう思った。
それから2週間が経った。そこで俺は、この恋愛の残酷さを目の当たりにした。
彼と彼女が、誰も居なくなった教室で、話をしているの見つけた。俺は少し、盗み聞きすることにした。
「もう別れましょ。」
え?
「もう飽きたの。」
「え、飽きたって…」
彼の悲しげな声が聞こえてくる。
「うるさいな、飽きたって言ってんのよ!大体あんたの事なんか、最初から好きじゃないっつーの」
「そんな…。」
「そういう事だから、もう寄って来ないで。」
そう吐き捨てて、彼女は教室から出て行った。彼は、しばらく動く事がなかった。
この一連の流れを見て、俺は、俺の中の何かが閉ざされた。
ーーこれが恋愛?俺が求めていたもので、人々の憧れ?ーー
そんなの嘘だ。自分の事を知りもしないくせに、知った様な達者な口調で告白してきて、散々相手から掻っ攫った(かっさらった)後は、その努力を嘲笑うかの様に振るのだ。
この作業を、恋愛と呼ばずなんと呼ぼうか。
そんな出来事から、3年が経った。俺は今でも、恋愛という馬鹿げた事には興味を示さない。恋愛をしない理由なんかいくらでも見つかるのだ。だが…
ーー俺が恋愛をする理由なんか、ない!!ーー