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9話

 ノービスからシングルだったらまだコボルトやゴブリン狩りでポイントが貯まる余地があるんだが、ダブルからは一段階上の難易度のクエストを受けないといけないらしい。それに備えて色々準備しておこう。


 切り札の量産は順調だ。と、言っても薬用の包み紙に痺れ薬を丸めて、投擲用に数を揃えているだけだが。それと破砕手榴弾は危ないので、爆弾の導火線の先端に燐を塗り、マッチ箱に着いている摩擦で着火するファイアスターターのようなものを作った。燐は普通に錬金屋で売っていたよ。


 しかしソロだとやっぱり効率が悪いな。こないだデニスにコボルトの毛皮を担がせたけど、あれより森に住む狼の方が高いし、こんなことなら村に着く前に狼の毛皮を持ってくるべきだった。それに荷役ばかり雇うといらぬ噂とかされるかもしれないし。


 そんな益体の無いことを考えながらも掲示板を見る。絵付きのはギルドから貼り出されている常時依頼だが、それ以外は文字だ。最近は少しずつ読めるようになってきたからまだいいが、それでも引っかかり引っかかり読むので、読んでいる途中に受注書をかっさらわれることもしばしばである。


 今日は空いているからまだいいとして、それでもちゃっちゃと依頼を読んでいこう。


 そして「前衛募集中。荷役も出来る体力に自信のある方。ジョルジュまで」と言うものを見つけた。俺はこの身体になってからとい言うもの肉体的な疲れはあまり知らないので正直興味を引かれたのだ。


「すまん、この募集なのだが」


「はい」


 早速カウンターで聞いてみることにした。


「この募集に興味が沸いたからジョルジュさんとやらと接触したい。どこに居るか分かるか?」


「ジョルジュさんは・・・・・・あそこで他2人と何か食べている方ですね。あの方達もジョルジさんのパーティメンバーです」


「そうか、分かった。ありがとう」


 それからカウンターを後にする。


「すみません、募集を見て前衛が欲しいとの事で来たのですが」


「ああ、それならここで合っている。ジョルジュだ。弓を使う。ここのリーダーをしている。こっちはセルゲイとディアスだ」


「セルゲイだ。斥候だな」


「ディアス。前衛だが見ての通り重装備でな。荷役が出来ないが、狼を狩りに行こうと話し合っていたところで募集と言うわけだ」


「ケイです。そう言う事ですか。ちなみにどのくらい狩る予定で?」


「一人頭5体は行きたい。お前もそれくらいじゃないと割に合わんだろう?だから鎧とかは置いていって実質荷役だけでも構わんぞ」


「いえ、体力には自身があるので大丈夫です。それより何か背負うものと紐が必要ですね。最近になって文字が読めるようになったから魔法を覚えて楽とか出来ればいいなと思ってたんですが、そういうものを入れる魔法とか無いんですか?」


「あるらしいな。俺達は全員シングルだから情報不足だが、一応そんな話を聞いたことがある」


 と、ジョルジュが言った。あるのか。


「まあ、魔法使いは文字が読めないと出来ない職業だからな。俺とセルゲイはともかく、ディアスは読めないし、平民で読めるのは冒険者の他は商人くらいだ。あと職人の棟梁とかくらいか。初級はともかく魔導書は鋼の大剣に匹敵する値段だから俺達は魔導書を買うよりは剣を買うがね」


 他にも錬金でマジックバッグを作ると言う手段もあるらしいが。と言っていた。


 しかし、逆に言うとグレートソード一本分我慢すれば魔導書が買えるのか。スティールやダークスティールはピンきりだが、金貨数枚で足りたはず。安くても金貨一枚からなので検討の余地があるな。


「質問は以上かな?」


「はい、ありがとうございました。今回は荷役らしいので背負うものと紐を用意してきます」


「ああ、それはパーティの経費で落としても構わないよ。道具屋に行こうか」


「ありがとうございます」


 思いのほか順調に臨時パーティに入ることが出来た。




 俺はマントを脱ぎ、鎧の上から背負子とロープを背負って行軍していた。防御はディアスが受け持つとのことで、盾は宿に置いてきてある。どっちにせよ狼の牙が篭手を貫通することは無いと思うので多分大丈夫だろう。


 そのままセルゲイを先頭に森を目指す。俺の五感にも嫌なものは引っかからない。いや、2度ほどゴブリンが引っかかったが、ジョルジュの狙撃とディアスの槍で仕留めて耳を削がれている。ディアスは森に入るから今回短槍らしい。


 その斥候並みの探知能力を褒められながら俺達は森へ入った。ここからは緊張していかなければならない。単体戦力の高い狼、その上群れを作るのだ。毛皮を剥いでいる間に別の群れが襲ってこないとも限らない。ともかく緊張感は持つべきだと教えられた。


「では、引き続きセルゲイが先頭、殿をケイが担当、何か引っかかったら気のせいだと思わず伝えてくれ」


「おう」


「分かりました」


 ここからは俺も剣を抜き、肩に置きながら五感を高める。後は警戒しておけばいいだろう。


「それでは、行くぞ」


 ちなみにパーティは頭割りの他に狩りの規模によってボーナスが付き、1パーティ5体に付き1ポイントらしい。20匹狩れたら4ポイントのギルドポイントがもらえるというわけだ。




「居たぞ」


 セルゲイが常に風下を意識しながら森を歩くこと数十分。見つけたらしい。


「では、ディアスが囮、セルゲイは俺と弓で援護、ケイはまだ動きがわからないからとりあえず俺とセルゲイの護衛に回ってくれ」


 その言葉でセルゲイがショートボウを取り出す。


「では、せいぜい邪魔にならない程度に頑張りますよ」


 剣で肩とトントンと叩きながら軽い調子で言う。


「では、ディアス、頼む」


「分かった」


 その言葉にディアスが駆けていく。全身板金だからとても目立つ。


「おおお!」


 ディアスが群れと接触。早速跳びかかってきた若い固体に槍を突き刺す。加減が絶妙なのか必要以上に毛皮を傷つけてはいない。


 次いでジョルジュとセルゲイが弓で援護する。ジョルジュは眉間や目を抜き、動きの早い固体はセルゲイが牽制する。


 だが、ジョルジュとセルゲイの方がやっかいだと感じたのか群れの一部がこちらに向かってきた。


「いらっしゃい!」


 ジョルジュとセルゲイの間に入り込み、篭手でぶん殴る。悲鳴を上げる狼の腹を剣で薙ぐ。


「ギャイン!」


 腹を裂かれた狼を蹴り飛ばし、次に対応する。ジョルジュとセルゲイも近づけまいと弓を射ている。


「次!」


 咄嗟に喉笛めがけて突っ込んできた固体に裏拳をくれてやり、吹き飛ばす。顎がおかしな方向に曲がっており、あれは多分放って置いても大丈夫だと思うが万が一があっても怖いので、ダガーを抜き放ち投擲した。


 左目に突き刺さるダガー。これでよし。


 と、油断したのもつかの間。別の固体から体当たりを受けてしまった。


「ぐっ!」


「グワウ!」


 俺を押し倒した固体は喉笛を噛み切ろうと牙を突き立てようとする。それに篭手を指し込み、腕の金属を噛ませながら反対の手で喉を鷲掴みにした。


「うおお!」


「カ、カハッ!」


 思い切り喉を握りつぶされ悶絶する狼。そのままヘッドロックの形に持って行き、首の骨をへし折る。


「そっちは無事ですか!?」


「ああ、なんとかな!」


 見るとセルゲイが弓を捨てて短剣と格闘で狼を牽制し、その間に後ろからディアスが、前からはジョルジュが隙を見せた固体から屠っていた。


 俺は再び剣を取ると、その渦中に突っ込んでいった。




 気がついたら辺りはペンキをぶちまけたかのように異臭のする赤色に満ちていた。どうも大所帯の群れと遭遇したらしい。数を数えると25匹。もちろんリーダー格の大きな固体まで居る。


 幸い背負子が壊れていなかったので、大急ぎで剥ぎ取りを行いその場を後にした。ディアスは返り血で真っ赤だし、俺もいくらか血を浴びてしまっている。帰ったら洗わなければ。


 しかし儲けは大きかった。単純計算でも一人6匹分だ。リーダー格の狼はもっとするらしいから今回の打ち上げに使うらしい。俺も御相伴に預かることになった。


 手早く剥ぎ取りを終えた俺達は帰ることにした。狼はアンデッド化しないようにまとめて焼いている。


「こういう狩りは戦闘後の方が敵に見つかりやすい。気を引き締めてくれよ」


 確かに、血を浴びれば臭いでばれる。


「そういうわけだからさっさと帰ろう。引き続きセルゲイが斥候をしてくれ。ケイは荷物が重いだろうから真ん中だ」


「あいよ」


「分かりました」


 こうして俺達は帰路に付き、3度ほど襲撃があったものの狼と比べればたやすい相手だったので、無難に処理して町へ戻った。クロスボウは値段の割りに耐久力が低いから諦めたが、遠距離ならナイフかダガーを投げれば良いと言う結論に至ったので魔導書購入のほかにはそちらも買っておこう。ジョルジュたちは狼の間引きと言うクエストを受けていたらしいので、それとリーダー狼の毛皮代で大いに盛り上がった。他人のおごりの飯は美味い。

 ストーリーに入りたいけど前書きで読む気を無くすと言う方もいらっしゃるらしいのでこれからは前書き抜きで、後書きも最低限でやって行きたいと思います。

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