7話
こちらでもお久しぶりです。スランプが抜けてきたので書いてみました。このまま乗り切れると良いな。
結論から言うとクロスボウは高かった。俺は足を掛けなくても腕力だけで弦を引けるから買おうと思ってたのに残念だ。しょうがないので鉄鉱石を割ってもらい、ゴルフボール大にしたものを袋に入れて遠距離用の武器としている。ゴブリンとコボルト相手にはこれで十分だよ。
せっかくゲットした変身能力だが今日は使わない。どこで誰が見ているかも分からないからな。
ゴブリンと薬草の依頼で3ポイント貯まっているので残り2ポイントでランクアップだ。焦らず行こう。とのことで、ゴブリン、コボルトの討伐、薬草の採取を受け、人の姿のまま探索することにした。
ゴブリンとコボルトは先手を取られさえしなければ良い。警戒をそこそこにヒールグラスを探す。これは単体でも効果があるが、混ぜる触媒によって効果が増減すると言う。出来ればそういう本も読んでみたいものだ。
本と言えば少しずつ成果は出てきている。まだ文法が怪しいが、まあなんとかなるだろう。
とと、ヒールグラスだったな。昨日の夜、ろうそくを頼りに毒草をごりごりやって干しておいた。腹痛のはまだいらないと思ったので麻痺毒の奴を乾かして粉にしたわけだ。皮膚浸透が遅いので傷口か口か鼻から吸わせるのが一番だろう。
一応何かあったときの為の切り札が欲しかったのでそれを用意した。
考え事をしているうちにヒールグラス発見。ノルマは5だったかな。
ダガーを根っこから斜めに刺して、周りの土を柔らかくする。そうして根っこを傷つけないように慎重に取り出す。昨日ギルド職員さんに聞いた採取方法だ。
この作業を5回、内2回は毒草が含まれているがそれもあとで活用するとして、途中コボルトに出会った。こいつらは住処に多量のコバルトを保有しているが、今の冶金技術だと単に粗悪な銀だと解釈されている。
こっちにはファンタジー金属があるかもしれないが、無ければクロムとモリブデンとかで丈夫な武具が欲しい。いや、そもそもそんなに俺この世界に居るのか?たまに居るのが当たり前に考えてしまうから怖い。刷り込みか何かか?
とにかく、今対峙しているのはコボルト1匹だけ。剣を使ってみるか。
あちらはうなり声を上げているものの、錆びて刃が欠けているナイフのみが武装だ。ぶっちゃけ篭手で弾ける。素手で何とかなりそう。
それでも剣に慣れるために使う。
油断無くすらりと抜き、正眼に構える。抜くときは片足を半歩下げるといいってどっかで聞いた。
相手はうなり声を上げていて向かってこない。仲間を待っているのか?
面倒なことになりそうなので先手必勝。喉に突きを放つ。ここで単なる突きではなく、剣を平にして突く平突きと言う技を使う。これは避けられたらそのまま斬撃につなげられる技らしい。
両手での突きだったのだが、喉をかする結果に終わってしまった。いや、まだだ。そこから横に振りぬく。
コボルト側もとっさに防御の姿勢を取ったが、突きの勢いは殺せなかったらしく前足を浅く斬り防御をすり抜けた。それでも喉にカス当たりだったので、横一文字に斬ったのだ。
喉から血を噴出しうつぶせに倒れるコボルト。前足で喉を押さえるも血は止まらない。
次第に動きも小さくなり、死んだかな?と思ったところでコボルトの武器を蹴る。
死んでいることを確認したところで剣を拭って錆びたナイフは一応売れるので持って帰ることに。後、コボルトの毛皮も欲しいので皮を剥いで昨日新調した剥ぎ取り用のかばんに詰めた。
ちなみにこれらの依頼は別に一日で全部クリアする必要は無い。でもヒールグラスくらいは集めておきたい。続行することにした。
途中さらにゴブリンとエンカウントするものの、こちらには気付いていなかったので昨日と同じように石を投げて対処することにした。今回は鉄鉱石な分攻撃力が高い。
即頭部のボグッ!という音と共に陥没していたため、こりゃ多分死んだな。討伐証として耳を削いで、錆びたナイフで目から脳を破壊する。切れ味が良かったら喉を斬るんだが正直剣を出すのが面倒だった。
鉄鉱石とナイフも回収して、最後のヒールグラスを探す。お、あったあった。5つで半銀貨1枚になるんだよ。今はランクを上げるのが優先だからな。他の連中と臨時で組めればもっと金が貯まる。帰るために旅をするんだったら金を貯めないと。もちろんそれだけを見ていると余裕がなくなってくるから適度にこの非日常を楽しまないと。正直ゲーム感覚だ。熱かったり痛かったりもしたけど、そんな対したものじゃなかったし。
しかし「地球へ帰還」か。こんなことになっているなら帰れないことも考えておかないといけないんだよな。俺自身改造人間にされちゃってるし、帰ったら帰ったでモルモットにされかねない。
そんなことを考えていたら帰りたくなくなってきたぞ。幸いこの世界はライトファンタジーなのか古代ローマみたいな上下水道が生きてるし、魔法の力で井戸から水道を引いてたりコンロみたいなものもある。朝おばちゃんが冷たい柑橘類のジュースを出してくれたから氷か冷やすマジックアイテムもあるんだろう。そう考えたらもうちょっと大きな町に行ったら大衆浴場もあるかもしれない。なんだ、無理に帰る必要がなくなってきたぞ。なんかこう、ありがちな「殺人への忌諱感」ってのも無いし。それはあれかな?改造人間補正かな?
どうせ地球に帰っても社畜に戻るだけだし、俺の他にも兄弟は多いほうだから親父とお袋の面倒はだれかが見てくれるだろう。なーんだ、帰る理由どころか帰りたくない理由が出てきた。
はー、どうせならバブルがはじける前に生まれたかったよ。要領のいい人ははじけた後もそれで手堅くやってたらしいし。まあいいか、異世界に来てまで故郷の経済の話なんて考えたくない。
とにかく、今日の収穫はヒールグラス5つにゴブリンの耳が1つ、それとコボルトの毛皮が1枚か。毛皮がかさばる分美味しいんだよな。ほんとポーター雇うべきかなぁ。
ギルドに戻った俺は早速換金カウンターに並び、今日の成果を換金した。明日はヒールグラスは換金しないで少し残して、ゴブリンの耳が5つで銀貨4枚だから残り4つ集めよう。ゴブリン狩りが中心でもコボルトに遭遇しないとは限らないから、緊急用にポーションを1本買っておこう。下級ポーション1つで半銀貨1枚するんだよな。だからヒールグラス中心になるんだけど。ポーションは飲むだけで患部に効くから馬鹿に出来ないんだよ。ついでに文字勉強用にギルドのパンフも貰う。
カウンターで銅貨2枚と銀貨1枚もらい、錆びたナイフを処分するために鍛冶屋に行く。あれでも銅貨5枚で買い取ってくれるって言ってた。袋付きの鉄鉱石1ダースで銅貨5枚だから馬鹿に出来ない。
「親父ー買い取り頼むー」
なんとも気の抜けた感じで来店する。
「なんでい律儀に昨日聞いたこと覚えたのかよ」
呆れ気味に出てくるのはドワーフの親父。と、言っても混血化が著しいこの世界ではドワーフらしい見た目をしててもドワーフな名前ではなかったりする。ちなみにこの親父の名前はスティーブだ。
「俺の腕力だったらゴブリンとかコボルト程度ならクロスボウ無しでも十分即死狙えるからな。おまけに右手左手1回ずつ投げても命中率は何故かほとんど変わらなかったし」
「そりゃおかしいが最初に棍棒持ってたときと言い、坊主実はオーガじゃねえのか?」
「失礼な。でもオーガはともかくオークならちょっと食ってみたいかも」
「ありゃ案外ゲテモノじゃないぞ。オークとミノタウロスの合いびき肉でハンバーグを作ると結構いけるんだぜ」
「まじかよ」
じゃああれだ。いつか自分のルックスを底上げするために妖精をボリボリ食べても違和感無いわけだ。この世界マジ無常だな。ルックスに反映されるのはキメラがどうこうって言う俺くらいだろうけど。
「あ、そうそう。一応布で拭ったんだけどやっぱ即席じゃだめだわ。メンテ用の油と布頂戴」
「骨は避けてるだろうな」
「あー大丈夫、喉斬っただけだから。軟骨?」
「ならいいけどよ。きちんと剣の事を考えてるから大銅貨1枚の所を銅貨5枚で布と油付けておいてやる」
「おーおっちゃんサンキュー。って買い取りと差し引きゼロじゃん」
「サービスしてやってんだ」
「まあそうなんだけどね」
こんな感じで適当にだべりながら武器屋内を物色する。どうも剣がなじまないんだよな。使えない事はないんだけど、盾と剣だったら出来れば大剣、予備か狭い場所はダガーでなんとかする感じがいいと思うんだけどな。
しかしこんなにすぐ下取りに出すのはちょっと思うところがある。盾は出来るだけいい状態で置いておいて、時期が来たら下取りに出そう。それであのダークスティールのグレートソードが欲しい。腕力的には問題なさそうだし。
「じゃ、おやっさん、そろそろ宿戻るわ。早く字覚えないと」
「おう、学は着けておいて損はねえぜ。頑張れや」
そう言って宿に戻る。これからギルドのパンフを見ながら文字のお勉強だ。あーだるいわー。
主人公、地球を想う。ただし、帰る必要があるのか疑問に思うとの事。