表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

6話

 今回は筆が乗ったので少々長くなっております。

 ルッツさんの馬車に揺られて5時間ほど、ルッツさんからはクロスボウを貸してもらったので、道中の獣などの撃退を行っている。


 足に掛けて背筋で弦を引くタイプなので、パワー不足は無い。何故か鋭敏になった五感で気配を読み、近寄る前に胴や、狙えるなら頭を狙っていった。


 ルッツさんに聞くと、コボルトと狼の毛皮は売れるらしい。ダガーで腹をかっ捌いて馬車に乗っけて行って貰うことにした。


 スライムも一応売れるらしいが、保存する容器が無いのでスルー。仕方ないね。


 もちろんボルトも再利用するので腹に刺さっても向かってくる相手には棍棒での一撃をくれてやり、ボルトを引っこ抜く。正直血抜きもしてない肝臓などをこれ以上食べたくないのでこれはそこら辺の獣とかが食べるだろう。


 ここら辺はコボルトとゴブリンが縄張り争いをしていて、いつでも小競り合いが絶えないらしい。逆に言うと、そこまで人間を襲う余裕が無いからこうやって町まで卸しにいけるのだとか。


 それにしても、新調した装備はとてもいい。


 篭手で噛み付きを防ぎ、カウンターで一撃入れるのが基本戦法になっている。時折複数に囲まれたりするが、ルッツさんが爆竹のようなものに火を着けて投げると威嚇効果もあり、敵が硬直するのでその間にルッツさんと俺で対処を行っている。この世界には火薬があるらしい。ただし、多用は出来ないらしいが。


 そんなこんなで町に着いた。牧歌的な感じだったけど、時折敵が襲ってくるから気が抜けなかったよ。


 町で門前に並ばされるかと思ったらそうでもなかった。入場料は半銀貨一枚。役所で身分証明証か、ギルド証を持ってくれば免除してくれるらしい。ルッツさんは農作ギルドなので免除。


「ありがとうございました、ルッツさん。馬車での旅と言うのは初めてだったので楽しかったです」


「なに、良いって事よ。困ったときはお互い様さ。ところで、この毛皮どうする?」


「俺はギルドを探して買い取ってもらいます。今回は山分けと言う事で」


「ああ、それがいいな。ついでだし、冒険者ギルドの前まで送ってやるよ」


「ありがとうございます」


 そんな感じで送ってもらった。


「それじゃあ気をつけろよ。新人は絡まれやすいらしいからな」


「ご忠告ありがとうございます」


 俺はウエスタンに出てくるような両開きの扉を押し、ギルドの中に入った。


 やっぱり見慣れない人物が来たせいか、じろじろ見てくる奴等が多い。


 そのまま無視してカウンターに向かうことにした。


「すまん、受け付けと買い取りを頼みたいのだが」


「はい、受け付けはどのような御用ですか?」


「ギルドの登録を頼む」


「かしこまりました。そちらの品は査定しますので、あちらのカウンターにお持ちください」


「分かった」


 俺は紐で縛った毛皮をカウンターに持っていった。


「おい兄ちゃん、腰に立派な剣下げてるのに得意な得物は棍棒か?武器が泣くぜ」


 案の定絡まれた。


「そこら辺の雑魚相手ではこれを使うまでも無い。俺自身納得いくまで修練が足りていないと思っても居るしな」


「なんだよ、どうせ没落貴族が一張羅でも引っ張り出して一旗上げようって来たんだろ?そういうの迷惑なんだよ」


「そういうお前は宵の口にもなってない内から酒を飲んで人様に絡むのがどれだけ迷惑か分からないのか?馬鹿なのか?」


「んだとテメェ!」


 とっさに得物を抜こうとするチンピラ。面倒なので抜く間に顎に良いのを入れてやる。


「ここで刃物沙汰にしようとはとんでもない奴だ。係員。こいつの処遇を」


「は、はい!ギルド内での抜剣は規定により違反行為です。今回は未遂でしたが、減点とさせていただきます」


「ふ、ふざけんな!」


「今は脳が揺れていてまともに立てないだろう。酒も回っているようだしな。安静にしてないと後でぽっくり行くかもしれないな」


「くそっ、覚えていろ!」


 ふらつきながらもギルドから出て行くチンピラ。ここまでテンプレだと・・・・・・ねぇ?


「さて、ギルド登録の続きだが」


「あ、はい。ギルドはノービスから始まり、シングル、ダブル、トリプル、クアドラプル、クインティプル、セクスタプル、セプタプル、オクタプル、ノナプル、ディカプルとなります。階級が上がるごとに特典もあるので頑張ってくださいね」


「つまり、ゼロから始まり、それを除けば10段階で評価されるんですね?」


「はい、そう言う事です」


「他には?」


「他には、自分のランクより高いランクの仕事を請けても構いませんが、違約金もそれ相応なので、あまりお勧めできません」


「さっき言っていた減点とは?」


「これは素行の悪いギルドメンバー用の措置です。10点を持ち点としまして、ギルド内の抜剣が1点、殺傷行為によっては3点から5点、迷惑行為は1点から3点ですね。デックさんは迷惑行為と抜剣で3点の減点です。これは一年に一度の講習を受ければ10点まで戻りますが、以後、査定が厳しくなったりといい事は無いです」


 まあ、荒くれ者も多いなら当然の措置か。


「他に注意事項は?」


「ノービスのソロなら依頼は5回達成すれば次のランクに上がります。常時依頼に薬草の採取やゴブリン、コボルトの間引きなどがあるので、あの狼とコボルトの毛皮から見るに、そちらの依頼を受けても問題ないと思います」


「そうだな。なら、薬草と間引きを受けよう。それにスライムは含まれるのか?」


「スライムは純粋に買い取りとして査定させていただきます。ギルド内に割れにくい瓶が売っているので、スライムを捕獲するのならば是非どうぞ」


「分かった。ついでにここら辺に宿とかは無いか?」


「それでしたらギルドの向かいにございます。当ギルド公認なのでお勧めできます」


「分かった。ありがとう」


「査定も終了したようです。あちらのカウンターまでどうぞ」


「ああ」


 ひっつめ髪の固そうな事務員から説明を受け、毛皮の料金を貰いにいく。ちなみに値段は狼が銀貨2枚、コボルトが1枚で合計銀貨6枚となった。


 既に夕方を回っている。宿に行こう。


「いらっしゃーい」


 ギルド向かいの宿に入ると、恰幅のいいおばちゃんが迎えてくれた。


「とりあえず10日分。サービス内容を聞いていいか?」


「ああ、飯は朝、昼が出るよ。冒険者は夜大抵外食してくるから出してないね。それと、言ってくれれば小銅貨3枚でお湯が出る。鍵はカウンターで管理しているよ。出るときに渡してくれればいい。1泊半銀貨1枚さね。他に聞きたいことは?」


「ランプとかはあるかな?」


「ああ、ろうそくなら3本銅貨1枚で売っているよ」


「分かった。じゃあ、前払いで銀貨1枚でいいか?後は残り半銀貨1枚分のろうそくと湯はその都度言う」


「あいよ」


「ああ、帳簿には代筆を頼む」


「はいはい。部屋は2階に上がって奥だよ」


「分かった。名前はケイだ」


 これで一段落だな。部屋で絵本を読もう。




 翌日、俺は寝るまでの間、絵本から文字を読み取り、それを水差しから人差し指に水を付けて延々と机に書いていた。英語と法則性が似ているのでまだ覚えやすい。


 これで本当に異世界に来てしまったのか?と疑問に思うも、現状生きていけるだけの資金を貯めつつ、俺の身体がどういじられたのか調べなければならない。黒ローブは「キメラは生き物の一部を食べるとその特性を得ることが出来る場合がある」とか言っていたが、食ったものと言えば狼の心臓と肝臓とかか。ちょっと試してみよう。


 四肢を踏ん張り、狼を想起する。深く思い出す。


 すると、狼そのものとは行かないが、人狼形態になった。ものが良く聞こえて猫背になり、爪先立ちになっている。はだしでよかった。


 しかしこのままでは仕事にいけない。昨日までの姿を思い出す。そこはかとない外人顔で金髪碧眼だ。


 案外スッと戻った。


 辛うじて自分の名前だけは書けるようになったが、そんなことより今日は初の仕事の日だ。常時依頼は受けているのでギルドに向かわずに町を出る。


 昨日はクロスボウを貸してもらえたが、今日は遠距離攻撃を持っていない。しょうがない、そこら辺の石を集めるか。


 俺は鞄の中から袋を出して、そこに手ごろな石を詰め込む。ゴルフボールくらいがいい。


 そうして終わったら気配を探る。むう、上手く行かないか。


 しばらく歩きながら気配を探るが成果が芳しくない。町から離れているし、早速能力を使ってみよう。


「うううウォオオン!」


 今の俺は鎧を着た大柄なコボルトに見えなくも無いだろう。見つかったら口封じぐらいはしないといけないかもしれないけど、鋭敏になった五感で警戒するしかないな。


 耳をアンテナのように左右に動かしながら匂いを嗅ぐ。居た。


 そこにはゴブリンが2匹、コボルトをボコボコにしているところだった。


 俺はこれ幸いと両手に石を持ち、ゴブリンの後頭部に石を投げる。


 肉球の付いた指先の割りに器用で、どちらもゴブリンの後頭部にクリーンヒットした。


 昏倒するゴブリンたち、コボルトは瀕死なのでどうでもいいだろう。討伐の印に耳を削ぎ、剣の練習がてら首を刎ねた。


 正直に言うと、コボルトは毛皮が重要視されているので討伐証と言うものが無い。逆にゴブリンは耳だけでいいのだが、ここまでボロボロのコボルトでは売ることは出来ないだろう。


 どうせコボルトだし、と言う考えで放置することにした。今の俺の姿はどうしても人間じゃないので別にいいだろう。


 さて、次、薬草だ。薬草の判別はルッツさんに教えてもらった。変身を解き、薬草を探す。匂いまでは知らないからな。


 警戒しながら別の袋にそれっぽいのをひょいひょい入れて行き、袋がパンパンになるまで繰り返す。その間に狼、コボルト、ゴブリン、スライムが襲ってきたが、狼とコボルトは追い払うか棍棒で粉砕し、ゴブリンは石を投げて動きが鈍くなったところに腹に棍棒の一撃を入れ耳を削いでから改めてとどめを刺した。スライムはそれの死骸に集るだけだったので放置した。


 それにしても鎧は素晴らしい。篭手のおかげで噛み付かれても平気だし、武器を持ったゴブリンやコボルトには盾を使って無難に対処出来ている。除々に剣の扱いも分かってきたし、言う事は無い。


 しばらくし、薬草の袋も溜まって来たところで帰ることにした。狼とコボルトの毛皮はかさばるので持っていけない。ポーターでも雇わないといけないか?でも、人狼形態を見せるのもなぁ。


 まあ、今はそんなことはどうでもいいか。不意打ちにさえ気をつけていれば遠距離攻撃で昏倒させて、とどめを刺せば良いだけだからな。


 そう考えを改め、換金の為にギルドへ向かった。




 俺は今図鑑とにらめっこをしている。


 俺が取ってきた薬草はヒールグラスと言うのだが、やはり人伝手に聞くのでは確実性が無いようだ。毒草が混じっていた。


 念のため図鑑を借りて分けていたときに発覚したことだったので、ギルドに手数料は取られていないが、ギルドの机の一角で薬草の分別をしている様はさぞや滑稽だろう。


 だが、毒草は毒草で使い道があるので問題は無い。と、言っても腹を下したり軽く麻痺させたりする程度のものなのだが。


 結果、半分が毒草だったことが分かった。まあ、こんなもんか。


 ヒールグラスも煎じたり葉を噛んで患部に塗りつけておけばポーション程でないにしろ、効果が出るとのことで、少数は確保してゴブリンの耳を一緒に納品した。半分以下でも袋がパンパンになるまで集めた甲斐があり、銅貨4枚に銀貨3枚の儲けだ。やっぱ毛皮の為にポーター雇おうかな。


 帰りに武器屋に寄ってクロスボウを買おう。俺の腕力なら足を掛けなくても弦を引けるから、まずはその辺からかな。

 能力の一部が開示されました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ