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5話

 私にはこのくらいのゆったりめのペースの方が合ってるような気がしてきました。

 バスタードソードを振り終えた俺は、あてがわれた部屋で今後のことなどを考えていた。


 まず、俺はどうやら人間とは別の存在になっているらしい。


 ホムンクルスと言うと、調整無しで数年しかもたないとかあるパターンだったり、逆に核が無事ならずっと生きていられたりするんだったっけ。


 となると、時期を置いてからあの研究所に襲撃かな?文字を読めるようにして、仲間を集めて、場合によっては俺の調整中見張らせる必要があるかもしれない。


 それと今後のことだけど、まずは大きな町に行って職を探そう。


 これだけ立派な装備を持っていても油断はしない。薬草採取くらいから出来ればいいな。


 こんなところか。


 方針はまとまった。寝よう。


 今日は慣れないことだらけだったせいか良く眠れた。




「保存食と火打石はルークが集めておる。ついでに水筒じゃな。後、マントはローズにやってもらっとるから昼までには出来そうじゃ」


「そうですか。ありがたいことです」


「しかしよかったのかの?昼まで時間をかけて」


「ええ、元々それまでは旅糧集めが主と考えてましたし、水筒もつけてもらえるのは嬉しい誤算でした」


「じゃが、その水筒も王都などで流行っている魔法瓶製ではなく、ただの革じゃからな。あんまり期待せん方がいいぞい」


「わかりました」


「そこで、じゃ」


「?」


「儂が昼までの間、剣を見てやろう。イザという時振れると振れないとでは大きく違うじゃろう?」


「そうですね。お願いします」


「任せなさい」


 そうしてまずは片手での扱い方を学んだ。


「鎧は頑丈だから腰を落として頭を守るんじゃ」


「そのまま敵に走り寄って盾で殴り飛ばせ」


「盾で受けられ無さそうならまず避けよ。猪の突進なんぞまともに受ける必要も無いしの」


「握ったまま受身が取れるよう意識せよ。さもなくば手首を傷めるぞい」


「盾を持ったままだったら抜剣したとき肩にでも乗せておくとええ。振るときは柄頭近くを持っての。つばぜり合いするよりは素直に盾で受け止めよ」


「片手はこんなもんかの。しかし、剣を持ったと言う割には息切れしておらんし、スライムを棍棒で砕いたと言うだけあるのう」


「それほどでも」


「まあええわい。次は両手じゃ。いけるかの?」


「はい」


「では、盾を持った状態でも両手で振ることは出来るからの。鍔の近くを盾を握った手で体重をかけるんじゃ」


「次、盾を置くんじゃ。囮に投げてもいいからの。そうしたらもう後は度胸じゃよ。お主が言っていたように急所を剣で防御しつつ突っ込め」


「突っ込んだら振り上げて、体重をかけて振り下ろす。他にも木々が邪魔じゃなければ横薙ぎに振るうんじゃ。やってみい」


「後は難しいがカチ上げることも出来るからの。長さの関係から剣の先端を地面に摩る形で切り上げるんじゃ」


「最後に突きじゃ。一対一以外では使わんようにの。片手なら肘から一直線に突き出すような形で、両手なら柄頭と鍔近くを両手で握って突き出してみよ。おお、そんな感じじゃ」


「後は反復の練習あるのみじゃよ。縦で斬り潰し、横で払い、最後に突きじゃな。見ているからやってみよ」


「わかりました」


 こうしてシェリーちゃんが朝食に呼びに来てくれるまで、ずっと剣を振るうのだった。




「おじいちゃんもお兄ちゃんも朝から張り切りすぎだよう。昼になったら腕プルプルしちゃうんじゃない?」


「それは考えとらんかったわい」


「何、大丈夫さ。本気で振っている訳じゃないからね」


「それならいいんですけど・・・・・・」


「どっちにせよしばらくは棍棒かな。剣は保険だから」


「そっかー」


 俺達はオートミールを食べながらそんな会話をしていた。初めて食べたがそんなに不味くはないな。


「ならば、昼まで平気で振るっていたらおまけしておいてやろう。頑張れ、若いの」


「そういえばお兄ちゃんの名前聞いてなかった!」


「そうだったね。話す機会が無くてそのままだったね」


 我ながらよく一晩名前も知らない相手を泊めてくれていたものだ。


「俺はケイって言うんだ。改めてよろしく」


「うん、よろしくケイお兄ちゃん」


「さあ、食べたら鍛錬の続きじゃ。頑張れ、若いの」


「もう、若いのじゃなくてケイお兄ちゃんだよ!」


「ほほ、悪かったの、若いの」


「むぅ」


 剣もまともに振れないうちは名前で呼ぶつもりは無いと言う事かな?まあいいか。


「それじゃ、続きいきますか」


「頑張ってね。私は洗い物があるから!」


 パタパタと元気なシェリーちゃん。和むわ。




「そこまで!」


 流石に鎧を着けてはちょっと疲れるな。それでも筋肉痛になるかと言われればそんなことは無いと言える範囲だけど。


「大分様になってきたの。それでも油断は禁物じゃ。付け焼刃に過ぎんと言う事を覚えて行動するんじゃよ」


「はい」


「だが、頑張った褒美くらいはやらんとな」


 そう言って村長が取り出したのはダガーであった。


「余り物で悪いが良い鉄を使っておる。取っとけ」


「ありがとうございます」


「何、半金貨も出してくれたらの。これくらいはのう」


 銀貨5枚分は結構価値が高いらしい。


「お主は世間知らずなところが有ると見た。パン一つ程度小銅貨数枚で買えるからの。そこの所しっかり覚えておくとええ。分かったかの?ケイ」


「分かりました。ありがとうございます」


 ようやく認めてくれたらしい。


「それでは昼食にしようかの。そろそろ出来上がっている頃じゃろう」


 俺は村長の後に着いて家に向かった。




「出来たわよー」


 ローズは今までフードを縫っていてくれたようだ。


「雨避けと日差し避けも兼ねているんでしょうけど、雨避けを優先させてもらったわ」


「いえ、十分です。ありがとうございます」


「こっちも揃ったよ」


 ルークも持ってきてくれたらしい。


「干し肉、干し野菜、果物、それと岩塩に火打石と小さめの鍋だ。肩から下げておけばいいだろう。それと水筒だね。あいにく革製だけど、そこは諦めてくれ」


「問題ありません」


 銀貨5枚分の価値とは一体・・・・・・?


「色々とお世話になりました。それでは、機会があればまた」


 俺は村を後にしようとする。


「あ、ちょっと待った。ルッツさんが野菜を卸しに行くらしいから相乗りさせてもらうといいよ」


「分かりました。ありがとうございます。ルークさん」


「ルッツさんは入り口で待っているから、すぐ行ったほうがいいわ」


「重ねてありがとうございます。皆さん。シェリーちゃん、また遊びに来るからね」


「うん!」


 こうして俺は無事、研究所近くの村から離れることが出来たのだった。

 村人との別れ。貨幣価値は小銅貨数枚でフランスパンが買える程度です。

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