4話
村人とのほのぼのとした触れあい。
湯浴みをした俺は、何故か夕食を振舞われていた。
「若いんだからしっかり食べないとだめよ」
「そうそう。酒はいける口かな?」
この二人はシェリーちゃんの親のローズとルーク。
「何、残り半銀貨分じゃよ。明日の朝飯も出してやるから、恐縮するだけ無駄じゃよ」
「はぁ」
「ところで、今までどうやって冒険してきたかシェリーにでも聞かせてやってくれないかの?こういう村じゃから娯楽が少なくての」
「あ、お兄ちゃんの話聞きたい!」
俺は冒険歴まだ浅いんだけどどうしたもんかな。まあいいか。ホムンクルスが云々は伏せて、今日遭ったことを話すか。
「俺はふと気が付いたら大きな水槽に入れられていててね――」
そこから、黒ローブたちとの追いかけっこ、狼達との戦い、後で教えられたが犬頭がコボルトでチビ禿げがゴブリンと言うらしい。ゼリーもどきがスライムだ。それも単独で出てきたので粉砕しながら進んでいるとこの村に出たと言うところで話を区切った。あ、あんまりな残酷描写は伏せてね。
「お兄さんすごい!ゴブリンとコボルトはともかく、狼は群れで行動するからこっちも大人が何名かで行動しないと大変なんですよ!」
「あの時は咄嗟だったからね。出来ればもうちょっとちゃんとした装備にしてからだったら相手にしてもいいかな」
「それとスライムはよく無事でしたね。アレは飲み込んだ獲物を溶かすから剣とかでも細切れにしないといけないのに」
「棍棒だったから一撃入れたら粉砕できたよ。腕力があればそっちの方がいいんじゃないかな?」
「そっかー」
こんな具合である。シェリーちゃんは村長の膝の上でニコニコしているし、まあ問題ないだろう。
「いやいや、スライムは生半可な打撃は効かんのじゃよ。お主相当な使い手なんじゃな」
「いやぁ、武器をなくしてしまったので即興で作った棍棒を使ってますし、もっとちゃんとしたのを買いなおしたいです」
「あるぞ」
「えっ」
「儂が昔使っていたのがある。手慰みに整備していたが、使ってくれるものが出てくるとはのう。相談次第で売ってやっても良いぞい」
「それは嬉しいんですが、いいんですか?」
「いいんじゃよ。どうせ儂にはもう振れん。息子達には別にあるしの」
「そうですか。それではお言葉に甘えて・・・・・・」
「ならば付いて来い。納屋にしまっておるから出すのが面倒での」
「分かりました」
そうしてホイホイと付いていくのであった。
「ここじゃ」
日没前なのでカンテラに火を付け納屋に入った。ものが雑多に置かれている。
「奥にあるからの。適当にどけてくれい」
「分かりました」
俺は左右に荷物をどけて、指示の通り進む。
「これじゃよ」
そこにあったのはバックラーと呼ばれる円形の盾に馬上で使うような長剣。所謂ロングソードだ。それとハーフプレートの鎧一式があった。
「儂も昔は騎士爵での、現役なうちは故郷を守りたいと、長男に家督を譲ってからは自警団をしておったんじゃ。だが年寄る波には勝てなくてのう。鎧は着られるか分からんが、盾と剣は役に立つじゃろう。どうじゃ?」
「いいですね。ただ、剣は使ったことが無いので刃筋が立てられるか心配です」
「お主はスライムを粉砕したんじゃろ?だったら6割の力くらいで斬れば良い。しっかり握って気持ちゆっくりな。ああ、一対一にならん限り突きは使ってはならんぞ。抜くのに時間がかかるからの」
「分かりました。練習してみます。ただ、それまでは棍棒ですかね」
「確かに、無理は禁物じゃ。慣れない得物を使うよりは慣れている方を使って、剣はいざという時に取っておけば良い。肉厚だから早々曲がらんしの」
言われみれば、ブロードソードとも取れなくも無い。これじゃバスタードソードじゃないか?
「これってバスタードソードですか?」
「そうじゃ。儂以外なかなか使い手が居なくてのう」
そりゃ普通は癖の無い片手剣とかを使うよ。
「まあ、それはいいんじゃ。家にクロースアーマーがあるから、鎧も引っ張り出してきなさい」
「分かりました」
俺は何回かに分けて武具一式を村長の家に運び込んだ。
えっちらおっちらと武具を運んで村長の家で装着を手伝ってもらった。
「やっぱり鎧が若干大きいのう」
「ええ、隙間がちょっと」
「ちょっと待っておれ」
村長は鎧の背に手を当てると黙り込んだ。すると、それに合わせて鎧が縮む。
「これは?」
「まだ効果が残ってて良かったの。体格補正じゃ。もっとも、小さくすると鎧が厚く、大きくすると鎧が薄くなるからあまり極端には出来んがの」
「でも、これでぴったりです」
「待て待て、クロースアーマーが残っておる。あれだけでも相当打撃に強くなるから着て行きなさい」
「分かりました」
「あ、お兄ちゃんおじいちゃんの鎧着てる!」
「シェリーか。この若いのに役立ててもらおうと思ってのう」
「いいなー」
「シェリーには魔法を教えておるじゃろう?重いのを着るのは男に任せておけばいいんじゃよ」
「うー」
「なら、試しに盾だけでも持ってみるか?」
「うん!」
村長はシェリーにバックラーを渡した。
「重いー!」
「じゃろう?鎧はもっと重いんじゃ。じゃからローズにでも言って銀糸でローブでも作ってもらうのがええ」
「でも、銀なんて高いよう」
「そこはほれ、ここの兄ちゃん次第じゃ」
うぐ、そこを突かれると痛い。
「なら村長、保存食と火打石、後マントを用意してくれませんか?フード付きの奴を。そうしたら半金貨1枚でどうです?」
「おお、ええのかの?」
「武具一式ももらえるんです。得物を失った身としてはとてもありがたい」
「よかったの、シェリー。ローブにソフトレザーのコルセットも着けて貰えるぞい」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「あ、そうだ」
「なんじゃい?」
「俺読み書きが出来なくて、絵本とか使っていないのありますか?おまけで付けくれれば嬉しいです」
「それくらいならお安い御用じゃ」
「お兄ちゃん、私のお下がりあげる。大事にしてね」
「ああ、ありがとう、シェリーちゃん」
正直予想外の出費だったけど、それなりの収穫はあったな。贅沢を言えば明日別の村への馬車があれば、絵本を読みながら移動が出来るんだが。
その夜、試しに外でバスタードソードを振るってみた。片手でも案外なんとかなるもんだな。
装備一式入手。それでも主人公は武器の素人なので、しばらくは棍棒です。