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2話

 続いてしまいました。

「居たぞ!」


「アイスボルト!」


「ライトニングボルト!」


「ああうぜえ!」


 こんにちは。なんかホムンクルスとやらになったものです。今、この研究所っぽい建物の中で黒ローブたちと追いかけっこしてます。


 そもそもこちらは白衣の下に良く分からない革の上下にシャツを着けた状態ですが、あちらは何か唱えながら動きにくそうなローブで全力疾走です。1抜け、2抜け、別の道で別のが合流し、の繰り返しで今の数になりました。


 敬語はそろそろいいか。


 俺は持ちうる記憶力を全て総動員してその2先生に聞いたルートを辿っていた。鞄が燃やされたりすると面倒なため腹に抱え、その辺で拾った黒ローブを盾にしている。


 時折お代わりで出てくる直剣を持った兵士っぽいのや、黒ローブを人間シールドでぶん殴り沈黙させている。盾はなんか痙攣してるけど生きているだろう。多分。


 また、氷の矢や雷の矢など、さっきからボルトボルトうるさいのも人間シールドでガードだ。なんか「なんて卑怯な!」「人形め!」とか聞こえてくるけど死にそうになったらポイして新しいのに換えている俺の慈悲に感謝して欲しい。


「エアスラッシュ!」


「うおちゃ!?」


 なんか新しいのが来た。咄嗟に黒ローブを捨て、兵士その・・・・・・6?シールドでガードしたが、金属製の鎧から聞こえたくない音が聞こえた。こりゃ次を用意しないと駄目だな。


 お、それっぽい扉が見えてきた。


「自由への躍進!」


 扉を飛び蹴りで蝶番ごと吹き飛ばし、外に出る。おお、太陽だ。日の光だ。


 だけどマジでここはどこだ?秘密の研究所だったのか、木々が生い茂り、森の中だ。日の光も木漏れ日でしか確認出来ない。


「待て!」


 考え事をしている場合じゃなかった。


「あ~ばよ~!」


 俺は行きがけの駄賃と言わんばかりに持っていた人間シールドを追っ手共にぶん投げ、木々の間を縫いながら駆け出す。今何時なのか分からないが、影とコケの生え方から方角を適当に当たりを付け一定の方向に突っ走る。方角自体はどこでも良かった。ぐるぐる回らないようにしさえすれば。


 次第に声が遠くなり、聞こえなくなったのを確認して一息付く。


「あーなんだってんだよ一体。俺がなんかしたのかよ」


 木を背にずるずる座り込む。身体は疲れていないんだが、精神的に疲れた。人間を何人も振り回して追いかけっこしてたのに疲れを感じないなんておかしな話だ。


「そういや昨日酒がメインでつまみとかほとんど食ってなかったっけ。今の内食っとこう」


 かばんからカッチカチのチーズを取り出す。こんなの外国じゃないと売られてないんじゃないか?


「頂きます」


 ともかく齧ってみる。


 ガリッと言う音と共に簡単に削れるチーズ。なんか咬筋力も大幅に上がっている。とても硬そうな感触のチーズがこのありさまだ。


 おっと、ここがどこだか分からない以上食料は節約しなければ。今の謎パゥワーと耐久力だったら熊相手でもいけそうだが、痛いものは痛い。火は熱かったし電撃は人間シールドごしに痺れが来た。静電気くらいのビリっとした奴だったけど抗生物質も無いのに獣に噛まれるとか嫌な予感しかしない。


 俺はチーズをもっちもっちと出来るだけ多く噛み、唾液を促し飲み込む。しかし濃厚だな。このチーズ。日本のチーズが淡白すぎるだけなんだが。酒が欲しいぜ。


 チーズを半分ほど食い終わり、残りはかばんに戻して出発する。濃厚すぎてもういっぱいいっぱいだよ。まず目指すは村か町だ。幸い金らしきものは着替えを漁っていたときに見つけた。100円玉くらいの奴と、穴が空いているのと、500円玉くらいの奴だ。銅貨が何十枚か、銀貨が十何枚か、金貨は穴あきが2枚だ。大雑把にしか数えていない。


 流石に本まで持ち出す余裕無かったからなー。と言うか何書いてあるのか分からなかった。あいつ等日本語しゃべってたのにね。


 後その2先生に魔法が使えるかの確認はしたけど魔法自体は習っていない。ライターも無いよママン。


 最悪その辺の獣を生か、川があれば魚がいけるんだけどなーと考えながら歩く。この際はらわた抜いて食えるだけマシだろう。


 しかし本当にここどこだ?さらっとした季候だし、木漏れ日自体はちょっと強めなのか気温は高いと思うけど全然汗をかかない。と言うか全力疾走してたのに全然暑くない。


 アレか?悪の秘密結社に改造手術でも受けたか?どこぞのフルメタルなアルケミストは人間もホムンクルスに改造してたし。


 そう考えると鏡で見た俺の顔にも違和感が・・・・・・なんかそこはかとなく外人っぽいと言うか。いきなりアルビノになってたから気にならなかったけど、黒髪にしても違和感が拭えなかったんだよな。


 まあ、今更確認のしようが無いか。今は黒髪のままだが、あの謎の施設から逃亡するならこのままだとちょっと拙いかな。


 俺は目を閉じて「金髪になれ~金髪碧眼になれ~」と念じた。


 念じ終わったところで髪の毛を一本抜いて確認してみる。うん、金髪だ。目は確認出来ない。


 次は武器の調達かな。その辺に手ごろな太さの枝とか落ちてると良かったんだが・・・・・・。


 そんな都合良くは行かなかった。現実は無常である。


 待てよ?色々な筋力が上がっているならジャンプ力も上がっているか?


 逃げるときは夢中で気が付かなかったが、俺には誰一人追いつける奴は居なかった。待ち伏せしている奴なら居たんだが。


 試してみる価値はあるか。


「ほっと」


 軽く垂直跳びをしてみる。軽くなのに1メートルくらい飛び上がってる。怖い!


 恐怖で着地に失敗した。アシクビヲクジキマシター!


 何をやっているんだ俺・・・・・・落ち込みながら痛みが引くのを待つ。


 ジンジンしてたところがすぐに感じるほどに痛みが引く。気持ち悪っ。自分の身体ながら引くわー。


 でもまあ、あの足で進行速度が遅くなるのはよろしくない。今は目を瞑って日本に帰ったら医者に調べてもらおう。


 思い直して目星を付けた枝まで思い切りジャンプをする。今の俺はカンガルー顔負けだ。


 枝だけを見て掴まる。上手く掴まったのでよじ登り、根元を支点に折る。


 生木だから折れにくいが、捻り切る。さて、次は降りるんだが・・・・・・。


「これは怖い」


 思わず口にするほどの高さだった。大丈夫いけるいける気持ちの問題だって諦めんなよ!


「とう」


 恐怖心を押し殺し、飛び降りる。あの魔法の雨は熱かったりしたけど火傷するほどじゃなかったし、人一人の首根っこを掴みながらの全力疾走で息すら切らせないのが現実味が無くてそれほどでもなかった。でもこの高さはリアルでやばい。


 悲鳴を上げそうだが押し殺し、とにかく着地の瞬間に備える。一瞬だった。


 覚悟していたら思ったような衝撃は無かった。本当に軽く飛び上がったくらいの衝撃だ。本当にバッタの怪人にでも改造されたのだろうか?


 そんなことはどうでもいいか。今は重要じゃない。


 折った丸太のような太さの枝から突き出ている小枝を取り除き、着ていた白衣を握り手のところに巻いて簡易の棍棒にする。そもそも棍棒自体が簡易なんだが。なんかいきなりファンタジーっぽい魔法とか見たが、初期装備が棍棒か・・・・・・。


 ま、まああれだ。ろくに剣とか持ったことが無い奴が咄嗟に刃筋とか揃えられそうもないし?あの有名なヘラクレスさんのメインウェポンも弓と棍棒だったらしいし?そう考えたらアリじゃないかな。


 そんな感じで自分を慰めつつ進むことにした。いざいかん。名も知らぬ村落よ。

 本当に大雑把にしか考えていないです。どこまで続くかは神のみが知る。なんちゃって。

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