新学期編1-2
朝日の仮想戦争をする目的とは一体⁉︎
仮想世界…その可能性は無限にある。仮想戦争の舞台をファンタジー世界にすることも。
だが仮想戦争の舞台が学校の形をしているのには意味があるのだろうか。まあ、俺には分からない。
クラスのやつらは、もう帰ったようだ。「死神…」などとぶつぶつつぶやきながら。
俺はブラックコーヒーを飲みながら、今日倒した相手の情報を確認していた。
この仮想戦争は、一つのゲームのようなものである。だから”アップデート”がある。
アップデートすれば新武器や新アイテムなどが追加されたり、新機能なども追加されることもある。
最近のアップデートで、専用アプリで相手を写すとステータスが見れる機能が追加されたのだ。
俺はDクラス代表を倒す前に、写しておいたデータを出した。
Dクラス代表、持川大輝、レベル12、武器、シャイニングランス、レア度5、<スキル>光明、一定期間アイテムの使用を無効に出来る。
「レベル12か…まあまあ高いな。だからクラス代表討伐ボーナスでレア度5がドロップしたのか」
独り言をつぶやき、ブラックコーヒーを飲みほす。
空き缶を机に置き、自分のステータス画面を表示する。
今日ドロップしたアイテムの整理をした。先ほどの仮想戦争で使用した転送系アイテムは高レア度のものだ。
ある条件でしかドロップしない。だがその条件がクリアできたら必ずドロップする。だから俺のアイテムストレージには156個存在する。
まだ俺以外は知らないはずだ。その条件が相手のワンキルなんて。ワンキルとはHPが満タンの相手を一撃で倒すことだ。
普通、ワンキルなど出来るはずがない。HPはだいたいさっきのDクラス代表だと3000だろう。攻撃力と防御力の差、そして部位がダメージに関係してくる。
Eクラス代表の静野だと軽く12回は斬らなければいけないだろう。
だからワンキルは俺以外に出来る奴がいないから、さっきのアイテムがまだ発見されていないのだ。
俺には目的がある。それは一年に一回開催される、GVFで優勝し、討伐数トップになることだ。
GVFは全学年、全クラス対抗で行われるイベントだ。いわば大規模の仮想戦争だ。
去年の俺は、まだ力が無かったけど今は違う。もう負けない。
そのGVFで優勝し、討伐数トップになると1000万ゲームマネーが貰えるのだ。MVPとも言う。
その1000万ゲームマネーがどうしても必要なのだ。…妹の治療費のために。
俺の妹は病気をわずらっていて、今はとても危険な状態らしい。大きな病院で手術をするために。
俺が一人でやるのはボーナスを独り占めするためだ。アイテムをドロップさせ、戦力を上げる。
討伐数トップは一人しか選ばれない、だから俺だけが強くならなければいけないのだ。
まあ、理由などどうでもいいことだ。大事なのは結果だけだから。
一通りのことを考えて、ステータス画面を閉じようとすると…
「な、なんなの、このステータスは…」
驚きに満ちた声が耳に伝わってきた。
俺はすぐさま声がした方を見る。するとそこにいたのは高松陽子だった。
俺は言い訳を考えたがあまりいいものが思いつかない。どうしたものかと、頭をかいていると、
「もしかして、あなたが死神?」
どうやらこの馬鹿げたステータスを見て気づいてしまったらしい。
だが今はこの問いには答えることは出来ない。バレたらクラスとのこととかがあり、ソロ狩りが出来にくい状況になる。
それは困るのですぐに思いついた言い訳をを言ってみた。
「いや、俺は死神じゃない。さっきのステータス画面は俺のじゃなくてDクラス代表のだ」
この言い訳でどうだと思いながら高松の顔をうかがった。
どいやら納得したらしく、自分のスマホでステータスを見ていた。
「なるほど、チラッとしか見えなかったけど、クラス代表となればここまで強くても問題無いわね」
よかったー、と内心で思いながら、自分のスマホを閉じた。
高松は自分のステータス画面を見せてきた。それはまるで何かを要求する勢いで、
「はい、あなたのステータスも見してくれるかしら?」
手を差し出される。ここに置けと言う意味なのだろうか…
「い…いや、無理だ」
差し出された手を振り払う。ステータスを見られたら、弱みを握られることになってしまうから。
俺は席を立って、急いで教室からでようとした。そしたら高松は
「あなたにタイマン仮想戦争を申し込みます」
スマホを突き出して、模擬仮想戦争のサーチで俺のデータが表示された。
タイマン仮想戦争とは、一対一の仮想戦争のことで、これも最近のアップデートで追加された新機能だ。
半径15m以内にいるプレイヤーに、最初は強制的に仮想戦争をすることが出来る。実に俺に分が悪い機能だ。
「し…しまった…」
表示された俺のデータをおして、強制的に仮想世界に転送された。
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タイマン仮想戦争は、仮想戦争と同じで陣地がある。だから作戦を立てられるのだが、一人だけだとステルスを使ってもマップに表示されてしまう。
だが、この作戦でも一対一なら勝てるだろう。まず始めにスマホのマイクに向かって
「リマスターオン…」
武器を出現させた。次にアイテムストレージから<ワープロード>を使い相手の陣地に転送した。
敵陣地について、俺はすぐさまアイテムストレージから<ステルスロック>を使い透明になった。
教室から出ようとしている高松を見つけた、俺は武器を構える。
後ろから斬りつけようと武器を振った。倒せると思った…だが。
高松が何かを気づいたように、スピードが格段に早くなる。アクセスソードの<スキル>を使ったのだろう。
俺の攻撃は避けられたかと思ったが、少しかすったようだった。
まずい…このままでは…
「危なかった。さっきマップを確認していてよかったわ。まさか敵陣地に転送できるアイテムかスキルがあるなんてね」
高松は体を反転しとこちらに武器を向ける。…本当にミスった。
「な…なんで?なんで私のHPが0に…」
高松が戦死者フィールドに転送されて、タイマン仮想戦争が終わった。
これで言い訳が出来なくなってしまった…。どうしたものか。
頭をかきながら、スマホのアプリでログアウトボタンを押した。
朝日のステータスはもう最強なので楽しみにしていてください。