表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

5 やぶをつついて、ヘビを出す

 普段は使われていない部屋に思えた。物置になっているのだろう。ダイニングテーブルといすがたくさん並べられて、家具屋のようだ。

 私とゲイルは、白木のテーブルに向かい合って着席する。カートはテーブルの横に置いた。私は彼にクッキーを勧めたが、――大勢で作ったので大量にある、彼は遠慮した。

「ルーファスが焼きもちをやくから」

 ゲイルは、やんわりと笑う。

「君はおととい城に戻ってきて、昨日浴場で騒ぎを起こしたと耳にしたけれど、合っている?」

 私は、うっと声を詰まらせた後で、うなずいた。

「そして今日はメイドになっているのか。まさにびっくり箱だね」

 ルーファスが落ちつかないのも分かるよ、と彼は口にする。

「いきなり帰ってきて、いきなり浴場に現れて、今日もいきなり部屋に来た」

「ごめんなさい」

 私は謝った。ルーファスを驚かせるためにやっているわけではないが、確かに私の行動は唐突すぎる。

「ルーファスの友人として、頼みがあるのだけど」

 ゲイルはテーブルの上で、両手の指を組んだ。

「もう少しゆっくりさせてほしいんだ」

 ちょっと困った風に笑う。

「あいつは君に振り回されて、自分で動く時間が持てない。結婚に関しても、すでに式の準備は進んでいる。すぐにやめられるものではない」

 君には不愉快なことだけど、と私に同情した。が、そのリヴァイラは私の部屋で、ソファーに寝そべって本を読んでいる。

「ごめんなさい。そろそろ」

 私は立ち上がった。リヴァイラとルーファスが、私の部屋で顔を合わせるなんて怖すぎる。

「あぁ。話を聞いてくれて、ありがとう」

「私こそ、ありがとうございます」

 私は今まで、ルーファスの都合や気持ちを考えていなかった。おのれの恋心を押し出すのみで。

「いいよ。俺にも打算があるから」

 思いがけないせりふに、私は首をかしげた。私とルーファスがうまくいけば、ゲイルは得をするらしい。つまり、

「リヴァイラが好きなのですか?」

 ゲイルは、ははと笑う。

「君にとっては憎い恋敵だけど、俺にとってはなかなか忘れられない女で」

 私は興味をそそられて、いすに腰を戻した。忘れられないということは、

「恋人同士だったのですか?」

「短い間だったけどね。――ん? 俺は何を話しているんだ?」

 彼は頭をかいて、困っている。

「リヴァイラのどこが好きなのですか? 外見とか財産ですか?」

 否定されることを期待して、質問してみた。

「意外に、根堀り葉掘り聞くね」

 ゲイルは身を引いた。うーんと迷ってから、まぁ、いいかとつぶやく。

「二年前に付き合っていたときは、彼女の見目麗しさがよかったんだ」

 たまたま同じ本を読んでいたことがきっかけになって、ゲイルはリヴァイラと交際を始めた。

 若く美しい彼女とともにいることは、ゲイルにとって鼻が高いことだった。夜会でほかの男たちがうらやむのも、快感だった。

 ちなみにルーファスは、社交界にあまり顔を出さないので、ふたりの付き合いを知らない。

 ルーファスと会う機会がないままに、ゲイルはリヴァイラに別れを告げられた。彼女は、ゲイルが自分の外身しか見ていないと察していたのだろう。

「俺たちは、あっさりと恋人関係を解消した。けれど」

 いつの間にか、目で追っている。そして、実は気の強い女だと気づいた。従順で扱いやすい女の仮面をかぶっているだけだと。

「彼女を愛している。彼女が隠している本当の心を知りたい」

 ゲイルは切なげに、ため息を吐いた。

 恋する男の色気に、私はわくわくが止まらない。恋バナほど、おもしろいものはない。

「ルーファスは彼女を、王子妃にふさわしい女性としか認めていない」

 だから結婚してほしくない。しかしリヴァイラは、求婚を受け入れている。彼女ならば拒否するはずなのに。

「いや、さすがに王子相手に断ることはできないか」

 ゲイルは苦笑した。

「彼女の父親が、とても乗り気らしいし。でもリヴァイラは」

 言葉を切って、あごに手を当てる。

「そういった権力には屈しない」

 私は冷や汗をかいた。どうしよう。彼はリヴァイラを、かなり理解している。

「ルーファスのところへ行きますね」

 私は笑みを作って、さっと立ち上がった。逃げる私の腕を、ゲイルがつかむ。

「君の存在は、リヴァイラを侮辱している。君のことはすでに社交界でうわさになっている」

 しゃべりながら、思考を押し進める。

「リヴァイラの耳に入らないわけがない。そして、彼女の矜持は高い」

 これは、まずい展開だ。

「君かルーファスに対して、何か行動を起こすはずだ。なのに彼女は、君たちを放置している」

 名探偵ゲイルの推理に、私は口をはさめない。

「なぜだ? そもそもリヴァイラは結婚したくない。それどころか」

 彼の両目が、驚きに見開かれる。

「君とリヴァイラは、裏で通じているな!」

 あちゃー、ばれちゃった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ