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第二章 BLUE-COFFIN  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
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第十六節「死の灰のタナトス」

‘風の国’の‘大臣メテウス’から、半ば強引に人形造りを命ぜられた‘メガラの傀儡師ファイスト’。



それは黄泉の眠りに就く‘風の国’の‘王女ROSELUNA’を生き映すというものだった。



‘傀儡の禁呪’を躊躇うファイストは、人の良心を信じるかに己に言い聞かせた。



そして、己の技術、技のみで国王に献上する人形を造りを始めたのだった。



胸を過る得体の知れぬ不安を抱えながら・・・。





挿絵(By みてみん)





   第十六節 「死の灰のタナトス」





あの‘柘榴の呪い’に‘華の国’の‘王子RUTO’が倒れてから数日後の事。



‘魔女エリス’に計略を授かった‘魔の帳の三騎士’のひとり‘死の灰のタナトス’。



彼は‘エリュシオン’の北、‘オロプス川’の畔で‘魔導師ロッドバル’の到着を待っていた。



朧に霞む夜の月明かりが、河のせせらぎに時折、白く輝きを散らしていた。





三騎士の長であり、神をも滅する‘死の灰の剣’を操る彼は、闇夜の同門にも恐れられる存在であった。



それは、非常なまでに冴えわたる剣技も然ることながら、その表情を常に黒い仮面で覆う寡黙さが誰にもそう思わせるのかもしれない。





ロッドバルと合流した彼は何も語る事なく、馬を‘宿場町メガラ’のある‘コリントス’方面へと走らせた。



随伴するロッドバルと僅かな手勢は、計略の詳細を殆んど知らされていなかった。



しかし、彼らの誰一人、それをタナトスに確かめる事など出来なかった。



そういうものをタナトス自身が受け付けぬ事を皆承知していたからだ。





大丘陵地帯に孤を描いて走る旧街道筋を走り、‘アイガレオ’を抜けた彼らは、明け方前には宿場町メガラへと辿り着いていた。



ここで馬の足を止めたタナトスが初めて口を開く。




「ロッドバル、オマエたちは、私と別れてコリントス砦へと向かえ、オネイロスが待っている・・・」




それだけであった。



しかし、そんな物言いのタナトスをロッドバルは嫌いではなかった。



それに‘コリントス砦’といえば、古より‘風の国’西方の守りを任された王家一族‘リツァル伯爵家’の居城である。



そこに帳の三騎士のひとり、あのエリスにも勝るとも劣らない謀略家である‘オネイロス’がいるのであれば何も起こらない筈がない。



ロッドバルはタナトスに僅かに無言の笑みを見せると、引き連れる手勢を纏め上げ、再び馬を走らせたのだった。





この後、リツァル伯爵は伯爵夫人諸共、彼らの手によって忙殺され、人知れず成り替わられるのは前述した通りである。



あの舞踏会の夜、メテウス大臣が擦れ違った黒馬車の伯爵夫人、手綱を引く従者がそうである。





ひとり残ったタナトスは、エリスの計略通り夜明けを、その時を待った。



メガラの人形師ファイストの元に‘傀儡の娘オディエール’が現れてから丁度十日目の朝。



彼女の胸に埋め込まれた‘柘榴の木’。



その‘柘榴の心臓’に仕掛けられた‘死の灰’を芽吹かせる為に・・・。

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