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第二章 BLUE-COFFIN  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
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第十四節「メガラ、夜明け前」

街の美術商から、メテウスが宝石箱を預かって数日が過ぎていた。





挿絵(By みてみん)





   第十四節 「夜明け前、メガラへ」





まだ夜明け前。風の国の地方領コリントスへと伸びる暗い街道を、馬に乗り旅する者の姿があった。深緑の外套に身を包み、頭巾で顔を覆い、その者は西へと向かっていた。



まだ誰もいない、夜霧が残る一本道。樹上で鳴く黒鳥の声だけが高く響いている。



その人目を避けるかのように旅する馬上の男。それは‘風の国’の大臣メテウスであった。



彼は国務大臣として、定期的に国内の視察を行っている。普段であれば、事務官僚や警護官、従者を引き連れての行脚である。まして、めったに足を伸ばせない地方領への遠出にもかかわらず、この日は一人きり、馬を進めていた。



行き先を従者にだけ伝え、身分を隠しての視察。それは、メガラの傀儡師ファイストに会う事を誰にも悟られず、秘密裏に行う為だった。



鞍の後ろに僅かな荷物だけを括り付け、夕暮れ時、人知れず城を出たメテウス。途中、馬を休めながらも、明け方の到着を目指した。



そして今、ファイストの住む宿場町メガラは目と鼻の先にあった。あと一刻も歩を進めれば街道を抜ける所に来ている。



静まり返る道中、メテウスは時折に何かブツブツとひとり言を呟いていた。




・・・・・ これは、国王様、その王家の為になされること ・・・・・




それはあの舞踏会の夜、リツァル伯爵婦人に成り済ました魔の帳の三騎士オネイロスの言葉であった。ただそれも、オネイロスが魔の棘に仕込んだ魔力が呟かせた訳ではなかった。



確かに、メテウスがファイストに会い、人形を作らせるように仕向けられた罠ではあったが、棘の魔力はキッカケと環境を幾つか作ったに過ぎず、彼自身がそれを望むように悪しき歯車は回された。



もし、メテウスが魔の力に囚われての行動であれば、その魔力に賢者テオゴニアが気付かぬ筈もない。



言えば、メテウスが抱えるトラウマや心の隙


幼少の頃に父親を失った経験


国王を想う優しさ


心の奥底に隠した淡い恋心


それらを綿密に計算して謀られた計略であり、彼の性格と深層心理を上手く利用した魔女エリスを褒めるしかないないだろう。



メテウスは街道から宿場町へと入った。そして、予め内々に調べさせていた人形師の家を見つけ出すと、辺りを気にしながら馬を下り、人知れず静かにそのドアを叩くのだった。



うっすらと明るくなり始めた夜空に未だ陽は昇らず。


蒼く朝靄に包まれる宿場町メガラは、まだ夜明け前であった・・・。

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