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第二章 BLUE-COFFIN  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
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第十一節「憂鬱」

「メテウス大臣・・・、いささか、お疲れのように見えるが・・・」


「賢者殿・・・、それもそのはず、あのお二人の姿を見ると・・・」


「確かに、しかし、あまり思い詰められては貴殿まで・・・」


「賢者殿、国王王妃両陛下は、義理とはいえ私の父母にもあたる方・・・」


「それは私も承知しているが・・・」


「特に国王陛下は、最近、発熱されて床に伏せる事もしばしば、どうして息子たる私がのうのうとしていられましょう・・・」


「大臣殿、お気持ちは分かるが・・・」


「いいや、元々この国の人間でもない貴方に何が分かるというのですか・・・」


「・・・・・」


「すまない、賢者殿・・・、あなたの言う通り、私も少し疲れているようだ・・・」


「いいえ、あまりお気に召すな・・・」




賢者テオゴニア・マーリンの気持ちも沈んでいた。


ガリアの戦いで‘闇のエレボス’と‘夜のニュクス’を不完全ながらもグレイプニル・リングに閉じ込める事には成功した。


その後、ルロス谷の牢獄に指輪を安置し、番人である巨人族の戦士ヘカトンケイレスとも警戒を怠ったつもりはなかった。


ただ、あれから流れる長い年月と負う重い使命に、いつの間にか生まれていた己の隙に気付くことが出来なかった。


闇夜の娘である‘魔女エリス’の企みに気付くのが遅れ、戦士の魂の拠り所である‘華の国’をみすみす彼女に奪われてしまった。


そして、確かに‘王女ROSELUNA’は転生の秘術によって自ら黄泉の眠りに就く事を選んだ。


しかし、それも今となってはエリスの後手を踏まされたにすぎないと感じていた。




異世界‘VANILLA-FIELDS’にいる盟友クレス・ワイナ。聖なる槍を探して旅に出た女神の戦士バズウ・カハ。憂鬱にも、彼らは上手くやっているのだろうかと想いを馳せた・・・。





挿絵(By みてみん)





   第十一節 「憂鬱」





あの日以来、悪夢にうなされ続けていたメテウス。


彼は、夜毎に夢の中へ出てくる人形師の事を考えていた。


最近耳にする‘メガラの傀儡師’の噂。それが夢に反映されたのだろうとも・・・。



「人形か・・・」



どうにかして国王の心を癒せないかと苦心を重ねていたメテウス。


彼にとって、いつの間にかそれは一つの選択肢となっていた。


ただ、その人形師には黒い噂も絶えなかった・・・。




或る日の事。


彼は身なりを平服に変えると、春の陽射しに賑わう街に出た。


若き有能な大臣と国中の誰もが知っている彼ではあった。


それでも、その若さ故に平服を纏った彼を誰も大臣とは気付けなかった。


幾分上等な洋服を着ている以外、普通に街の若者たちに溶け込んでいた。


時々、こうしてメテウスは街の様子や人々の暮らしぶりを確認して回っていた。


今回も噂に聞く人形師の情報を仕入れるため街に出たのだ。




街の店先で、路地のモノ売りに、食堂や広場で、大道芸人にまで、それとなく一通りの話を聞いて回った。


皆、一様に人形師を賛美する言葉を連ねた。


しかし、実際に人形を見たのかと尋ねると答えは否だった。


確かに、それほどの人形であれば庶民が手を出せるような代物ではないと思った。




その後、メテウスは石畳の交差する路地を物思いに更けながら彷徨った。


あてもなく歩き、やがて彼は狭い裏道へと迷い出た。


明るい昼下がりに人影はなく、見慣れぬ町並みは色濃く影を抱えていた。




自分の居場所を見失っていたメテウスは、確認するように辺りを見渡した。


目に写る建物の様子から、ここが比較的裕福な者たちの住宅街だと分かった。


おそらく王城に向けて伸びる東側の通りを幾つか裏に入っているのだろうと。




そこで、あまり王城を留守にするのも不味いと思い、引き返そうとした時だった。


そんな彼の目に、店の軒先にぶら下がる古びた木彫りの吊り看板が映った。


メテウスは思った。



「そうか、美術商か・・・」



それは貴族や裕福な者を相手に、高級な花瓶や絵画、宝飾類を扱っている美術商の店の看板だった。



「彼らなら、人形を見たことがあるかもしれない・・・」



そう考えに至ったメテウスは、その看板が下がる店の前へと足を進め向かった。


そして、今度こそ確かな情報を、メガラの人形師の話を聞けないものかと心の中で念じた。


この時、どちらかと言えば、彼は自らが望む良い答えを想像していた。


そうであれば、人形を作って国王を慰めることが出来るかもしれない。


ただ、もしここで聞く話が悪いものであれば、また途方に暮れるのだとも思った。


ここ数日、そんな問答を胸中で繰り返していた彼は、その憂鬱を抱えたまま店の扉を開くのだった・・・。

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