金のくつ
シンデレラは絶望しました。
二番目の義姉が、〔金の靴〕を履けてしまったからです。
二番目の義姉はシンデレラより背が低いです。
なので、太っていてもシンデレラの〔金の靴〕に、なんとか足を入れることができました。
でも、無理やり履いているので、小さな〔金の靴〕から肉が盛り上がって、今にもはじけそうです。
しかし、誰もそのことに気づきません。
二番目の義姉は、足の甲のあたりをスカートで隠していたのです。
(あの靴は、魔法使いのおばあさんが私にくれたものなのに!!)
シンデレラは、舞踏会の日に、走って逃げたことを後悔しました。
正直に打ち明けていればよかったと。
魔法がとけてボロボロの姿になれば、王子さまはガッカリするに違いありません。王子さまをだました罪で、〔牢屋〕に入れられる可能性もあります。
だから、一晩だけ夢を見られれば、それでいいと思っていました。まさか、王子さまが、国中の女性の中から自分を探そうとするとは思ってもみなかったのです。
でも、王子さまはシンデレラを探しに来ました。
そして、今、王子さまは二番目の義姉に向かって微笑んでいます。
(これは、王子様を信じることができなかった罰なの?)
シンデレラは、胸が締め付けられるような思いでした。
今からでも、本当のことを告げようと前に出ました。
しかし、イジワルな継母と一番上の義姉に止められてしまいました。
「上手くいきそうなのに、邪魔するんじゃないよ!」
「あの日、あんたは一人で留守番してたから、舞踏会には行ってないでしょ?」
舞踏会の日の行動の全てが裏目に出て、シンデレラは泣きそうになりました。
あの日は、留守番していたと思いこませることができてホッとしましたが、今になってみれば、どうすれば正解だったのかわからなくなりました。
こうしている間にも、王子さまは、二番目の義姉にそっと手を差し出しています。
二番目の義姉がその手を取って、二人が結ばれるのも時間の問題と思われました。
(いったい、どうしたらいいの!?)
シンデレラは、悩み、そして決断しました。
自分の部屋にある‟もう片方の〔金の靴〕”を取りに行くことにしたのです。
そんなことをしても、間に合わないでしょう。
それでも、〔金の靴〕を取りに行くことにしました。
(……私は、王子さまを信じる!
きっと彼は、お義姉さまと私を間違えたりしないわ!!)
たとえ間違えても、必ず途中で人違いに気づいてくれると、王子さまを信じることにしたのです。
シンデレラが急いで〔金の靴〕を取ってくると、王子さまと二番目の義姉は、まだ、さっきと同じ場所にいました。
なぜか二番目の義姉は、青い顔をしています。
「早く、王子さまの手を取りなさい!」
「あんた、何もったいぶってんの!?」
イジワルな継母と一番上の義姉は、二番目の義姉をせかしました。
しかし、二番目の義姉は、動こうとしません。
「……無理。――――――無理なの」
そして、泣きそうになりながら訴えました。
「この靴、重くて、びくともしない!!
まるで地面に靴が埋め込まれているみたい!
足が、足が全然、上がらないのよ!!!!」
顔を真っ赤にして叫ぶその姿は、ウソを言っているようには見えません。
王子さまは「また、人違いか……」と、ため息をつきました。
「今までにも、何人か履けた女性はいたんだ。
だが、だれも〔金の靴〕を履いて歩けなかった」
実は、金はとても重いのです(女性の靴は200グラム~400グラム程度が一般的で、シンデレラの〔金の靴〕は、片足5キログラムありました)。
いくらシンデレラの足が小さくても、何歳か年下の子にはシンデレラと同じ足の大きさの子がいます。ですので、何人かの子が履くことができました。
しかし、〔金の靴〕が重すぎて、誰も歩くことができなかったのです。
「私に履かせてください!!」
シンデレラは、もう片方の〔金の靴〕を持って叫びました。
もう片方の〔金の靴〕を持っているなら、持ち主に違いありません。王子さまは喜んで、シンデレラに〔金の靴〕を履くようにうながしました。
シンデレラが〔金の靴〕に足を入れると、これ以上ないぐらいピッタリでした。そして、全く重さを感じられないぐらい軽やかに歩きました。
「やっと、再会できた!」
王子さまは大喜びです。
「‟どうやったら効率よくそうじが出来るか‟を語る君とのおしゃべりが、とても楽しかったんだ」
王子さまは、シンデレラの内面を好きになっていたのでした。
シンデレラは、王子さまを信じて良かったと思いました。
イジワルな継母と二人の義姉は、〔金の靴〕を履いて歩くシンデレラを見て恐怖しました。
〔金の靴〕の重さを体験した二番目の義姉は、息が止まりそうなぐらい驚いています。
「……ちょっと待って。あれホントに重いのよ」
「あの子、両足、履いてるわよ……」
「ねぇ、私たち復讐されるんじゃないかしら?」
三人は震えあがりました。
本来なら、何人もの使用人が管理する〔屋敷のそうじ〕やら〔雑用〕やらを全て押し付けた結果、シンデレラは異常な筋肉の持ち主になっていたのです。
筋肉で、三人を嬲り殺すこともできるでしょう。
王子さまと結婚すれば、権力で復讐することもできます。
もはや、誰が王子さまと結婚しようがするまいが、シンデレラが恐怖の対象であることに間違いありません。
イジワルな三人はこの日を境に、心を入れ替えました。
シンデレラと王子さまは、お城で結婚式を挙げ、末永く幸せに暮らしました。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。




