表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/81

レオナ王国へ

夕暮れ。甲板に出ると、空の端が蜜色に溶けていた。

ジーンがマストにもたれ、レオナは海図を膝に、羽根ペンでさらさらと線を引く。

「父がよく言っていました。“どう勝つか”より“どう終わらせるか”だと。……あなたの話を聞いて、やっと腑に落ちた気がします。」

「勝利は手段だ。終わらせ方が目的だ。」

「はい。」レオナは照れたように微笑み、ノートを閉じた。


夜、ラウンジにはギターの音。アンジェロッテはほどなく眠り、セリーヌが軽い毛布を肩に掛ける。ロゼリアとフェリカは、同じページの楽譜を覗き込み、息を合わせて小さくハミングした。



---


翌朝――かもめの声。風が塩を運び、遠くに褐色の海崖と白い灯台が見えた。王国の沿岸だ。

「帰ってきた。」カーヴェルが短く言う。

フェリーを木船に変えて港へと滑り込むと、埠頭には早くも人だかりができている。和平の報せと、王と宰相の若返りの噂――“女神の子孫の王家”と“女神の使徒カーヴェル”の話は、街角のパン屋から居酒屋、井戸端から学校まで、そこかしこで囁かれていた。




「見て、旗。」ロゼリアが指さす。

色とりどりの布に、子どもたちの拙い字が踊る。〈ありがとう〉〈しあわせ〉〈もう戦わないで〉。

フェリカが目尻を指で拭った。

「……こういう時だけは、言葉が追いつかないわ。」


タラップが降りる。

ちいさな花冠を抱えた少女が、もじもじとカーヴェルの前に立った。

「これ……女神さまの、つかいの人に。」

「受け取ろう。」

カーヴェルは膝をつき、花冠を受け、少女の頭にそっと載せてやる。

「君が笑って暮らせるように――それが“終わらせる”意味だ。」


背後で、レオナが深く一礼する。

「王都で、たくさん学びます。終わらせ方を。」

「ようこそ、王国へ。」セリーヌが微笑み、アリエルとジーンが両脇から親指を立てた。


喧噪の向こう、王都の尖塔が朝日に光る。

三万の軍勢を嘲って怒らせた毒舌も、重力で編む無重力の泡も、スケルトンの幻も――すべてはここに連なる一本の線。

“勝つ”ためでなく、“終わらせる”ために。


カーヴェルは短く息を吸い、次にやるべきことを胸の内で並べ替えた。

帝国の内情、魔族領事館との協調、そして人竜族の友――。

「さあ、働くぞ。」

彼が言うと、ロゼリアとフェリカが顔を見合わせ、同時に笑った。

「了解、旦那様。」

港の鐘が、祝祭のように高く澄んで鳴り渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ