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裏切り者

翌朝――ミーシャは目を覚ますと、枕が涙で濡れていた。

彼女は胸を押さえながら、昨夜の夢を思い出し、再び涙があふれる。


「女神様……本当に……私に祝福をくださった……」


その感動は言葉では言い尽くせないものだった。彼女の心には、女神の言葉が深く刻まれ、団長としての責務以上に、王国と仲間を守り抜くという強い決意が芽生えていた。


そして――その決意はやがて、王国全体を揺るがす陰謀の渦中で、彼女を動かす大きな原動力となっていくのだった。



女神からの啓示を受けたミーシャは、胸を高鳴らせながらも大きな迷いに囚われていた。

「裏切り者がいる」と聞かされたものの、どこから手を付ければよいのか全く見当がつかない。自分は団長として部下を導く立場だが、陰謀や策謀に対しては経験が浅い。

「私にできるの……? 本当に私に解決できるの……?」

彼女は剣を握るよりも難しい課題を前にして、不安に押し潰されそうになっていた。



その頃、カーヴェルとカリスタは念話でやり取りしていた。


カーヴェル:「昨日の件はミーシャに伝えてくれたか?」


カリスタ:「はい、仰せのままに伝えました。」


カーヴェル:「ありがとう。」


カリスタ:「ですが……具体的な内容を言わずに良かったのでしょうか?」


カーヴェル:「彼女には、自分で考え、自分で動く知恵を身につけて欲しかっただけだ。」


カリスタ:「なるほど……深い思慮、恐れ入ります。」



カリスタは心底感心していた。彼女自身なら細かく指示を与えてしまうだろう。だがカーヴェルは、ミーシャを育てようとしていた。



---


裏切り者の影


翌朝、カーヴェルはミーシャに声をかける。


「おはよう、よく眠れたか?」

「はい」


だが、ミーシャの表情は暗かった。

カーヴェルは眉をひそめる。

「元気がなさそうだな。何かあったのか?」


ミーシャは思い切って打ち明けた。

「信じてもらえるかは分かりませんが……女神様が現れ、王国に裏切り者がいると啓示されました。でも、私には誰なのか全く見当がつかなくて……」


カーヴェルは静かに言葉を紡いだ。

「ジェシカはかつて、1500人の人柱にされかけた。この意味、わかるか?」


その一言でミーシャは悟る。あの事件の裏にいたのは――バジル将軍。砦の1500人の兵を見捨ててジェシカを犠牲の祭壇した奴、民を虐げ、戦いの最中に兵士を見捨て、何度も疑惑を持たれながらも証拠がなく無罪放免された男。


「……そうか。あの男……やはり……! さすがです、カーヴェル様」


ミーシャの眼に決意の炎が宿る。




朝の食堂での宣言


全員が食堂に集まり、朝食を囲む。

カーヴェルは立ち上がり、皆に告げた。


「今日、アリエルに魔石の在処を案内してもらう。おそらくそこには魔族がいるだろう。つまり――今日が本番だ。心してかかってほしい。」


場に緊張が走る。


つかさ:勇者としての使命感に燃え、拳を握る。


アルトル:盾を強く握り、仲間を守る覚悟を固める。


アルファーム:槍の穂先を磨きながら冷静にうなずく。


ホフラン:魔力を巡らせ、いつでも大規模魔法を撃てるよう集中する。


ロゼリアとフェリカ:「旦那様に傷をつけさせない」と強く心に誓う。


ミーシャ:女神の言葉を胸に刻み、団長としての責任を噛みしめる。


マリア、サーシャ、アン、クロエ、ナーリア:剣を抱きしめながら、不安よりも誇りを選び、心を燃やす。


カリスタ:心の中で「マルス様」と呼びながら、彼の采配を見極めようと決意する。


アリエル:狼の瞳に宿る忠誠の輝きで「ご主人様を守る」と心に誓った。



そして最後にカーヴェル自身が、全員を見渡し、静かに笑った。

「安心しろ。俺がいる限り、誰一人欠けさせはしない。」


その言葉に全員の胸が熱くなり、決戦に挑む心はひとつに結ばれたのだった。

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