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ミーシャ団長

青空が広がる訓練場には、女騎士たちの視線が一点に集まっていた。第15師団副団長ジェシカと団長ミーシャ、二人の剣士が並ぶ姿は、普段の厳しい指導の顔とはまた違う威厳と緊張感を漂わせていた。


「強くなったな、ジェシカ」

団長のミーシャは、冷静ながらもどこか興奮した瞳で副団長を見つめる。


「はい」

ジェシカは頷き、顔を少し赤らめる。団長の視線が、ただの技量の評価以上のものを含んでいることに気づくからだ。


「好きな男でもできたか?」

不意に投げかけられた言葉に、ジェシカは一瞬息を飲む。


「え〜え……」

声が途切れ、顔が熱を帯びた。


「なんだ、図星か」

ミーシャは微笑み、軽く首を傾げる。


「団長も、お人が悪い」

ジェシカは顔を覆いたくなるほど赤くなった。


「私も気になる男がいてな」

団長は不敵な笑みを浮かべる。


「どなたですか?」

ジェシカは緊張しつつも問いかける。


「お前も知っているだろ、カーヴェル・プリズマンだ」


その瞬間、ジェシカの胸に複雑な感情が渦巻く。まさか団長も、カーヴェル様に興味を持っているとは思わなかったのだ。


「カーヴェル様のことが気になるのですか?」

思わず問い返すジェシカに、団長は微笑みながら頷く。


「なるほど、好きな男はその男か」


ジェシカの頬はさらに熱を帯びる。心の中で「やばい、ばれてしまった」と焦る。


「……すまない、揶揄い過ぎた」

団長は謝り、表情を落ち着けた。


「私が気になったのは、あの三万の砦での戦いだ。一兵も損なわず、相手も殺さずに勝つ……そんなことを成し遂げられる者がいるとは思わなかった。誰でも気になるはずだ」


確かにその通りだ。カーヴェル様があの戦場にいなかったら、多くの仲間は命を落としていただろう。ジェシカは心の奥で、あの方の存在に改めて感謝する。


「まあ、いい。とにかく、我々は自分の力でできることをやるまでだ。剣を持て」


ミーシャはジェシカに木剣を渡すと、二人は訓練場の中央へと向かった。周囲を取り囲む女騎士たちは、息を飲んで二人の動きを見守る。


審判の合図と共に、二人は勢いよく飛び出した。瞬時に交わされる攻撃と防御の応酬。

1秒間に一瞬だが3回から4回の斬撃が飛び交い、フェイントやヒットアンドウェイなど、互いの技術の粋を尽くした戦いだった。ミーシャは攻撃しジェシカは受けてカウンターを狙う


「何これ……速すぎる……!」

女騎士たちは呆然とし、言葉を失う。


戦闘が始まって5分、二人の動きは一切衰えず、まさに互角。見る者の心を震わせる迫力だった。


遠目から観戦する国王も、思わず微笑む。

「これは……武道会を開く価値があるな」


激しい斬撃の応酬の中、ついにミーシャの木剣が折れ、試合は終了となった。


「強くなったな、ジェシカ。本当に」

ミーシャは息を整えながら、健闘を讃える。


「あなたもです、団長。剣が折れていなければ、まだ結果は分かりませんでした」

ジェシカは微笑みを返す。互いの瞳に、確かな敬意と信頼が交わされた瞬間だった。


周囲の女騎士たちから拍手と歓声が沸き上がる中、ジェシカは心の奥でつぶやく。

「これが……私の力。カーヴェル様のためにも、仲間のためにも、そして私自身のためにも……」


その日、訓練場には戦士としての誇りと、秘めた情熱が静かに満ちていた。



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