3-15 クライマックスの夏祭り
夏休みも後半に差し掛かったある日。春晴カナタは、カーテンな締め切られた寒い部屋で目を覚ました。
「あー。よく寝た」
『あのですね……よくネたって、イマナンジだとオモってるんですか!? 15ジですよ15ジ! イッシュウマワってフケンコウです!』
「そんなに怒らないでよニール。エイタたちと今夏最後のオールナイトFPSしてただけだから」
『オコるヨウソしかありませんが?!』
「……でさ、これ何?」
ベッドから起き上がったカナタは、勉強机の上にチェンジガンと共に置かれていた「映画のフィルムらしきもの」を手に取る。
『それは"バトルフィルム"です。ニシュウカンマエのシャークデーモンとのタタカいをブンセキし、カナタサマのアラたなセンリョクにしました』
「へぇ~あの時の……か」
カナタの脳裏に浮かんだのは、シャークが死に際に放った「助けて」の声。死を恐れた、今にも泣き出しそうな顔。
彼はきっと、魔王に仕向けられ、望まぬ形でデーモン怪人になったのだ。
その事を考えてしまうと、手にかけてしまった申し訳無さで、ヒーローとしての自分の価値を疑ってしまうのがカナタだった。
でも、失われた命は戻らない。だからカナタは、デーモン化された『中の人』を救うためにも戦うことを決意したのだ。
『セッカクです。チェンジガンにせっとして、ヘンシンしてみてください』
「そんなギミックあったっけ……」
目線をフィルムからチェンジガンに戻した。すると、撃鉄部分が大きく伸び、フィルムがセットできる形状に、いつの間にやらなっていた。
「あったかなこんなパーツ」
『イマシンゾウしました』
「なんだそうだったのか。考えて損した」
首飾りを身につけたカナタは、チェンジガンにフィルムをセットし、オーブリンク。すると音声が変わり『オーブリンク・アーマード』と鳴った。
いつも通りスライドを三回引き、前に向かってトリガーを引いて変身した。
「あまり変わって……た」
ほとんどの部分はいつものコスモなのだが、唯一右腕に、ホホジロザメを象ったパーツが着いていた。
「すげぇ! あ、そうだ。カーレースデーモンと、ジェイク保安官の時のはある?」
『ありますけど、ワタせるのはアシタイコウですね』
「そ。まーでも、これでパワーアップができたわけだし、ありがとね」
『どういたしまして。さあ、キョウのカツドウをハジめましょう』
その時、部屋のドアがノックされ、カナタが応える間もなく開かれた。
「よーカナタ。起きたか」
タイチだった。
「おはよー父さん」
「で、お前はなんで変身してるわけよ」
「ニール……例のAIがパワーアップアイテムくれてさ、お試しに。ね」
「なるほどな。さあ、変身は解いた解いた。そろそろ行くぞ」
「行くってどこに?」
『ナツマツりですよ! ちゃんとワタシのすけじゅーるキノウにハイってますからね!』
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夏祭りの会場は駅前の商店街。
商店街とはいえ、並んでいるのは個人営業の飲食店ばかりで、アーチ状の屋根もない。
そんなところに、屋台がひしめき合っている。
大勢の市民が通りをごった返す中、一家で夏祭りにやってきたカナタは、「花より団子」ならぬ「団子より花」状態だった。
「マキナー笑ってー」
屋台裏にある駐車場の一角で、カナタは浴衣姿のマキナをカメラに収めていた。
マキナは、街灯の下でニッ、と笑った。それと同時にシャッターは切られる。
「どう? 可愛く撮れてる?」
「撮れてる撮れてる。ビジュほんと神がかってるわ……ロック画面にしよ」
その時だ。カナタの背中に温かい何かが触れた。振り返ると、レジ袋に入った焼きそばを押し当てているタイチがいた。
「ほれ。買ってきたから食うぞ」
タイチの後ろには、マキナと同じように浴衣を着たセルアたちがいた。ちなみに、春晴家の三人は普通の服である。
一同は駐車場の端っこに座り込んで、焼きそばをかきこむ。
「やっぱみんな似合うね、浴衣。母さん、ナイス采配」
「うふふ。レンタル浴衣のチラシに感謝ね」
「まー俺も、日本文化にはなるべく触れてほしいしな。こいつらには」
そんな会話をしながら焼きそばを完食すると、今度はカナタとマキナも連れて、一同は夏祭りを練り歩く。
道中、セルアはメダカすくいの屋台の前で足を止めた。
「やっていかないか? メダカすくい」
「あり。どうせなら勝負しようよ。多くすくえた方が勝ち!」
「水槽はでっかいのがあるから、遠慮無くやっちまえー」
「なら、私も参加させてもらいますね」
――――子供たちとお祭りで、何度もやっていますもの……!
こうして、春晴家メダカすくいバトルに参戦するメンバーが出揃った。
さあ、ポイを受け取って……レディーファイッ!
そして五分後。結果は・・・
ラーシャ:20匹
セルア:17匹
カナタ:3匹
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「まさか、言い出しっぺの俺がドベになっちゃうとはね~」
「くしゃみしちゃったから、仕方ないわよ」
マキナが慰めるように言った。
そして、そう言われた次の瞬間には、カナタは唐揚げ棒を手にしていた。
「はへ(だね)」
当てもなくフラフラと、七人で歩く中、今度はマキナが射的屋台の前で足を止めた。
「狙撃ゲーム……いいわね。やってこよっと」
「おーう頑張れよー」
ゴルダンは、プラコップに注がれたビール(500円くらい)を飲みながら送り出した。
そしてカナタは、射的の屋台の中にあるものを発見したようだ。
「あのフィギュア……俺がこの前中古屋で買い損ねたやつ! この人たちが買ってたのかぁ。マキナ、三段目の右から二番目の箱狙って」
「えっ、私花火欲しいんだけど」
「ならそれでヨシ!」
――――推しがそれがいいならね!
「ま、いいわよ。五発あるし……ねっ!」
マキナはしっかり景品の花火の的を狙って、トリガーを引いた。
結果は、あと数ミリのところで外れた。
続けて二発目。今度は当たった。だが倒れなかった。
三発目。真ん中に命中し、倒すことができた。
「はい、お嬢ちゃん花火ね」
「ありがとうございます。じゃ、残りはカナタが欲しいぶんに……」
四発目のトリガーを引く。当たった。的のど真ん中に当たったはずだ。なのに、倒れなかった。
「何故!?」
「やっぱり、重い景品は倒れにくいのかな……」
ついに最後の五発目。一か八かで同じ場所を狙ってみる。すると・・・
「はい。お嬢ちゃんフィギュアね」
GET。
「ありがとうございます。えーと、なになに? 『MAKINA ARLOW』私じゃない」
「あ、バレた? これ限定品なんだよ。暗いところで目が光る」
「私そんなこと出来ないんだけど!?」




