3-16 闇堕ちのバッジ
カーレースデーモンがこの現実世界に現れる直前のことだ。彼は今回の任務についての説明を、クロノス・マドゥから受けていた。
「今回のこの任務には二人であたってもらう」
『とイうト、もウひトりハどコに?』
「ここだ」
そう言ってクロノスが手を叩くと、部屋の外から、眠らされたジェイクが馬のザンバーと共に連れてこられた。
「『ジェイク。世界0075出身。町の保安官の男。弱虫だが正義感がある』とのことだ」
クロノスはスピカの報告書を読み上げた。
「待て、続きがある。『尚、今回新たに"コアスイッチ"』なるもの『を導入した。彼に埋め込んだデーモンコアの起動条件は』……『カーレースデーモンが、戦闘不能状態に陥ること』」
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「……保安官?」
『アーアー。し事増やしやがって』
構えたコスモの目の前に立っていたのは、まるでケンタウロスが西部劇のガンマンになったような、同時に禍々しいオーラを纏った怪人だった。
「さしずめ『ウエスタンデーモン』ってとこ?」
どう攻略すればよいのだろう。そればかりを考えて、コスモの前方は疎かになっていた。
彼の頬を、ムチが打つ。勢いで吹き飛ばされかけるも上手く着地し、チェンジガンのトリガーを引く。
しかし、それすらも彼はムチで跳ね返してしまう。
発泡しながら岩陰に身を隠し、そこからウエスタンデーモンとの撃ち合いを続ける。
だが、結果が変わることはなかった。撃てど撃てど、跳ね返されるだけ。
――――これ隠れてても埒明かないな……ええい、こうなったら!
コスモは高くジャンプし、ウエスタンデーモンの目の前の地面に、拳を叩きつけて着地する。
で、そのまま殴り合いというわけだ。
――――相手の腕は、まあ当たり前だけど二本! 右手にムチ、左手に銃。手放さなければまともな防御はできないはず!
殴り、殴り、からの回転蹴りで武器二つを、コスモは弾きとばした。
ウエスタンデーモンが丸腰になったのを確認したところで、コスモは三ステップ後ろに下がってオーブリンク。からのトリガーを三回引けば、毎度お馴染みの"大技枠"『チョウヒッサツ/ショット・フィニッシュ・ショット』を繰り出した。
だが、知っての通りこの技では、相手を倒しきることはできない。だから・・・
「三連チャンでどうだ!!」
オーブリンク、トリガー三回、チョウヒッサツ。オーブリンク、トリガー三回、チョウヒッサツ。
繰り返した末、ウエスタンデーモンを極限まで弱らせることに成功した。戦闘不能ではあるが死んではいない『ひんし』の状態だ。
そこにコスモは歩み寄って、ウエスタンデーモンの頬を平手打ちした。
――――塩梅はこれくらいかな。
「さ、戻ってきてよ。保安官」
カナタの見立ては正しかった。平手打ちと同時に、デーモンコアがウエスタンデーモンの体から抜け出した。
すかさずチェンジガンで撃ち抜く。デーモンコアを、完全に破壊することに成功した。
「保安官。ジェイク保安官、大丈夫ですか?」
変身を解いたカナタが、ジェイクの体を揺すって声をかける。すると、彼は「うーん……」と声を出してゆっくりと目を開けた。
「保安官! 無事ですか?」
「あ、あぁ。何があったの?」
「……カーレースデーモンと同じ、怪人になっちゃってました。けどもう大丈夫です! 怪人になるコアは、壊しときましたから」
「そうか……ありがとう、助けてくれて」
その言葉を聞いたカナタは、まるで全身の力が抜けたかのように、その場に大の字で寝転んだ。
――――よかった。今度は救えた。
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現実世界に戻ってきてからの展開は、まさに風のようだった。
まず初めに、カーレースデーモンの素体であるレーシングカーとデーモンコアの破片が、JNIAに回収された。
ジェイクとディーンはというと、元の世界に戻る手段が確立されるまで、JNIAに身柄を保護されることになった。もちろん、馬のザンバーもだ。
次に、カーレースデーモンの大暴れを目撃した一般人たち。彼らはみなJNIAに任意同行され、記憶消去を施された。ネットにアップロードされた情報も、すべて削除された。
そして、カナタはというと……
「オーバードライブ:ユーラシアラン、明日二週目してこよ。あ、そういえば、臆病者のバッジがリバイバル上映されてたっけ」




