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2-20 リスタート文化祭②

 なんか逆異世界転移モノのはずが、だんだん青春物語になっていってる気がするのは私だけでしょうか?

「あ〜、終わったなぁ」


 そう言って、カナタは大きく伸びをする。

 文化祭が再び始まってから、早1時間と30分。カナタたち6班のメンバーはシフトを終え、エプロンを脱いで文化祭をエンジョイしようと歩き出していた。


「どこ行くどこ行く?」


 エイタが自分以外の5人に聞く。


「お化け屋敷とか良くない? 3年5組の」


 アカネが返答した。


「それもいいけど、俺はちょっとお腹空いたし、何か食べたいな」


「右に同じく…」


「確かに、先にメシにするってのもアリだな… 柴谷さん、えーっと…ワッツドゥーユーウオントトゥードゥ?」


「Um... I want to eat something」


「イート…ってことはメシか! というと… なんだけっけ?」


「What do you want to eat? だね、この場合」


「ありがとカナタ」


「What menu do you have?」


「ああそっか、Fried chicken, French fries, yakitori, takoyaki…は保健所の指導入ったぽいしな…Gyoza, churros, shaved ice, that's it.」


「Okay. Um... I want to eat shaved ice.」


「かき氷だってさ」


「よーし、じゃあそこ行くか!」


 先程までと同様に、エイタを先頭として6班の面々は歩き始めた。




「うぅ…頭痛い…」


 カナタ、エイタ、ビスケの3人は揃って頭をさすっていた。


「もう。早食い対決なんてするから」


「…ゆっくり食べて良かった……」


 カナタは深呼吸をして息を整え、痛みを我慢しつつ口を開いた。


「それで、次何する?」


「今度こそお化け屋敷に!」


 間髪入れずにアカネが答えた。


「じゃあそこにしよっか」


 今度はカナタを先頭に、6人は歩き始めた。

 その道中、班長は口を開いた。


「…お化け屋敷かぁ…今日はよく冷えるなぁ…」




「人多」


 ビスケがそう口にしたように、3年5組のお化け屋敷がある大会議室の前には長蛇の列ができていた。


「まさか、ここまでとは思わなかったなぁ」


「こ…こんなに多いなら…」


 班長の震えた声を耳にした5人は、彼のいるほうへ振り向いた。


「いっそのこと他のとこに行きましょう。それに…怖いし…」


「班長…お前…」


 エイタが班長のほうへ歩み寄った。その様子を目にした班長は怯えている様子だ。


(どうしよっ…怒られ…)


「ビビってんのか」


「はっ、ひゃい!」


「そうか…それなら安心しろ。俺らがついてる」


「へ?」


 信じられない、とでも言いたげな目の上に涙を浮かべている彼はゆっくりと顔を上げた。


「だから大丈夫だって言ってんの。内心俺も怖いけど、この6人だったら、何とかなりそうじゃね?」


 エイタは屈託のない笑顔を浮かべた。そして、班長こと(あずま)マサルの目には、その笑顔が何よりもかっこよく映った。


「さ、決心ついたなら並びましょうや」




 カナタ達が列に並んでから約3分、大会議室から二人の女子生徒が飛び出してきた。一人はひどく息を切らし、その場に両手と両膝をついた。


「大丈夫…? って、チハヤじゃん」


「あ゛ぁ゛もう。怖すぎだって…」


「ほらフユちゃん、しっかり立ちなって…」


 チハヤを介抱するもう一人の女子生徒に、カナタは覚えがあった。


「あの、もしかして、あなたが忽那カエデさんですか? チハヤから話をいろいろと聞いてます」


「え? ああそうだ。あたしが七王子の女番長、忽那カエデ様ご本人よ!」


「おぉ~これまたすごい肩書をお持ちで…」


「ちなみに、今日で番長になってちょうど3か月」


 チハヤがカエデのことについて補足したその直後。

 その時だった、耳をつんざくほどの悲鳴がお化け屋敷の中から聞こえたのは。その声はどんどん大きくなってきており、こちらに近づいて来ている感じがする。


 そして次の瞬間にはその声の主が出口から勢いよく飛び出してきた。その正体はカナタたちのクラスの熱血漢、寿イオリだった。

 イオリは出てきてすぐさまバランスを崩し、カエデの上にあわやその巨体がのしかかろうとしたその時、


「うりゃあっ!」


 カエデはとても女子中学生とは思えない力強さの回転蹴りを、寿イオリの巨体にくらわせ、1m弱吹き飛ばした。


「いっ痛つっ」


「おいイオ、情けねぇぞ」


 カエデは振り上げた足を下ろしてそう言った。


「だってぇ! 怖いもんは怖いんだよぉ!」


「イオリの弱い姿、はじめてみたかも。っていうか二人はどんな関係なの?」


 カナタは普段はストイックで力強い彼の姿にギャップを感じ、少々ニヤけながら聞いた。


「こいつとは小学校からの付き合いで、今じゃ最強のヤンキーコンビとして多摩地域の不良界隈で有名になってんだ。だよねぇ、お化け如きにビビってる寿イオリくぅーん?」


「くっ...面目ねぇ...」


 イオリは立ち上がり、これからお化け屋敷に挑もうとしている。カナタらの班を指さして口を開く。


「お前ら気をつけろよ。先輩たちは"ガチ"だからな」


「ひっ、やっぱ...やめようかな...」


「大丈夫大丈夫。イオが極端にビビりなだけだから」


「そうそう。イオリが極端にビビりなだけだって」(やばい…そうは言ったもののめっちゃ不安になってきた~…)




 それから約5分後、とうとうカナタ達のグループの番になった。


「どうぞお進みください」 


 受付の先輩の声に案内されて、一行は暗闇に包まれたお化け屋敷に足を踏み入れた。


「暗っ、寒っ」


 全員が入り切った直後に入口の扉は閉められ、真の意味での暗闇が姿を現した。


「ヒッ…ここここ怖い!!!」


「お、落ち着けよ班長…こっちまで怖くなってきただろ…?」


 彼らは恐る恐る前へ進んでゆく。すると、目の前に井戸が見えた。


「カ、カナタこれって…」


「う、うん…あの映画の…」


 井戸の中から、長い髪の女が姿を現した。とても人が演じているとは思えない程、まるで本物の怪異のような恐怖を全身で感じ取った彼らは叫ばざるを得なかった。


「「「「「で、出たー!!!!!!!!!!!!」」」」」


 その瞬間、全員は一目散に走りだした。


「誰かー! VSしてー!!! もうこの際バケモンぶつけてー!!!」


 最初の幽霊で恐怖して、ほかの怖いものたちには目もくれずに逃げる最中、班長ことマサルは恐怖のあまり失神してしまった。


「あ! 班長が倒れた!」


「よし! 担ぐぞ! 俺が頭持つからカナタは足持って! 女子二人は先行ってて!」


「え? 俺!?」 「わ、分かった! 行くよ、柴谷さん!」


 そうして、彼らはお化け屋敷から退散したのだった。




 6人はお化け屋敷から出て、近くのベンチに座って休んでいた。


「はい、水」


「あ、ありがとうございます…」


 マサルは、ビスケに金券を渡して買ってきてもらったペットボトルの水を流し込んだ。


「今になって考えてみると…なんで俺らはあっこまでビビってたんだろ」


「確かに。黒髪ロングの女の幽霊なんてベタもベッタベタなとこだしね」


 そのとき、チハヤの明るい声が遠くから近づいてきた。


「あ、いたいた!」


「どしたのチハヤ」


 カナタに用件を聞かれた途端に、チハヤは深々と頭を下げた。


「私たちのクラス展示、見て行ってください! 鬼怒川が客連れて来いってうるさくて…」


「あぁ、なんだそんなことか。みんな~今度は1組のとこ行くよ」


 こうして今度は、1組のクラス展示や他のクラスの探求発表が行われている、もう一つの大会議室に移動を開始した。



 **********



「結構しっかりしてたな。SDGsの研究」


「わかる。そこ取り上げるんだーって感じあったよな」


「うん。おかげで今までぼんやりとしか知らなかった事が、しっかり理解できた気がする」


「I was very surprised to see that the explanations were written in English as well.」


「え? なんて?」


「英語でも書いてあったのがびっくりしたんだってさ」


「あ~確かに。こういうのって日本語以外で書くことないもんな」




 その後も、彼らは文化祭を楽しみ続けた。射的、ボーリング、カジノといったゲームをしたり、唐揚げやチュロスを食べたりと、それらは彼らにとって最高の思い出となるものだろう。


 そんな楽しい時間を過ごす最中、唐突に館内放送が始まった。


『これから、演劇部は劇の準備を行います。部員は至急、特設ステージの下手側に集まってください』


「…と、いうことで、行ってきます!」


 カナタ自身も初めて耳にした、という面持ちで舞台裏まで走って行った。



 **********



「春晴、到着しました!」


 そこにはすでにほとんどの演劇部員がいた。


「よし、これで全員だね…」


 メンバーの顔を一人ずつ見渡しながら言ったカナメの目には、大粒の涙が浮かんでいた。


「部長…? どうしたんですか?」


 そう声をかけたのは、ブルーを演じたメガネの男子生徒。


「いや…その…あの時滅茶苦茶に破壊された劇がこうしてもう一回できるのが、すごいうれしくて…それで…」


「そうでしたか」


 カナメは涙を腕で拭いて、話をつづけた。


「それで、準備を始める前に一つか二つ言っておきたいことがあるんだけど…カナタ君レッドできる?」


「へっ…? 俺が…レッド役を…?」


「そう。オーディションでレッドを希望したのは君と彼だけだし、この中で誰よりもゴニンジャーにハマってくれてた。LINEで感想送ってくれてたよね」


「いや…まあそうですけど…スバルがやったことを俺が? いやいや、ダメですって。あいつに悪いし、俺がやったところで劣化版に…」


 その時だ、まとまって話し合っていた彼らの後ろから声が聞こえたのは。


「お困りのようだね」


 その声は本来今は入院していて聞こえるはずのない()の声だった。それに驚いた一同は振り向いた。


「スバル…! 何でここに?」


「七西中の文化祭をナナアリでやってるって母から聞いて、こっそり見に来たんだ。それで演劇部に顔を出そうと思ったら、この話をしててね」


「そっか…あ、でも寝てないで大丈夫?」


「大丈夫だと思うよ。お医者様も今週末で退院って言ってくれてるし。それで、本題だけど、カナタは本当にレッドの役をやるんだね?」


「いや…正直言って悩んでるんだ。セリフも正直言って完璧じゃないし…失敗するのがめっちゃ怖いんだ…」


「そうなんだね。でも大丈夫。僕がこれから開演までの1時間でみっちりレクチャーするから」


「ホント!?」


「ああ」


「じゃあ、よろしくお願いします!」


 カナタが頭を下げ、少しいい雰囲気になったところで、カナメが口を開いた。


「あ、あと一ついい? 例のハゲ教頭のくだり、隣の中学の人から苦情が来たのでカットします」



 こうして、開演に向けての準備が始まった。スピーカーやマイクといった音響機器をセッティングし、二階の観客席からスポットライトを、舞台前方ではフットライトの調整・セッティングをそれぞれ完了した。問題のカナタだが、スバルの演技指導の甲斐あって、元々スバルがやっていた演技と見劣りしないものになった。


 時はすでに開演2分前。役者陣+部長と副部長、そしてスバルで円陣を組むことになったようだ。


「それじゃあ本番、絶対成功させましょう! 演劇部~ファイッ」


「「「「「「「「「オー!!!」」」」」」」」」


 


 この劇では、まず最初に怪人が出てきて、そのすぐ後に変身前のヒーローが出てくるので、カナタたちの登場は少し遅れるのだ。

 だが遅れる、と言ってもほんの30秒ほど。彼らの出番はすぐにやってきた。

 客席では、両親、友人、そして異世界からやってきた同居人が、多くの観客に混ざって舞台を見守っている。


「よし…行ってきます」

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