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2-12 ゴニンコスモ

「ゴニンコスモだと…ふざけた名前にふざけた見た目のガキだ…血祭りにあげてやる…」


 ジョンソンは跳躍して大剣を振りかざしたが、ゴニンコスモはそれを両手をクロスさせて受け止めた。


(なんだ? なぜ…斬れない…!)


 強い力に少々押されたものの、それをものともせずにクロスを解いて跳ね返したコスモは、着地したジョンソンの左頬に強烈なパンチを繰り出した。


「すごい…これがゴニンジャーの力!」


 パンチやキックをテンポよく、そして正確に繰り出し、襲い掛かる大剣や体術を避け、時に受け止めながら有利に戦いを進めていった。


「なんなんだ…この…力は!!!」


「これは、20年間脈々と受け継がれてきた、正義の力だ! これで決める!」


 コスモは再び胸の宝石に銃をかざす『オーブリンク』を行い、スライドを5回引いた。


『チョウ・ヒッサツ』


 銃口にエネルギーがチャージされ始め、股を大きく開いて、銃を構える。


「僕たちも加勢するぞ! 全員『固定魔法』準備!」


「りょーかい!」

「おうよ!」

「はい!」


「「「「Desine movere!/動きよ止まれ!」」」」


 4人はタイミングをそろえて同時に魔法を発動、ジョンソンはまるで鎖に繋がれたかのように動きが固定された。


「ナイスみんな!」


 エネルギーのチャージが満タンに達した時、彼はトリガーを引いた。


『ショット・フィニッシュ・ショーット!!!』


 正義のエネルギーに満たされた銃弾は発射され、ジョンソンは自らに向かってくる”それ”をいつものように、大剣で斬って無力化しようと構えたが、受け止めるのは5秒も持たずに被弾、爆発してしまった。


「やった…カナタがやったぞ!」


「すごいよ!幹部を一瞬で倒しちゃうなんて!」


セルアとマキナからの賞賛の声を背に、コスモは変身を解除して生身のカナタに戻った。


「みんな、大丈夫?」


「ああ。おかげさまで」


 ゴルダンは「ヘイッ」という具合で右の拳を出し、カナタも同じように拳を出してグータッチをした。


「カナタ君の方こそ大丈夫ですか?」


「うん。ちょっと腕がジンジンするくらいで、後は全然」


 その時、学校全体が揺れ始め、その影響で窓ガラスは割れ、屋上の床には亀裂が入っていった。


「なんだなんだ?」


「…まさか!」


 カナタは未だに燃え盛る炎の方に目を向けると、中からただならぬ怒りとドス黒い憎しみの感情を感じ取った。それと同時に屋上の床は崩落し、5人全員が4階に落ちてしまった。


「痛ったぁ。なにが起こったのよ…」


「床…なんで…?」


 その時、瓦礫と土煙の向こうからチェーンソーを起動する音が聞こえてきた。


「おいおいまさか…」


「みんな立て! 来るぞ!!」




「…Confringe/砕け散れ」




 その一声で彼の周りにあった瓦礫は、全て砕けて砂となり、さっきよりもボロボロになったジョンソンが姿を現した。面の見た目も大きく変わっており、般若よりも強い怒りを表す「真蛇」の面と、穏やかな顔をした「翁」の面を組み合わせたような、なんとも不気味なものとなっていた。


「…絶対に…許さない…!」


 そう言ってジョンソンが大剣を一振りすると、"真空の刃"ではなく、"チェーンソーの刃そのもの"がすさまじい回転をしながら飛んできた。


「まずい。このままじゃ…!」


 刃が5人を切断するまであとわずかというところで、セルアが最前線に立ち、魔法石が埋め込まれたイヤリングに軽く触れた。


「発動:Defensio automatica/自動防御」


 そう、彼は自らの固有魔術を発動させ、バリアの張られた体で刃を受け止め、皆を救ったのだった。


「ありがとー! 今日で二回も助けられちゃった」


「お前がそれを使ったってことは…5分で決着をつけなくちゃいけねぇみたいだな」


 剣士、セルア・レイズの持つ固有魔術「Defensio automatica」は、所謂「オートガード」であり、5分間だけどんな攻撃も通さない技である。だがその反面、使用時間が切れると気を失ってしまい、足手まといになりかねない、という弱点も持っている。


『オーブリンク』「今度こそ絶対に倒す!」


 カナタは再びスライドを3度引き、銃口を構え、トリガーを引いて変身。間髪入れずにジョンソンに殴りかかった。

 だがその時、


「…発動:manipulatio gravitatis/重力操作」


 ジョンソンは自らの固有魔術を発動した。この技は、その名の通り重力の向きと強さを自由に変更することができる。


「…deorsum/下に」


 その一言と同時に左手をふりおろすと、5人の上にズシリと重い力がのしかかり、パンチが届くまであと数センチというところでコスモも床に墜落してしまった。


「お…重い…」


 床に張り付くようにして倒れているコスモは、顔をあげて立ちあがろうと試みたが、重力に抗うことはできず、それに追い打ちをかけるかのように頭を踏みつけられてしまった。


「悪を倒し世界を救うニューヒーロー…だっけか? 威勢がいいことを言ったそばからこれとは…敵として情けない…」


「一回倒されかけてる癖によく言うな…」


「黙れ……おい勇者共、親しいガキが殺される瞬間を、しっかり目に焼き付けておくことだな」


 2、3回頭を強く踏みつけながらそう言うと、今度は額をつかんで高く持ち上げた。


「やめろ! 僕たちが身代わりになるから、彼だけは見逃してやってくれ!」


 セルアの悲痛な叫びが聞き入れられることは当然無い。額をつかんでいた手を放し、コスモの体が宙に浮いたところを、下からこれまでにない高速回転を行う刃で斬ろうとしたその時、ジョンソンの顔に大剣の刃が勢いよく当たった。


「ぐぁっ…何が起きた?」


 混乱したためか固有魔術の効果が切れ、全員が自由に動けるようになった。


「キックバックだよ。チェーンソーやその剣みたいに回転する刃がついた道具は、回転中の刃の先端上部に物が当たると勢いよく跳ねる危険な性質があるんだ。俺は今回刃を足で触ってそれを起こ、っていだだだだだぃ!」


 足の痛みを自覚したカナタの悲痛な叫びが、校舎に響きわたった。


「…ここは私たちが引き止めとくから、ラーシャ! カナタを回復してあげて!」


「言われなくてもそのつもりです!」


「それと、多分刃が強化されてるから気をつけて!」


 セルア、マキナ、ゴルダンの三人はここぞとばかりにジョンソンに攻撃を仕掛け、ラーシャは荒い息を吐くコスモの元へと駆け寄った。


「カナタ君、大丈夫ですか?」


「大丈夫…だけど…マジで痛い…」


 コスモは右足先を切断され、血がスーツににじんでいた。


「酷い怪我…ちょっと痛むけど、我慢してくださいね。Sana vulnera tua/傷よ治れ」


 そうすると、斬られた部分はメキメキと小さい音を立てながら再生した。


「ありがとう。ほんとにありがとう…」


「どういたしまして。私たちも行きますよ」


「うん。絶対に勝つぞ」


「はい」



 **********



 30秒ほど時を戻し、セルアたち3人がジョンソンに攻撃を再開した頃。


「Electric malesuada euismod/電気の網」


 マキナは電気の網を召喚し、ジョンソンを拘束した。動きを封じることができる上に電気で体を麻痺させることもできるので、拘束力と威力は相当なものだ。


「やっちゃって!」


「助かった! 古式武闘術三番・改:百連打撃!」


 ゴルダンが百発のパンチを絶え間なく浴びせると、ジョンソンは二重の攻撃を受けてよろめいた。


「よし、今だ! セルア!」


 剣を振り上げ、ゴルダンを軽々と飛び越えたセルアは不気味な面を真っ二つに斬った。ちょうどそこに、回復を完了したコスモとラーシャが合流した。


「さあ、面の中身を見せてみろ」


 斬られた面はすぐさま床に落ち、殺し屋の素顔があらわになった。だが、その顔を見たマキナは目を見開いて、衝撃と絶望の混ざったような表情を浮かべていた。


「うぅ…貴様らぁ! よくも俺の面を!」


 ジョンソンは怒り心頭の様子で、魔法「bracchium serpentis dentis magni/大牙蛇腕(たいがじゃわん)」を発動し、自らの腕を大きな牙の生えた口がついた、蛇のような生物に変化させた。

 それを自由自在に操り、セルアたちに攻撃を仕掛けたが、怒りに身を任せた無茶苦茶な攻撃だったせいか、まともに当たることは無かった。だがそれも今この瞬間で終わり、オートガードの制限時間が切れてしまったのである。凶暴な腕は即座に、気を失ったセルアに襲いかかった。あと少しで喰い殺される、というところでマキナが声を張り上げた。


「ストップ、ジョン兄ぃ!!」


 ジョンソンはその一声で腕を止めた。


「ジョン兄ぃって…知り合いだったの!?」


「うん」


「教えてくれ、ジョンソン(この野郎)との間に一体何があった?」


「あれは、私がまだ5歳だった頃…」


 マキナは自分の過去を思い出し、それを語り始めた。

参考にさせていただいたサイト:愛樹園 チェーンソーは危険な道具?チェーンソーのキックバックについて説明します(https://aijyuen.live/2024/04/21/is-a-chainsaw-a-dangerous-tool-explaining-chainsaw-kickback/)

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