MIKI 1
浮気の定義とは?
YASUの部屋、午前三時過ぎベット脇に置いている携帯が
鳴り響く、眠りを妨げられたYASU不機嫌に片目を開き
枕元に置いた眼鏡をかけ携帯のディスプレイに表示された発信者の名前をチェックする、そこには“出るな!”の文字、一つ舌打ちをして電話に出る
YASU「・・・・・・・・何だよ・・・・・・・」
MIKI「・・・・・ごめん・・・寝てた?」
YASU「寝てたよ・・・・・てか、今何時?」
MIKI「・・・・・三時二十分・・・・・」
YASU、左手を額に当て顔をしかめる
YASU「ふざけんなよ・・・内容によっちゃーぶっ殺す!」
MIKIからの返事が無い
普段ならいくらYASUがキレようが笑いでかわしてきたMIKI
しかし、今受話器の向こうから発するMIKIの空気は
ひどく深刻で普通では無い、それを感じ取ったYASU
YASU「どうしたんだよ」
数秒の沈黙があり
MIKI「ダッチに逢った・・・・・・」
YASUベットから上半身だけ起こし
YASU「マジ?・・・・・・」
MIKI「・・・・・・・・・」
YASU「何人で?」
MIKI「・・・・・二人・・・・・」
YASU「どこで?」
MIKI「・・・・・昔、よく行ってたバー・・・・・」
ここまで聞けば導き出される答えはほぼ決まっている
しかも一般女性では無く、本能で動くMIKIなら
まず間違いなく・・・・・
YASU「・・・・・・・・ヤったのか?・・・・・」
携帯から漏れるMIKIの溜息、そして力無く
MIKI「・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・」
YASU、目を閉じ、一つ大きな息を吐き
YASU「で?」
MIKI「・・・・・・・・・・気持ち良かった・・・・・」
YASU、その言葉を聞いた瞬間携帯を切り
ベットにもぐり吐き捨てる
YASU「死ね!!!」
速攻MIKIから着信の嵐
YASU出たくなければ電源を切ればいい話だが
それが出来ない、鬼になれないこの性格は彼の長所でも有
るが同時に短所でも有る、8度目の着信で携帯に手を伸ばす
YASU「あのな~、何で俺が夜中の三時・・・・・」
MIKI「二十八分」
YASU「そう、何で三時二十八分にお前のエッチの感想
聞かされなくちゃなんねーんだよ!」
MIKI「・・・・・・・・ごめん・・・・・・・・・」
YASU皮肉たっぷりに
YASU「満足したか?んじゃお幸せに~」
携帯を切ろうとするYASUの耳にMIKIの祈るような声
MIKI「迎えに来て!!」
YASU、携帯を右手から左手に持ち替え
YASU「は?意味解んねぇー、ダッチと一緒なんだろ?」
MIKI「・・・・・今は一人・・・・・」
YASUベットから身を起こしブチ切れる
YASU「ヤるだけヤってあいつ居ねーのかよ!」
MIKI「違う!違う!私一人で出てきたの!」
YASU、状況が見えずイラつきながら
YASU「出てきた?何処から?」
MIKI「ラブホ・・・・・」
YASU「ダッチは?」
MIKI「寝てる・・・・・・」
YASU立ち上がりベットから離れ部屋の電気をつける
そしてテーブルに置いてあるガルボを一つ食べ
YASU「戻らなくていいのかよ」
MIKI「今戻ったら、戻れなくなる・・・・・」
YASU、携帯を耳に当てたまま目を閉じ黙り込む
MIKI「だからYASUお願い、迎えに来て・・・・・」
MIKIの悲痛な願いは充分YASUの心に届いた・・・
MIKIの行為は許される事では無いがしかし、人は時に
常識を逸脱し本能の赴くままに行動してしまう事がある。
MIKIの行動を断罪出来る人間が居るだろうか・・・
少なくともYASUにMIKIを責める資格は無い
YASU、ゆっくり目を開け尋ねる
YASU「何処に居んだよ」
MIKI蚊の鳴くような声で
MIKI「・・・・・セックスフレンド・・・・・」
YASU、聞き取れない為、携帯を耳に押し当てる
YASU「え?何?聞こえ無ぇ」
MIKI、大きな声で
MIKI「ホテルセックスフレンド!」
YASU、でかい声に顔をしかめ携帯から少し耳を離し
YASU「それ・・・・・ギャグじゃなくて?・・・・・」
MIKI「・・・・・・・・・」
YASU、頭を掻きながら
YASU「あのさー、せめてホテルの名前くらい普通の所選べよ」
MIKI「良いじゃん別に・・・・・・安かったんだもん・・・」
YASU、天井を見上げ
YASU「てゆーか、俺が聞きたいのは住所!」
◆
YASU、MIKIを迎えに行く車の中で以前MIKIと論じた
会話を思い出していた・・・・・
夏の夕暮れ、冷房をガンガンに利かせてのドライブ
MIKI、サンダルを脱ぎダッシュボードの上に両足を乗せ
YASUに問いかける
MIKI「YASUはどっからが浮気だと思う?」
YASU、カーステレオのボリュームを絞り
YASU「ほぉ~、面白そうな話じゃん」
MIKI、運転するYASUの横顔を見つめて
MIKI「まず、ヤったら浮気?」
YASU吹き出す
YASU「そんなのガッツリ浮気じゃん!」
MIKI「なるほど・・・じゃあキスは?」
YASU、少しだけ首をひねり
YASU「・・・それはシチュエーションによるな」
MIKI、ダッシュボードに乗せた左足首に残るサンダルの跡を指でなぞりながら
MIKI「シチュエーションて、例えば?」
YASU「飲み会とかのゲームの命令だったらセーフかな・・・」
MIKI「口でも?」
YASU一瞬MIKIの顔を見て
YASU「口?・・・・ん~、厳しいな・・・・・」
MIKI、ニタつきながらYASUを見て
MIKI「どうよ?」
YASU、目の前のゆっくり走るバンを追い抜くため
車線を右に変更しながら
YASU「まぁ、その場の雰囲気を壊すのも良くないから
ギリセーフかな」
MIKI「舌入れたら?」
YASU、左手をハンドルから外しMIKIの肩を軽く叩き
YASU「そんなの周りが引くだろ!アウトだよ、アウト!」
その状況を想像し、YASU、MIKI笑ってしまう
MIKI「じゃあドライブは?」
YASU「二人きりで?」
MIKI「もちろん」
YASU、バンを追い越し左車線へ
YASU「ドライブだけならセーフかな、だって今まさに
そーじゃん」
MIKI「ドライブ中、手ぇ繋いだら?」
YASU、流れる景色を見つめるMIKIを睨んで
YASU「即アウトだよ!」
MIKI勢い良くYASUの方に視線を向け
MIKI「手だよ、手、アウトなの?飲み会のキスはセーフなのに?」
YASU進行方向を見ながら険しい顔で
YASU「だからシチュエーションなんだよ、二人きりの状況で身体が触れ合うのはヤバイよ、絶対手だけで終わらないって!」
MIKI「ふ~ん、そ~かな?」
前方の信号が赤になり一旦停止し
MIKIを見るYASU
YASU「で、お前はどっから浮気なんだよ」
MIKI、ダッシュボードから足を下ろし
MIKI「気だね、気」
YASU「き?」
MIKI、ドリンクホルダーに入れたガムを手に取り
MIKI「気持ちが少しでも相手に行ってたらそれはもう
浮気だね」
YASU、信号が青に変わり発進する
YASU「ふ~ん、じゃあ逆に気持ちが無かったら浮気じゃ
ねーの?」
MIKIガムを頬張り
MIKI「そうゆう事になるわね」
YASU「て、事は気持ちが無い人とヤってもセーフ?」
MIKI「本当に気持ちが無くノリだけだったらセーフだな」
YASU首をかしげ
YASU「ヤったらアウトだろ普通・・・・・」
YASU斜線変更をする横の車に道を譲り
YASU「じゃあ風俗は?」
MIKI、顔の前で何度も手を振り
MIKI「全然セーフ、あんなの男の悲しきサガじゃん」
YASU「毎回同じ女の子指名してても?」
MIKI、うつむいて
MIKI「毎回同じ女・・・・・」
悩むMIKIをチラ見してどんな返事が返ってくるか
興味津々のYASU
MIKI「・・・・・・・それはアウトかな・・・なんか
気持ちが存在してる感じがする・・・」
YASU、付け加える
YASU「でも、その理由がテクニックが有ってめちゃめちゃ
気持ち良いからだったら?」
MIKI、吹き出しYASUを見て
MIKI「気持ちは気持ちでも、気持ち良いの方?
だったらセーフだわ」
MIKI、左側に現れたモクモクと煙を吐く工場を見つめ
MIKI「究極な話、気持ちが有ったら会話するだけでアウト!」
YASU「厳しぃ~、てか、そんなの解んの?会話してるだけで
気持ちが有るかどうかって?」
MIKI、目を閉じ何度も頷きながら
MIKI「これさ~、女性特有の能力なのかも知んないけど
見たら解っちゃうんだよね~」
YASU少し肩をすぼめ
YASU「怖ェ~」
MIKI、眩しそうに夕日を見つめ運転するYASUを眺め
MIKI「YASU、男と女どっちの方が浮気率高いと思う?」
YASU、MIKIに視線を合わせず
YASU「そりゃどっちかって言われれば・・・男だろ」
MIKI、YASUの顔に人差し指を向け
MIKI「そこ!MIKI統計学で言うと男も女もほぼ同じ位
浮気する!」
YASU、進行方向を見たまま顔をしかめ
YASU「マジ?その統計学信頼出来んのかよ~」
MIKI「間違いない!なんだったら女の方が浮気すると思う」
YASU運転中だが思いっきりMIKIをガン見し
YASU「はー?!」
MIKI「だってバレないんだもん」
YASU「・・・・・・・・・・」
MIKI、両手を首の後ろに回しシートにもたれ
MIKI「男って本当、危機意識が低いんだよね~
その点、女は常に彼氏の行動や仕草にアンテナ張り
巡らしてるからね~」
YASU納得出来ない顔で
YASU「男も結構アンテナ張り巡らしてると思うけどな・・・」
MIKI、何度も顔を振り
MIKI「アンテナの性能が違いすぎる、男なんてせいぜい
三チャンか四チャンネル位しか受信出来ないけど、
女のアンテナは一般チャンネル以外にCS、BSも受信しちゃうから、男のアンテナなんて話になんない!」
YASU前方の信号が黄色になり加速する
YASU「ふ~ん・・・で、その高性能のアンテナで監視中の
やーさんは大丈夫そう?」
MIKI「今の所、大丈夫だね」
YASU、横目でMIKIを見て
YASU「・・・・・お前自身は?」
MIKIシ-トから身を起こし邪気の無い笑顔をYASUに向け
MIKI「全然大丈夫、私達愛し合ってるもん!」
YASU「・・・・・あっそ」
“目的地周辺です”
ナビの音声で現実に引き戻されるYASUそして小さな声で
YASU「MIKI・・・・・何やってんだよ・・・・・」
◆
明け方とはいえまだ暗い午前四時過ぎ
ホテル街を徐行するYASUの車
そしてゆっくり停止し、つぶやく
YASU「マジで有ったよ・・・・・セックスフレンド・・・・・」
そこには周りのホテルに比べ明らかに時代遅れなデザインのこじんまりしたホテルが建っている
YASU携帯を出しMIKIに連絡
YASU「お~、着いたぞ、何処に居んだよ」
MIKI囁く
MIKI「解った、すぐ行くからホテルの前で待ってて」
YASU携帯を切り車から降りると肌寒い風が頬を刺す
YASU「さむ!」
ホテルの出入り口に近づき何気に立て掛けられた看板を
読むYASU
YASU「マジ!?宿泊3480円!安ぅ~、しかも2食付!」
YASUホテル最上階の看板を見上げつぶやく
YASU「やるなセックスフレンド・・・・・」
再び眼線を下ろし宿泊料以外のシステムを読み始める
YASU「100インチプロジェクター、カラオケ、ゲーム機各種
・・・・・プ、プール!(30以内、要予約)」
YASU再びホテル最上階の看板を見上げ切なげな表情で
YASU「楽しそ~・・・・・」
眼線を下ろし続きを読むYASU
YASU「誕生日の方には素敵なおもちゃプレゼント・・・・
ってそれって持って帰って大丈夫なおもちゃかよ・・・」
ニタつくYASUの太ももに蹴りが入る
YASU「うお!!!」
よろけながら振り返るYASU一層大きな声で
YASU「うわ!!!!!」
そこにはスッピンで髪がボサボサのMIKIが立っている
YASU「ビビッたー!何だよその顔!」
MIKI仁王立ちで YASUを睨み
MIKI「どうゆう意味よ・・・」
YASU「眉毛無ぇ~し、唇カサカサだし、髪の毛爆発してるし、
ひげ生えてるし」
MIKI再度YASUの太ももを蹴り
MIKI「生えて無ぇーよ!」
痛がるYASUを腕を組み冷ややかな眼で見るMIKI
MIKI「てゆーか、男が一人でラブホの看板ニタつきながら
読んでる姿マジきしょいんだけど」
YASU太ももをさすりながら
YASU「うっせーな、興味有ったんだよ!」
YASUホテルの周りを見渡し
YASU「え?お前何処に居たの?」
MIKI、YASUの右後方の闇を指差し
MIKI「セックスフレンドと隣のホテルの隙間で座ってた・・・」
YASU「こわ!」
MIKI、YASUの車に走り出し振り向いて
MIKI「とにかくこっから出よ」
車へ乗り込むMIKI
YASUもその後を追い車へ




