完璧な計画だ!
「俺がこの世代の勇者になるんだ!」
熱く叫んだ俺の声は放課後の教室にむなしく響く。
「はぁ…スバルさぁ、夢見るのもいいけどそろそろ現実見ろよ。」
「そうだよ〜。私たち、もう高校生なんだよ~?」
俺の偉大なる志を否定しやがるのは幼馴染でクラスメートの2人。
カチコチに頭が固まってるクール気取り男がユウで、おっとりふわふわ癒し系"風"女子がハルノだ。
「うるせぇ!!高校生が夢見なくて誰が見るんだ!」
そうは言いつつも、こいつらの言わんとしていることはわかっている。
俺たちの通う高校では1年生の最後、つまりあと2ヶ月後に進路選択がある。
ほとんどの生徒が選択する「普通就職コース」
成績優秀者が選択できる「特別就職コース」
特別就職とは即ち、魔導師や錬金術師、神職などの魔法の能力が重要な職に就くことである。
実は、この2つのコースの他にもう1つ、100年ほど前に設立されたが今となっては選択者はおらず、実質存在しない事となっている「戦士育成コース」がある…らしい。
そのほぼ活動がないと言っていい実態から一般生徒は存在すら知らない戦士育成コース。俺はその存在を図書室でたまたま見つけた黒くてカッコイイ本(学校の歴史書だったらしい)を読んで知ってしまったんだ…
このコースに入れば、俺もスーティス様のように強くてカッコイイ勇者になれると俺は考えた。
「俺はこの戦士育成コースを選択するんだ!!」
完璧に思えた俺の作戦だったが2人の眼差しはまた同じく冷たかった…。特にユウ。
「え〜っと。その戦士育成コース?って『ほぼないみたいなもの』なんでしょ?そもそも選択できるの?」
「ふふふ、舐めてもらっちゃ困るぞ!俺の調べによるとこのコースはあの偉大なる勇者スーティス様への尊敬と感謝の意を込めて前々々代校長が設立したものらしい。」
「スーティス様への信仰心が他一倍厚いこの高校で、スーティス様の背中を追う若者を止められるはずがないというわけだ!!!」
「う〜ん。まぁ一理ある?かも?」
「まぁ…丁度明日面談があるし、担任に聞いてみたら?」
「おう!そうするぞ!!」
やっと俺の偉大な志を実現に向かわせることができる…!!
そう喜びに震えていると俺のスマホのアラームが鳴り響いた。
「おっと、もう5時か。」
「じゃあ俺は日課のトレーニングがあるから帰るな!」
「うん…」「おぅ…」
俺は勢いよく扉を開けて駆け出した。
「ねぇ、ユウ良かったの?スバルのこと、止めてあげなくて…」
「どうせ言ったって聞かねぇだろ…」
そう言ってため息をつく2人は過去のスバルの数々の頑固言動を思い出しているのだろう。
「まぁ、あいつだって仮にも16歳だ。先生にガツンと言われれば少しは考えるんじゃねえの?」
「だといいけど…だって」
「私たちの世代には」「俺等の世代には」
『あの人がいるんだから』