完結
──とある早朝。
薄暗い夜明けを迎えた外に、小鳥の囀りが木霊する。
昨晩、考えることが多く眠れずにいた僕はどんよりと重い体のままパソコンに向き合っていた。
今までネットサーフィンやゲーム、音楽鑑賞など、様々なもので時間を潰してきたわけだが、ふと久しぶりに小説を書いてみようと考えた。
かれこれ数年は執筆していなかっただろうか。
一度は書籍化もしたことがあったが、今更過去の自慢話に華を咲かせるつもりはない。
だがしかし、一つ自分語りをさせてもらうならば、僕はまだ小説というものを描き切ったことがなかった。
今まで小説を読む側としての立場が多く、度々ランキングに載ったりする作品を読んでは、
──自分にもこういう作品が作りたい、こんな展開を書いてみたい。
などといった願望が強く表れ、その日のうちに見切り発車でよく小説を書いていたものだった。
作品への熱意の消失、筋書きのあやふやさ、キャラクターの設定、そのどれか、もしくは全てが原因となり、大体作品を投げ出してしまう。
そういったことの繰り返しだったわけだ。
一つの作品すら完結させることが出来ない自分に嫌気が差し、そのうち僕は小説を書くことを辞めたのだ。
しかし今更になってもう一度小説を書いてみようと思った切っ掛けは、先ほど述べたように本当に『ふと』だった。
睡眠不足で気だるげなはずの体は、こうして文章をタイピングしている間だけ軽く感じる。
本当に久しく小説を書いているはずなのに、次々と語彙が溢れ、連なり、文章となっていく。
こうして小説を書いている僕の感情を表すならば、文字で何かを表現することは他事に変えられないほど楽しいというものだった。
ここまでを書き終えた僕は、ふぅと一息つきゆったりと背もたれに体を預ける。
そのまま何度か首を回し、凝り固まった筋肉をほぐしていく。
机の上に置いてあったコップを手に取り、数時間前に淹れて既に冷えてしまっていたカフェオレを数口味わうと、
「今度プロットから作ってみるか……」
そう一言呟いて、僕は自分なりの区切りをつけるため、この小説を完成させたのだった。
──何事も、小さな完遂から。